財務レバレッジとは?計算式や目安、自己資本比率との違いを解説
2024.5.20
財務レバレッジとは?
財務レバレッジとは、企業の総資産が返済義務のない自己資本の何倍かを表す指標です。
財務レバレッジを見ることで、企業がどの程度負債を利用しているかを把握することができ、この数値が高いほど負債の利用度が高いことを意味します。
早速ですが、ここでクイズです。
通信事業を行っているソフトバンクグループとKDDIのうち、財務レバレッジが高い企業はどちらでしょう?
- ソフトバンクグループ
- KDDI
現時点ではわからなくても問題ありません。
記事を読み終わるころには、上記のクイズが理解できるようになっているはずです。
この記事では、財務レバレッジの意味や計算式、目安、自己資本比率との違いについて図解を用いてわかりやすく解説します。ぜひ最後まで読んでいただけますと幸いです。
目次
- 財務レバレッジとは?
- 財務レバレッジの計算式
- 財務レバレッジからわかること
- 財務レバレッジの目安は?
- 財務レバレッジの目安は2倍
- 財務レバレッジの業種別平均
- 財務レバレッジを高めるメリット・デメリットを事例で解説
- メリット
- デメリット
- 財務レバレッジの事例:まとめ
- 決算書から読み取る財務レバレッジ
- ソフトバンクグループの財務レバレッジ
- KDDIの財務レバレッジ
- 財務レバレッジと自己資本比率の違いは?
- 自己資本比率とは
- 両者の使い分け
- 財務レバレッジとROEの関係性は?
- ROEとは
- 財務レバレッジはROEの構成要素の1つ
- 財務レバレッジの調べ方とは?
- 有価証券報告書から必要な情報を取得する
- 財務レバレッジを計算する
- 財務レバレッジのまとめ
- より深く財務諸表を学びたい方
財務レバレッジの計算式
財務レバレッジは、下記の計算式で算出します。
- 総資産÷自己資本=財務レバレッジ(倍)
自己資本の何倍の大きさの総資産を事業に投じているかを計算することで、負債をどの程度利用しているかが分かります。
たとえば、総資産が1億円、自己資本が2,000万円の会社の場合、財務レバレッジは5倍(総資産1億円÷自己資本2,000万円)となります。つまり、総資産の20%を自己資本が占めており、残りの80%を負債が占めているということを意味します。
財務レバレッジからわかること
財務レバレッジは自社の資産が自己資本の何倍となるかを示す指標です。負債の利用度が増えると、運用可能な資産総額が大きくなります。
そのため、自己資本よりも総資産の金額が大きくなるにつれて、財務レバレッジも大きくなります。
下図を見てもわかる通り、財務レバレッジが高い企業は負債の比率が高くなります。一方、財務レバレッジが低い企業は負債の比率が低くなり、自己資本の比率が高くなります。
財務レバレッジが低いと、返済義務のある負債が少ないことを表すため、優良企業かと思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。負債を利用していないということは、積極的に投資を行っていないことを意味するため、効率的な経営ができていない可能性もあります。
したがって、財務レバレッジを分析する際は、低い方が良いわけではないことを押さえておきましょう。
財務レバレッジの目安は?
財務レバレッジの目安はどれくらいがいいのかについて解説していきます。
財務レバレッジの目安は2倍
財務レバレッジの目安は、一般的に2倍程度が望ましいとされています。財務レバレッジ2倍とは、総資産に対して自己資本が50%を占めている状態です。
ただし、財務レバレッジは業界ごとに平均値が異なり、また市場の変化によって適正値は異なるため、あくまで参考の1つとして覚えておくぐらいが望ましいでしょう。
より重要なことは、数値の背景までをセットで考えることです。財務レバレッジの数値だけを見るのではなく、「なぜ同じ業界なのに財務レバレッジの数値が2倍以上違うのか?」などのように、ビジネスの背景までを理解することでより深い企業分析を行うことができます。
財務レバレッジの業種別平均
財務レバレッジは業種ごとに平均値が異なります。
上の図を見ると、宿泊業や飲食業、不動産業などの財務レバレッジが高い特徴があります。これらの業界は、設備投資が必要な事業を展開しており、外部から借り入れを行っているため、財務レバレッジが高くなりやすい傾向にあります。
一方、情報通信業やサービス業などはあまり先行投資を必要としないため、財務レバレッジが低い特徴があります。
このように、業種によって財務レバレッジの平均値が異なります。
財務レバレッジを高めるメリット・デメリットを事例で解説
一般的には、財務レバレッジが高い企業ほど負債の金額も大きくなります。
そのため、返済や利息の支払いが必要となり、その結果、多額に現金が支出する傾向にあります。
しかし、財務レバレッジが高いからといって必ずしも悪いというわけではありません。
ここからは、財務レバレッジを高めるメリットとデメリットについて簡単な事例を含めて解説します。
今回は、下記の2つのケースを比較して見ていきます。
- ケース①:自己資金のみで不動産を買う場合
- ケース②:自己資金と借入で(財務レバレッジを高めて)不動産を買う場合
2つの事例を比べると、財務レバレッジを高めたケース②の方が、より多くの不動産を購入できることが分かります。
メリット
ケース①と②共に、保有している資産が50%値上がりした場合を見ていきます。
自己資金のみで不動産を買ったケース①では利益が50万円発生します。
一方、財務レバレッジを高めたケース②では100万円の利益が発生します。
この事例からもわかる通り、財務レバレッジを高めると、同じ値上がり率でもリターンが大きくなるというメリットが得られます。
デメリット
次は、ケース①と②共に、保有している資産が50%値下がりした場合を見ていきます。
自己資金のみで不動産を買ったケース①では損失が50万円発生します。
一方、財務レバレッジを高めたケース②では100万円の損失が発生します。
この事例からもわかる通り、財務レバレッジを高めると、同じ値下がり率でも損失額がより大きくなるというデメリットも存在します。
財務レバレッジの事例:まとめ
財務レバレッジを高めることは自己資金では購入できない高額の資産運用が可能となります。
その結果、値上がりした場合には、負債を利用しない場合に比べリターンも大きくなります。
しかし、値下がりした場合には、損失も倍になって返ってくる結果となります。
つまり、重要なのは、状況に応じて負債をコントロールすることです。
決算書から読み取る財務レバレッジ
それでは、ここまでの内容を踏まえて、冒頭のクイズに挑戦してみましょう。
大手通信事業を運営するソフトバンクグループとKDDIのうち、財務レバレッジが高い企業はどちらでしょう?
タップで回答を見ることができます
ソフトバンクグループ
KDDI
それでは正解の発表です。
正解はソフトバンクグループでした。
ソフトバンクグループの財務レバレッジは4.7倍に対して、KDDIは2.2倍です。
つまり、ソフトバンクグループの方が、負債の利用度が高いことがわかります。
ソフトバンクグループの財務レバレッジ
ソフトバンクグループは、日本でも有数の非常に投資活動が活発な企業です。近年では、ベンチャー企業への投資も行っています。
当然投資を行うためには財源が必要です。ソフトバンクグループは、投資の財源を外部から調達しているため、負債の比率が非常に大きくなります。その結果、財務レバレッジが高くなったのです。
KDDIの財務レバレッジ
一方、KDDIは自社で稼いだキャッシュの範囲で投資を行っているため、資金調達はあまり行っていません。したがって、ソフトバンクグループと比べて財務レバレッジが低くなります。
財務レバレッジと自己資本比率の違いは?
財務レバレッジと関連した指標に自己資本比率という指標があります。
この2つの指標はどのような違いがあるのかを順を追って解説します。
自己資本比率とは
自己資本比率とは、総資産から返済義務のない自己資本の割合を表す指標です。この指標を使うことで企業の安全性を見ることができます。
自己資本比率は、財務レバレッジの計算式の分母と分子が逆の指標であるため、財務レバレッジの逆数と言われています。自己資本比率が高いと財務レバレッジが低く、自己資本比率が低いと財務レバレッジは高いことを意味します。
両者の使い分け
それぞれの指標の使い分けは以下の通りです。
- 負債の効率性を測る場合:財務レバレッジ
- 企業の安全性を測る場合:自己資本比率
負債の有効活用度合いを見たい場合は、財務レバレッジを使います。逆に、企業が倒産しないかどうかを見たい場合は自己資本比率を使います。
企業分析を行う際はこの点を押さえておきましょう。
自己資本比率については、下記の記事で詳しく解説しています。
関連記事
自己資本比率とは?計算式や目安、分析方法をわかりやすく解説
navi.funda.jp/article/capital-adequacy-ratio
財務レバレッジとROEの関係性は?
財務レバレッジと関係する指標にROEという指標があります。
ここからは、ROEの意味と両者の関係性について解説します。
ROEとは
ROEとは、「Return On Equity」の略で、株主が出資したお金を使い、どの程度の利益を生み出したかを示す収益性の指標です。通常は、ROEが高いほど、収益性が高いと評価されます。主に、投資家が投資先の企業を選定する際に使われます。
財務レバレッジはROEの構成要素の1つ
ROEは分解すると、売上高利益率、総資産回転率、財務レバレッジに分けることができます。
- 売上高利益率
- 総資産回転率
- 財務レバレッジ
つまり、財務レバレッジを高めることでROEの数値が上がるため、財務レバレッジを上げることは一般的に投資効率が良い企業と判断されます。もちろん、負債だけを増やして財務レバレッジを上げただけでは何も意味がありませんので、企業分析を行う際は負債を有効活用できているかまで確認しましょう。
ROEについてより詳しく学びたい方は、下記の記事がおすすめです。
関連記事
ROEとは?計算式や目安、ROAとの違いを分かりやすく解説
navi.funda.jp/article/roe
財務レバレッジの調べ方とは?
実際の公開情報から、財務レバレッジの調べ方を紹介します。
今回は有価証券報告書を使い、財務レバレッジの計算に必要となる数値を取りに行きます。
有価証券報告書から必要な情報を取得する
有価証券報告書の、「1【主要な経営指標等の推移】」の中から、次の項目を取得します。
- 総資産額
- 純資産額
財務レバレッジを計算する
これらの数値をもとに、財務レバレッジを計算することができます。
ぜひ気になる企業の財務レバレッジを計算してみてください。
財務レバレッジのまとめ
以上、財務レバレッジの解説でした。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
指標を比べ差が出ることが分かったら、次はその原因がどこにあるのかを調べることで、より深い企業分析を行うことができます。
ぜひ参考にしていただけると幸いです。
また、簿記の学習に興味がある方は、下記の記事もおすすめです。
より深く財務諸表を学びたい方
もっと財務諸表を学びたい、財務スキルを身につけたい、企業のビジネスについて知りたいという方は、「Funda」で学びませんか?
どこよりもわかりやすく「財務」や「会計」が学べます。早速、下記の画像をクリックして学習を始めよう!