広告ビジネスの儲けの仕組みを徹底解説!最も収益性が高いのは?
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企業分析2024.4.29
会計クイズとは、企業のビジネスモデルと財務数値を結びつけるトレーニングができるコンテンツです。
今回は米国の代表的な広告ビジネス企業である「Alphabet、Meta、Twitter」の3社の比較問題です。
クイズを通じて、分析力やビジネスリテラシーを身に付けましょう!
会計クイズの登場企業紹介
最初に今回の登場企業の紹介です。
- Alphabet(Google)
- Meta(Facebook)
この3社は、世界の代表的な広告ビジネス企業です。
それでは各社の売上高の構成を簡単に紹介します。
Alphabet(Google)の売上高の構成
Alphabetは、みなさんもよく利用する「Google」や「YouTube」などのインターネットサービスを展開しています。
Alphabetの売上高は、
- Google Search & other 58%
- YouTube ads 11%
- Google Netwok 12%
- Pixel / Google Play / YouTube Premium 11%
- Google cloud 7%
で構成されており、広告収益が全体の約81%を占めています。
Metaの売上高の構成
Metaは、有名な「Facebook」や「Instagram」などのSNSを提供しています。
Metaの売上高は、
- Advertising 97%
- Other revenue 1%
- Reality Labs 2%
で構成されており、広告収益が全体の約97%を占めています。
Twitterの売上高の構成
Twitterは、みなさんもご存知「Twitter」を提供しています。
Twiterの売上高は、
- Advertising services 86%
- Data Licensing and other 14%
で構成されており、広告収益が全体の約86%を占めています。
3社とも広告ビジネスを展開していますが、それぞれメインサービスと広告売上比率に違いがあります。
会計クイズ:問題
広告ビジネスを展開する「Alphabet」、「Meta」、「Twitter」3社の損益計算書のうち、Alphabetの損益計算書はどれかを予想してみてください。
タップで回答を見ることができます
選択肢①
選択肢②
選択肢③
損益計算書って何?という方は、下記の記事を参考にしてみてください。
関連記事
損益計算書とは?決算書の読み方を企業分析のプロがわかりやすく解説
navi.funda.jp/article/profit-and-loss-statement
会計クイズ:正解
正解は選択肢①がAlphabetの損益計算書でした。
今回も沢山の方にお付き合い頂きました。ありがとうございました。
それでは、解説に移ります。
会計クイズ解説:Alphabet
まずはAlphabetから見ていきます。
Alphabetの売上高
Alphabetの売上高は上述した通り、
- Google Search & other 58%
- YouTube ads 11%
- Google Netwok 12%
- Pixel / Google Play / YouTube Premium 11%
- Google cloud 7%
で構成されています。
つまり、売上高の8割を広告収益が占めています。
Googleの広告収益
Alphabetの広告収益は主に3つあります。
- Google検索&その他:Googleの検索結果やGmailなどに掲載された広告による収入です。
- YouTube広告:YouTubeに掲載された広告による収入です。
- Googleネットワーク:Google AdSenseなどのGoogleネットワークのパートナーサイトに掲載された広告による収入です。
Googleの広告収益の推移
3つの広告収益のうち、特に「YouTube広告」は2年で約2倍というペースで急成長を続けています。
「Google検索&その他」と「Googleネットワーク」はここ数年成長が鈍化していましたが、こちらも2021年には大きく成長しています。
Googleのビジネスモデル:広告の種類とKPI
Google広告には2種類あります。
1つ目はパフォーマンス広告です。
こちらの主な広告目的は直接的なエンゲージメントです。
クリック/購入などで収益を認識するため、パフォーマンス広告のKPIは「クリック数」✕「クリック単価」となっています。
2つ目はブランド広告です。
こちらの主な広告目的は認知度や親近感の向上です。
広告の表示によって収益を認識するため、ブランド広告のKPIは「インプレッション」✕「インプレッション単価」となっています。
それぞれのKPIの具体的な数値について見ていきます。
パフォーマンス広告のKPIは、有料クリック数が23%増加、クリック単価が15%増加と2021年はどちらも成長しています。
また、ブランド広告のKPIも、インプレッションが2%増加、インプレッション単価が35%増加と成長しています。
一方、2020年はクリック単価とインプレッション単価がともに約10%減少していました。
これは、コロナの影響で広告支出を抑制する広告主が多かったことが要因です。
Alphabetの損益計算書:売上原価
次にAlphabetの売上原価を見ていきます。
Alphabetの売上原価は「TAC」とその他に分類され、全体の4割を「TAC」が占めています。
TACとは、「Traffic Acquisition Costs」の頭文字をとった略称で、トラフィックを獲得するために、第三者のブラウザプロバイダーやGoogleネットワークなどのパートナー企業へ支払う送客費用のことをいいます。
売上原価の6割を占めている「その他」には、YouTubeなどでのコンテンツ獲得費用やデータセンター費用、ハードウェアの原価などが含まれます。
以上を踏まえてAlphabetの損益計算書を確認します。
Alphabetの売上高の8割を広告収益が占めています。そのため「クリック数」や「インプレッション」が重要指標となります。
これらの重要指標を増やすために「TAC」などの費用をかけているため、売上原価率が高い傾向にあります。
会計クイズ解説:MetaとTwitter
次にMetaとTwitterを解説していきます。
MetaとTwitterの売上構成
両社とも売上高の約9割を広告収益が占めています。
MetaとTwitterの広告収益
両社の広告収益は各SNSに広告を表示することで得られる「インプレッション連動型」がメインです。
MetaとTwitterの売上原価
両社の売上原価はデータセンターの運営費がメインとなっています。
以上のようにMetaとTwitterはビジネスモデル、売上・費用構造が類似しています。しかし、両者の損益計算書を見ると売上原価率に差があります。
なぜ売上原価率に差があるのでしょうか?
この答えは広告収益を分解することで見えてきます。
2社の広告収益は「1日のアクティブユーザー数(DAU)」✕「1ユーザーあたりの平均収益(ARPU)」に分解されます。
Metaの広告収益は「28億人(DAU)」✕「11.57ドル(ARPU)」で326億ドルです。Twitterの広告収益は「2億人(DAU)」✕「6.01ドル(ARPU)」で11億ドルです。
Metaの方がDAUだけでなくARPUでもTwitterを大きく上回っています。
MetaのARPUがTwitterより高くなる理由は、Facebookが実名・実情報が登録されていることでより正確なターゲティングができるなど、広告価値が高いからであると考えられます。
以上より、TwitterよりもDAU・ARPUともに大きいMetaの方が売上原価率が低く、営業利益率が高くなっています。
補足説明となりますが、2021年4月にMetaにとって大きなリスクとなるリリースがありました。
それはAppleが、2021年4月(iOS14)からターゲティングや効果測定の能力を制限したことです。
実名登録を活かしたターゲティングで高いARPUを出していたMetaにとって、このような制限は事業上大きなリスクです。
もちろんこれはFacebookのみならず、同じビジネスを展開しているTwitterにとってもリスクの1つです。
最後に3社の規模を確認しましょう。
各広告収益を実数で比較すると、Alphabetの「Google検索&その他」が圧倒的に大きいことがわかります。
また、FacebookやInstagramを含むMetaの広告収益とTwitterの広告収益には大きな差があります。
この違いは上記で説明した通り、DAUとARPUの差にあります。
ビジネスの実態を理解するためには比率だけでなく、実数で規模まで把握することが重要です。
会計クイズ:まとめ
最後にまとめです。
今回は米国の代表的な広告ビジネス企業である3社のビジネスモデルや収益・費用構造について解説しました。
決算数値を見ることで、身近に使用しているサービスの実態を読み取ることができます。
以上、お付き合いいただきありがとうございました。
決算書や企業のビジネスについて少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。
正解した方は、ぜひ友人や会社の同僚にも出題してみてください
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<この分析記事の出典データ>