ROAとは?計算式や目安、ROEとの違いをわかりやすく解説
2024.5.16
ROA(総資産利益率)とは?
ROAとは「Return On Assets」の略で、会社の総資産を使ってどれだけの利益を上げられたかを示す収益性の指標です。
日本語では総資産利益率と呼ばれることもあります。ROAを用いることで、企業の収益力を把握することができるため、企業分析を行う際には覚えておいて損がない必須の指標となります。
ROAの考え方はシンプルです。ROAの数値が高ければ高いほど、効率よく利益を生み出していると判断されます。
この記事では、ROAの基本的な考え方や計算式、目安、使い方について図解を用いてわかりやすく解説します。
初心者にも理解しやすいように、実際の企業事例を入れながら説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。
ROAの計算式
ROAは、下記の計算式で算出します。
- 利益÷総資産×100=ROA(%)
企業に投下されたすべての資産(総資産)を使って、どの程度の利益が生み出されたかを見ています。総資産とは、自己資本だけでなく他人資本を合わせた企業の保有資産の合計値をいいます。
また、利益とは、損益計算書に記載されている5種類の利益(売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益)のことを指します。ただし、ROAの場合、分子にくる利益は当期純利益で計算するのが一般的です。
ROAからわかること
ROAは、会社の総資産を使ってどれだけの利益を上げられたかを示す収益性の指標です。そのため、ROAの数値を計算することで、資産を有効に活用できているかを把握することができます。
また、競合他社のROAと比較して数値が高い場合は、少ない資産で効率よく利益を上げていることが読み取れます。ただし、業界ごとにROAの平均値が異なるため、ほかの業界との比較をする際は注意しましょう。
ROAの目安
ROAの目安は一般的に5%以上が望ましいとされています。ただし、業界ごとに平均値が異なり、また社会情勢によって目安は異なるため、あくまで参考の1つとして覚えておくぐらいが望ましいでしょう。
より重要なことは、数値の背景までをセットで考えることです。ROAの高低のみを見るのではなく、「なぜそのような数値になるのか?」のように、ビジネスの背景までを理解することでより深い示唆を得ることができます。
ROAの分解
ROAは分解すると、下記の2つの指標に分けることができます。
- 売上高利益率(収益性)
- 総資産回転率(効率性)
売上高利益率は、獲得した売上高に占める利益の割合を意味する収益性の指標です。計算式で表すと以下のようになります。
- 利益÷売上高=売上高利益率
売上高利益率について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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一方、総資産回転率とは、全ての資産を使い、どの程度の売上を生み出したかを表す効率性の指標です。計算式で表すと以下のようになります。
- 売上高÷総資産=総資産回転率
総資産回転率については、下記の記事で詳しく解説しています。
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ROAを、この2つの指標に分解することで、企業の成長を牽引する要素を把握することができます。
ROAの構成要素のクイズ
さて、ここで簡単なクイズです。
ディズニーランドを運営するオリエンタルランドですが、最新決算の2023年3月期有価証券報告書によるとROAが9%です。
このROA9%を牽引している要素は、①収益性、②効率性のどちらでしょうか?
タップで回答を見ることができます
収益性
効率性
わかりましたか?
こちらのクイズの正解は、①収益性です。
設備を使って売上を生み出すオリエンタルランドは、収益性が高い一方、効率性はそこまで高くありません。
このように、企業のROAを分解することで、どのような要素に企業の強みがあるのかを把握することができます。
ROEとの違いは?
ROAと似た指標にROEという指標があります。
この2つの指標はどのような違いがあるのかを順を追って解説します。
ROEとは
ROEとは「Return On Equity」の略で、株主が出資した資本を元手に、企業がどの程度の利益を生み出したかを示す収益性の指標です。通常は、ROEが高いほど、収益性が高いと評価されます。
自己資本利益率や株主資本利益率と表現されることもありますが、意味はすべて同義です。
ROEを分解すると、売上高利益率、総資産回転率に加え財務レバレッジが追加されます。
財務レバレッジとは、企業の総資産が自己資本の何倍となるのかを表す指標です。企業が負債をどの程度利用してビジネスを行なっているかを意味しています。
ROEは、上記の3つの指標の掛け算であるため、企業の総合力を分析する重要な指標と言われています。
財務レバレッジについて詳しく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。
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ROAとROEの違い
ROAは企業のすべての資産を分母にして計算するのに対して、ROEは企業の株主資本を分母にして計算する違いがあります。
ROEは株主からの出資に対するリターンを表しているため、異業種間でも比較をすることができます。一方、ROAは業界ごとに平均値が異なるため、異業種間での比較には使えません。
ROEについて、より詳しく知りたい方は下記の記事もおすすめです。
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ROAを用いて分析する際の注意点
ROAを使用する際には注意点が2つほどあります。
- ROAが機能しないケースがある
- 異業種間での比較は意味をなさない
それぞれ詳しく解説していきます。
ROAが機能しないケースがある
1つ目は、ROAが企業実態を反映しないケースです。
例えば、資産に計上されない資源(企業の社員や、会員数など)が競争優位を生み出す企業では、ROAが企業の実態を反映し難い傾向があります。したがって、人が売上の源泉となるようなコンサル業界や会員数等が資産となるIT企業などは、ROAが機能しないため注意する必要があります。
異業種間での比較は意味をなさない
2つ目は、異業種での比較です。ROAは業界ごとに目安が異なります。
例えば、大きな設備投資を行う必要があり、競争が激しい製造業の場合はROAが低くなりやすいです。一方、設備投資をする必要がなく、利益率が高いサービス業などはROAが高くなりやすい傾向にあります。
下の図を見ると分かる通り、業界業種ごとにROAの平均値が異なります。
そのため、安易に異業種での比較をしてもROAの数値が比較対象として意味をなさない場合があります。
ROAの企業事例
それではここから実際の上場企業を事例にROAの読み方を解説します。
企業事例から読み取るROA:装置型産業
まずは、先ほどクイズに登場した「ディズニーランド」でおなじみのオリエンタルランドの事例を見ていきます。
オリエンタルランドのROAは9%となります。このROAを分解し、オリエンタルランドの成長ドライバーを把握していきます。
オリエンタルランドのROAを収益性と効率性の指標に分解すると、売上高営業利益率が非常に高く、ROAを構成する収益性が優れていることが分かります。
一方、テーマパーク等の設備を使って売上を上げているため、総資産回転率は0.4と低くなっています。
従って、オリエンタルランドのROAは、高い営業利益率が土台にあることが読み取れます。
企業事例から読み取るROA:小売業
次に、薬局を運営するマツキヨココカラ&カンパニーを見ていきましょう。
マツキヨココカラ&カンパニーは商品を仕入れて販売する小売業です。
マツキヨココカラ&カンパニーのROAも、オリエンタルランドと同様に9%となります。しかし、ROAを分解すると、効率性が非常に高く、オリエンタルランドとは成長ドライバーが全く異なることがわかります。
マツキヨココカラ&カンパニーはいかに多く販売するかが重要であるため営業利益率は低いものの、総資産回転率は非常に高くなります。
企業事例から読み取るROA:まとめ
どちらもROAの数値が9%でしたが、売上高利益率と総資産回転率に分解するとそれぞれの企業の成長ドライバーを把握することができます。
ぜひ他の企業でも試してみて下さい!
ROAの調べ方
最後にROAの調べ方を紹介します。ROAの調べ方は主に2つありますので、好みで使い分けてください。
ROAの調べ方:企業の概況
有価証券報告書の第一部【企業情報】を開いてください。
【主要な経営指標等の推移】の中から、次の項目を取得します。
- 総資産
- 各種利益
これらの数値をもとに、ROAを計算することが可能です。
ROAの調べ方:経理の状況
次に、2つ目の調べ方を紹介します。
有価証券報告書の第一部【企業情報】の中の、第5【経理の状況】を開いてください。
貸借対照表と損益計算書の中から、次の項目を取得します。
- 総資産
- 各種利益
経理の状況に掲載されている数値をもとに計算することで、より具体的なROAの数値を求めることができます。
ROAのまとめ
以上、ROAの解説でした。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
指標を比べ差が出ることが分かったら、次はその原因がどこにあるのかを分解式などを用いて調べることで、より深い企業分析を行うことができます。
ぜひ参考にしていただけると幸いです。
企業分析を1からしっかり学びたい方は、企業の経営成績の読み方がわかる下記の記事がおすすめです。
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