営業利益とは?計算式や分析方法、経常利益との違いを徹底解説
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会計2024.5.23
営業利益とは?
営業利益とは、本業の営業活動で生み出した利益のことを意味します。一般的によくいわれる「利益」という言葉は、この営業利益を指している場合が多いです。
営業利益は、売上高から売上原価と販売費及び一般管理費(以下:販管費)を差し引いて算出します。したがって、営業利益はビジネスモデルの強さを表す利益と呼ばれます。
早速ですが、ここで簡単なクイズです。
約4年前の2020年、コロナの影響で飲食業は大きなダメージを受けましたが、中には黒字を維持した企業も存在します。
コロナの影響が反映される2020年の決算数値が黒字の会社は、選択肢のうちどれでしょうか?
ぜひ考えてみて下さい。
- サイゼリヤ
- コメダ珈琲
- 吉野家
現時点でわからなくても問題ありません。記事を読み終わるころには、上記のクイズが理解できるようになるはずです。
この記事では、営業利益の意味や計算式、分析方法、経常利益との違いについて図解を用いてわかりやすく解説します。
無機質な説明のみではつまらないと思いますので、実際の企業事例を豊富に入れて解説していきます。ぜひ最後まで読んで頂けますと幸いです。
営業利益の英語表記
営業利益は英語で「Operating profit」と表現します。「Operating income」や「Operating margin」と表記することもあります。
海外の決算書を見る際に必要な知識ですので、ぜひこの機会に英語表記もあわせて押さえておきましょう。
営業利益の計算式
営業利益は、以下の計算式で算出します。
- 売上高-売上原価-販管費=営業利益
営業利益は、売上高から売上原価と販管費を差し引いて求めます。
新卒くん
売上高は聞いたことあるんですけど、売上原価と販管費って何ですか?
上記の用語を初めて聞く方も多いと思います。
ここからは、営業利益を求める際に必要な売上高・売上原価・販管費について詳しく解説します。
売上高
売上高とは、商品を販売したり、サービスを提供したりして得た会社の本業の収入のことです。企業の事業規模を表します。
たとえば、本を仕入れて販売する書店の場合、本を販売して得た収入が売上高となります。
売上原価
売上原価とは、売り上げた商品と直接的に対応する費用のことを指します。商品を仕入れた際に発生した金額や、製品の製造に要した費用などが該当します。
たとえば、書店の場合、販売した本を仕入れるためにかかった費用が売上原価となります。
売上原価の細かい分類について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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販売費及び一般管理費(販管費)
販管費とは、商品やサービスを販売するために間接的に発生した費用です。
たとえば、書店の場合、本を販売するための店舗の家賃や従業員の給料などが販管費に該当します。
販管費は、具体的に以下のようなものがあります。
- 給料
- 広告宣伝費
- 運送費
- 家賃
- 減価償却費
- 外注費
企業の販管費の項目を見ることで、商品をどのように顧客に販売しているかが分かります。
販管費についてより詳しく学びたい方は、下記の記事がおすすめです。
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売上高営業利益率の計算式
営業利益の関連指標に売上高営業利益率という指標があります。売上高営業利益率とは、売上高に対する営業利益の割合を表す経営指標です。以下の計算式で算出します。
- 営業利益÷売上高×100=売上高営業利益率(%)
営業利益を売上高で割ることで、本業からどれくらい効率よく営業利益を稼いだのかがわかります。
営業利益の基本的な考え方
営業利益の考え方はシンプルで、売上高営業利益率が高ければ高いほど、本業で効率よく利益を獲得していると判断できます。
しかし、営業利益率は業種や業界によって平均値が異なります。
より重要なことは「なぜそのような営業利益率の数値になるのか?」を考えることです。営業利益率の高低のみを見るのではなく、その数値となっている背景まで知ることで、より深い示唆を得ることができます。
営業利益と各種利益の違いとは?
営業利益は、損益計算書において利益の項目に分類されます。
損益計算書上の利益は営業利益の他に、粗利(売上総利益)、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益があり、売上から各種費用が除かれていく段階別に利益の名称が異なります。
- 粗利
- 経常利益
- 税引前当期純利益
- 当期純利益
これらの利益と営業利益は、何が違うのかについて解説します。
粗利(売上総利益)との違い
粗利(売上総利益)とは、売上高から売上原価を差し引いた利益です。
- 売上高-売上原価=売上総利益
売上総利益は、売上高から売上原価のみを差し引いて求める利益のため、商品力の強さを表します。
一方、営業利益は、売上高から売上原価のみならず、商品を顧客に届けるまでの費用である販管費も控除して算出するため、ビジネスモデルの強さを表します。
粗利については、下記の記事で詳しく解説しています。
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経常利益との違い
経常利益とは、本業で獲得した営業利益に、本業以外で獲得した収益(営業外収益)を加算し、費用(営業外費用)を差し引いた利益です。事業で稼ぐ力の他に資金運用力等の力も加えた企業の総合力を表すため、会社の実力が一番反映される利益ともいわれています。
- 営業利益+営業外収益-営業外費用=経常利益
営業利益は本業で稼いだ利益を意味しますが、経常利益は本業と本業以外の利益を合算した利益を意味します。
税引前当期純利益との違い
税引前当期純利益とは、当期に発生した全ての事象を反映した、税金等を除く前の利益です。
- 経常利益+特別利益-特別損失=税引前当期純利益
本業で稼いだ利益のみを表した営業利益とは異なり、税引前当期純利益は、経常利益に特別損益といった臨時的な事象から発生した利益や損失を加算して算出されます。
当期純利益との違い
当期純利益とは、当期に発生した全ての事象を反映し、税金等を除いた後の最終的に会社の手元に残る利益です。
- 税引前当期純利益-法人税等=当期純利益
営業利益は本業で稼いだ利益を表しますが、当期純利益は営業利益に営業外損益、特別損益、法人税等を考慮して算出した会社の最終的な利益を表します。
営業利益を分析する際のポイント
それではここからは、営業利益を分析際のポイントについてを解説していきます。
営業利益を分析際の切り口は大きく2つあります。
- ①財務会計上の区分
- ②管理会計上の区分
それぞれの切り口において見るべきポイントを解説していきます。
財務会計上の区分で分析する
財務会計とは、主に株主や銀行等の企業外部の利害関係者に向けて経営状態を報告する際に使う会計のことです。
決算短信や有価証券報告書の財務数値は、財務会計のルールに基づき報告されています。
財務会計上の区分では、営業利益は売上高から売上原価と販管費を引いて算出されます。
差し引かれる費用の内訳を見ることで、企業の戦略を読み取ることができます。
例えば、同じ商品でも売り方の違いで計上される費用が異なります。営業マンを採用して商品を販売する場合には費用項目に「人件費」が計上されます。一方、営業マンを一切雇わずに広告のみで商品を販売する場合には費用項目に「広告宣伝費」が計上されます。
このように、企業の戦略によって計上される費用項目が異なるため、費用の内訳を見ることはとても重要です。
戦略の違いによるコスト構造の違いを読み取る
仮に営業利益が同じ水準だとしても、戦略によってはコスト構造が大きく異なる場合があります。
ここでは例として、低価格戦略と高価格戦略の2つの戦略を数字を使って比較していきます。
低価格戦略は、安い値段で販売するため売上総利益が小さくなります。
一方、高価格戦略は高い値段で販売するため売上総利益が大きくなります。
同じ商品を扱っている以上、単価が高い方が商品から生み出される利益の額は大きくなります。従って、売上総利益ベースでは高価格戦略の方が利益率が高くなります。
しかし、高価格戦略の場合は、通常の商品よりも単価が高いため、販売するための努力がより一層必要となります。
- 広告宣伝費をかけて、より多くの認知を獲得する
- 物流費をかけて、より顧客の身近な場所まで届ける
- 人件費をかけて、営業や顧客サポートをより充実させる
一方、低価格戦略は「安さ」という強力な価値があるため、通常、高価格商品に比べ販売することが容易となります。その結果、販売に関する費用は高価格戦略の商品よりも抑えることが可能となります。
このように、販売に関する費用まで含まれる営業利益ベースで両者を比較すると、売上総利益ベースでは高価格戦略の方が利益率が勝っていましたが、営業利益ベースの数値では同じ水準になることも考えられます。
以上の事例からもわかるように、営業利益は商品の販売までを含めたビジネス戦略の結果を表します。
コスト構造を見ることで、企業が営業利益を生み出すためにどのような努力をしているのかを読み取りましょう。
管理会計上の区分で分析する
管理会計とは、企業の予算を決めたり、目標達成を管理するための会計です。
企業内部のみで共有されるものが多く、財務会計上の数値と異なり、通常は外部へは公開されません。
管理会計の世界では、営業利益を下記の2つの指標に分解することができます。
- 限界利益
- 固定費
限界利益とは、売上高から変動費を引いて残る利益です。商品を1つ販売するごとに増える利益を意味します。
固定費は、商品の販売数に関係なく毎期一定額発生する費用を意味します。
それぞれの売上高に占める割合を限界利益率、売上高固定比率と呼びます。
変動費や固定費という数値は外部から把握するのはむずかしく、公開されている財務諸表からでは数字の詳細はわかりません。
したがって、ビジネスをイメージながらおおよその数値を予測して使うケースが多いです。
実際の企業の営業利益の事例
それでは、ここまでの営業利益の解説を踏まえて、冒頭のクイズに挑戦してみましょう。
コロナの影響が反映される2020年の決算数値が黒字の会社は、選択肢のうちどれでしょうか?
ぜひ考えてみて下さい。
- サイゼリヤ
- コメダ珈琲
- 吉野家
タップで回答を見ることができます
サイゼリヤ
コメダホールディングス
吉野家ホールディングス
わかりましたか?
正解は、②コメダホールディングスでした。
同じ飲食業でも、営業利益を維持しやすい業態と、そうでない業態が存在します。
ここからは、クイズの解説をすると共に、ビジネスモデルの強さを表す指標である営業利益の読み方を紹介します。
各社のコロナ禍の影響
まずは各社のコロナの影響を確認してみます。
コメダホールディングスの売上高
コメダホールディングスの売上高は、コロナ前と比べて7.6%減少しています。
サイゼリヤの売上高
サイゼリヤの売上高は、コロナ前と比べて19%減少しています。
吉野家ホールディングスの売上高
吉野家ホールディングスの売上高は、コロナ前と比べて21.2%減少しています。
各社の売上高が前期に比べて大きく減少していることから、コロナの影響は3社共に受けていることが読み取れます。
コメダホールディングスのビジネスモデル
それではなぜコメダホールディングスだけ黒字を維持することができるのでしょうか?
その答えはコメダホールディングスのビジネスモデルにあります。
コメダホールディングスの出店形態はフランチャイズが中心です。全店舗の内、95%がフランチャイズによる出店ということが読み取れます。
また、主な販売先も一般消費者ではなく、フランチャイズが中心です。
売上高に占める70%がフランチャイズ店舗への商品販売となっています。
上記のビジネスモデルを数字で見ていきましょう。
コメダホールディングスは主にフランチャイズへの卸売りが中心となるため、売上原価が大きく表示されます。
その一方で、自社で店舗を保有しておらず、店舗の賃料やスタッフの人件費が抑えられることから、他の飲食業に比べて販管費の比率がかなり僅少となっています。
したがって、コメダホールディングスは固定費が非常に少ないビジネスとなります。
つまり、売上高が減少しても固定費が少ない経営をしているため黒字を維持し続けることができるという強みが決算数値から読み取ることが出来ます。
このように、実際の企業の事例で営業利益や、その営業利益が生み出される仕組みを知ることが可能です。
営業利益の調べ方とは?
最後に、実際の指標の調べ方です。
今回は有価証券報告書を使って営業利益の数値を取りに行きます。
有価証券報告書から経理の状況を開く
まずは、有価証券報告書の第一部【企業情報】の中の、第5【経理の状況】を開きます。
損益計算書から営業利益の数値を取得する
その中にある損益計算書に各種利益が記載されているため、営業利益の数値を取得します。
営業利益のまとめ
以上、指標の解説でした。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
指標を比べ差が出ることがわかったら、次はその原因がどこにあるのかを調べることで、より深い企業分析を行うことができます。ぜひ参考にして頂けると幸いです。
ぜひ、類似のクイズにも挑戦して、売上総利益率の理解を深めましょう!
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