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有価証券報告書とは?読み方や調べ方、見るべきポイントを解説

2024.6.2

有価証券報告書とは?読み方や調べ方、見るべきポイントを解説

有価証券報告書とは?

有価証券報告書(ゆうかしょうけんほうこくしょ)とは、上場企業が年に一回提出する企業情報の詳細が記載された書類です。

事業内容や財務情報など、企業分析に必要な情報を入手することができます。投資家はもちろん、就活生、銀行員など、企業の詳細情報を知りたい方にとって、大変有用な情報ソースとなります。

なお、有価証券報告書は英語で「Securities Report」と表記されます。

いや…これだけじゃ1mmもわかりません!

「有価証券報告書の読み方がわからない」

「どうやって調べればいいの?」

と悩んでいる方が多いのではないでしょうか?

この記事では、有価証券報告書の読み方や調べ方などを企業事例を用いてわかりやすく解説します。

ぜひ参考にしてみてください。

法律で提出義務がある

上場企業は、金融商品取引法第24条によって、有価証券報告書を内閣総理大臣へ提出することが義務付けられています。法律によって開示を要求する目的は、企業が投資家に対して投資判断に有用な情報を適切に提供することにあります。そのため、有価証券報告書は誰でも閲覧することができます。

また、非上場企業でも規模の大きな有価証券の取引を行ったり、株主数が多かったりした場合には、有価証券報告書の提出が義務付けられます。

決算の3か月後に発表される

有価証券報告書は、事業年度の終了後3か月以内に内閣総理大臣へ提出しなければなりません。たとえば、3月決算の企業の場合、6月末が有価証券報告書の提出期限となります。

そのため、有価証券報告書は決算の約3か月後に発表されます。

有価証券報告書と決算短信の違いとは?

決算資料には、有価証券報告書の他に決算短信というものがあります。決算短信とは、証券取引所のルールに則り作成し、証券取引所に提出する資料です。決算短信は有価証券報告書と同様に、投資家に向けた開示情報ですが、相違点が主に3つあります。

  • 決算書の正確性
  • 速報性
  • 情報量の多さ

それぞれ詳しく解説していきます。

決算短信の読み方について詳しく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。

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決算書の正確性

有価証券報告書は監査法人が粉飾がないかチェックしますが、決算短信は監査の対象外であるため、有価証券報告書の方が情報の正確性が高いです。また、決算短信には推測も含まれているため、有価証券報告書より正確な数字ではないことを知っておきましょう。

速報性

上記で説明した通り、有価証券報告書は決算の約3か月後に発表されますが、決算短信は決算日から約1か月後に発表されます。有価証券報告書と違って、決算短信は企業情報の速報という意味合いが強く、最新情報を素早く入手したい際には決算短信が使われます。

情報量の多さ

有価証券報告書と決算短信では、情報量が大きく異なります。決算短信は事業の概要や財務情報がまとまっていますが、有価証券報告書にはそれだけでなく事業のリスクや設備の状況など、より詳細な情報が掲載されています。

有価証券報告書の構成

有価証券報告書の構成は、大きく3つに分かれています。

  • 第一部 企業情報
  • 第二部 提出会社の保証会社等の情報
  • 監査報告書

1つずつ解説していきます。

第一部 企業情報

「第一部 企業情報」では、企業の事業に関する情報や財務情報などが記載されており、以下の7つの項目で構成されています。

  • 第1【企業の概況】
  • 第2【事業の概況】
  • 第3【設備の状況】
  • 第4【提出会社の状況】
  • 第5【経理の状況】
  • 第6【提出会社の株式事務の概要】
  • 第7【提出会社の参考情報】

それぞれ簡単に見ていきましょう。

第1【企業の概況】

第1【企業の概況】では、以下の項目が記載されています。

  • 主要な経営指標等の推移
  • 企業の沿革
  • 事業の内容
  • 関係会社の状況
  • 従業員の状況

このパートを見ることで、何をやっている会社なのか、売上は増えているのかなどが分かります。また、「従業員の状況」には、会社の平均年収が記載されているため、給与の情報を知ることもできます。

第2【事業の概況】

第2【事業の概況】では、以下の項目が記載されています。

  • 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
  • 事業等のリスク
  • 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
  • 経営上の重要な契約等
  • 研究開発活動

このパートを見ることで、企業の経営理念や事業のリスク、会社が取り組んでいる研究開発活動など、事業の概要が分かります。

第3【設備の状況】

第3【設備の状況】では、以下の項目が記載されています。

  • 設備投資等の概要
  • 主要な設備の状況
  • 設備の新設、除却等の計画

このパートを見ることで、企業が保有する設備や将来の投資計画などがわかります。

第4【提出会社の状況】

第4【提出会社の状況】では、以下の項目が記載されています。

  • 株式等の状況
  • 自己株式の取得等の状況
  • 配当政策
  • コーポレート・ガバナンスの状況等

このパートを見ることで、大株主や企業の配当政策、経営陣の状況などがわかります。

第5【経理の状況】

第5【経理の状況】では、以下の項目が記載されています。

  • 連結財務諸表等
  • 財務諸表等

このパートには、企業の損益計算書や貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書が掲載されています。それぞれの財務諸表を読むことで、企業の経営成績や財政状態などが把握できます。

損益計算書の読み方については、下記の記事で詳しく解説しています。

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第6【提出会社の株式事務の概要】

第6【提出会社の株式事務の概要】では、株主名簿管理人や買取手数料など、株式に関わる事務全般の情報が記載されています。

第7【提出会社の参考情報】

第7【提出会社の参考情報】では、提出会社の親会社等の情報や有価証券報告書の提出日などが記載されています。

第二部 提出会社の保証会社等の情報

「第二部 提出会社の保証会社等の情報」では、有価証券発行における保証会社の情報が記載されます。保証会社がいない場合は、「該当事項なし」と書かれています。

監査報告書

「監査報告書」では、監査法人や監査上の対応など、監査に関する情報が記載されています。

有価証券報告書の見るべきポイントは?

有価証券報告書を読む際はすべての項目に目を通す必要はありません。

企業分析を行う際に最低限見るべきポイントは以下の7項目です。

  • 主要な経営指標等の推移
  • 事業の内容
  • 従業員の状況
  • 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
  • 事業等のリスク
  • 設備の新設、除却等の計画
  • 経理の状況

具体的にどこを見ていくのかを紹介していきます。

主要な経営指標等の推移

1つ目は、第1【企業の概況】の「主要な経営指標等の推移」です。この項目から、時系列での売上・利益などの推移を確認します。この項目を見ることで、直近5年間の業績が順調なのか、どこかで赤字を計上していないかなどを把握することができます。特に2020年からは新型コロナウイルスが流行した時期であるため、この期間に業績が傾いていないか、傾いていたとしたら回復してきたか等も見ておくと良いでしょう。

事業の内容

2つ目は、第1【企業の概況】の「事業の内容」です。そもそも、その会社が何をやっているのかが分からないと、その後の情報を見てもなにも示唆が得られません。いきなり財務諸表を見るのではなく、先に事業の内容を確認することは企業分析において非常に大切です。

従業員の状況

3つ目は、第1【企業の概況】の「従業員の状況」です。この項目で、人が多く必要なビジネスなのか、どのような人が働いている会社なのかが分かり、その会社のビジネスの解像度が上がります。また、給与が高い会社は1人あたりの営業利益が高いことを意味するため、平均年収の情報も見ておきましょう。

もし余裕があれば過去の有価証券報告書と比較し、従業員が増えているか、平均年収は上がっているのか等も把握すると、その会社が成長しているかどうかも分かります。

経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

4つ目は、第2【事業の概況】の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」です。企業の経営方針や企業理念を見ることで、なにを目的とした会社なのか、どういう価値を世間に提供しているのかが読み取れます。

ビジネスは価値を提供した対価として金銭を受け取るものですので、企業理念は必ず見ておきましょう。

事業等のリスク

5つ目は、第2【事業の概況】の「事業等のリスク」です。企業活動を行う際には、必ずリスクが発生します。数字には表れないリスクもここに記載されているため、企業分析をする際にはリスクの情報もチェックしましょう。

設備の新設、除却等の計画

6つ目は、第3【設備の状況】の【設備の新設、除却等の計画】です。新しく設備を新設する予定があるかを確認することで、将来の投資を考えているかどうかを読み取ることができます。

経理の状況

7つ目は、第5【経理の状況】です。財政状態を表す貸借対照表、経営成績を表す損益計算書、企業の現金の流れを表すキャッシュ・フロー計算書の数字をそれぞれ確認することで、安全性や収益性などを読み取ることができます。

また、財務諸表の中に異常値があった場合は、なぜなのかを考えることでより深い企業分析を行うことができます。

有価証券報告書の読み方を企業事例を用いて解説

それでは、実際の企業事例を用いて有価証券報告書の読み方を解説します。

今回は、SwitchやDSでおなじみのゲームメーカー「任天堂」を事例に紹介していきます。

任天堂の業績

まずは、任天堂の「主要な経営指標等の推移」を見ていきましょう。直近5年間の売上と利益の推移を見ていくと、2021年に売上と利益が大幅に増加しているのが読み取れます。

これは、コロナ禍での巣ごもり需要でSwitchの販売が好調であったためです。

任天堂のビジネスモデル

次に、「事業の内容」を確認すると、任天堂はゲーム機を中心とした娯楽製品の開発、製造及び販売を行っている会社であることが分かります。

任天堂の従業員の状況

任天堂の「従業員の状況」を確認すると、従業員2,779人の平均給与は985万円です。5年前の2018年の有価証券報告書と比較すると、従業員は約600人増え、平均給与は約100万円近く増加しているため、任天堂が5年前よりも成長していることが読み取れます。

任天堂の企業理念

任天堂の企業理念は、「娯楽を通じて人々を笑顔にする会社」と記載されており、かつて経験したことのない楽しさ、面白さを持った娯楽を価値として提供していることが分かります。

任天堂の事業のリスク

任天堂のリスク情報の中で、特に抑えておくべき項目に「業績の季節的変動」があります。ゲームソフトはクリスマスやお正月などの年末に需要が高まるため、任天堂はそこに合わせて商品を販売します。そのため、業績が年末に伸びやすい特徴があります。しかし、年末商戦にヒット商品を出せなければ業績に大きく関わってくるため、決算書には事業のリスクとして「業績の季節的変動」が記載されているのです。

任天堂の設備の情報

任天堂の「設備の新設、除却等の計画」を見ると、2025年に研究開発設備や生産設備の計画があることが読み取れます。この情報から、Switchの次のゲーム機が販売されるのではないかと推測することができます。

任天堂の財務諸表

最後に、任天堂の財務諸表を見ていきましょう。

任天堂の損益計算書

任天堂は外部の向上にゲームの生産を委託し、そこで生産されたゲーム機を一般消費者向けに販売しています。したがって、ゲーム機の製造原価がコスト構造の大半を占めています。

また、2023年3月期はポケモンやマリオシリーズなどのミリオンセラータイトルを35本生み出し、売上高を大きく押し上げたため、営業利益率が約30%と収益性が非常に高いことが読み取れます。

任天堂の貸借対照表

任天堂はゲームのヒットの有無により、業績が大きく変動する特徴があります。そのため、業績が悪化した際の安全性を確保する目的で、現金たくさん保有しています。

一方で、任天堂はゲーム機の製造を外部に委託しています。したがって、自社で生産設備をほとんど有していないため、固定資産は小さくなります。

有価証券報告書の調べ方は?

最後に、有価証券報告書の調べ方を紹介します。

企業の有価証券報告書を調べる方法は主に2つあります。

  • 企業のIRページから調べる
  • EDINETから調べる

企業のIRページから調べる

1つ目の方法は、企業のIRページから調べる方法です。

  • 手順①:Googleで検索する
  • 手順②:検索結果のIRページをクリックする
  • 手順③:IRライブラリを探す
  • 手順④:有価証券報告書をクリックする
  • 手順⑤:見たい年度を指定する

順に解説します。

手順①:グーグルで検索する

まずは、Googleで調べたい企業の「企業名」と「IR」を入力して検索します。

手順②:検索結果のIRページをクリックする

検索結果が表示されたら、その中にある「投資家情報」と書かれたページをクリックします。

基本的に1番上に出てくることが多いです。

手順③:IRライブラリを探す

企業の投資家情報が表示されたら、決算書が格納されている「IRライブラリ」をクリックします。

手順④:有価証券報告書をクリックする

「IRライブラリ」を開いたら、その中にある「有価証券報告書」をクリックします。

手順⑤:見たい年度を指定する

「有価証券報告書」を開くと、四半期報告書と有価証券報告書が表示されるため、見たい年度の資料をクリックします。基本的に最新の資料が1番上に表示され、過去の資料にさかのぼりたい場合は年度を指定する形式が多いです。

EDINETから調べる

2つ目の方法に、EDINETから調べる方法があります。

EDINETとは、「Electronic Disclosure for Investors' NETwork」の略称で、金融庁が運営する金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システムのことをいいます。

このEDINETからでも企業の有価証券報告書を調べることができます。

  • 手順①:Googleで検索する
  • 手順②:検索結果の「EDINET」のページをクリックする
  • 手順③:企業名・書類・提出期間を指定する
  • 手順④:見たい年度の資料をクリックする

順にみていきましょう。

手順①:Googleで検索する

はじめに、Googleで「EDINET」と入力して検索します。

手順②:検索結果の「EDINET」のページをクリックする

検索結果が表示されたら、その中にある「EDINET」と書かれたページをクリックします。

基本的に1番上に出てきます。

手順③:企業名・書類・提出期間を指定する

EDINETのページが出てきたら、トップページの「書類簡易検索」の欄に、調べたい企業の企業名・調べたい書類の種類・書類の提出期間を指定して検索します。

手順④:見たい年度の資料をクリックする

手順③で検索をすると、調べたい企業の資料が一覧で表示されるため、見たい年度の資料をクリックします。過去の資料にさかのぼりたい場合は、手順③の提出期間を「全期間」に指定すると、表示されます。

有価証券報告書のまとめ

最後にまとめです。

今回は有価証券報告書の読み方について解説しました。有価証券報告書にはさまざまな情報が掲載されていますが、すべてに目を通すと時間がかかってしまうため、企業分析を行う際は以下の7つの項目を見ておきましょう。

  • 主要な経営指標等の推移
  • 事業の内容
  • 従業員の状況
  • 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
  • 事業等のリスク
  • 設備の新設、除却等の計画
  • 経理の状況

有価証券報告書が読めるようになると、企業のビジネスモデルを読み解くことができたり、将来性を予測することができます。

この記事を開きながら、ぜひ他の企業の分析にも挑戦してみてください!

<この記事の出典データ>

任天堂 IR

EDINET

この記事を書いた人

著者:大手町のランダムウォーカー

大手町のランダムウォーカー

Funda社運営

トータルSNSフォロワー20万人の会計インフルエンサー。著書の『世界一楽しい決算書の読み方』はシリーズ累計30万部突破。

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