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【棚卸資産回転期間】在庫保有の効率性の測り方

【棚卸資産回転期間】在庫保有の効率性の測り方

2022.6.24に更新

棚卸資産回転期間とは

棚卸資産回転期間とは、商品や材料を仕入れてから販売するまでにどの程度の時間を要したかを示す効率性の指標です。
棚卸資産回転期間が長い場合、売れ残りの在庫が多いことを表すため、一般的には短い方が望ましいです。

棚卸資産回転期間の計算式

棚卸資産÷(売上原価÷365)=棚卸資産回転期間(日)
棚卸資産回転期間とは
類似指標として、棚卸資産回転率という指標も存在します。(在庫回転率と呼ばれることもあります。)

棚卸資産回転率の計算式

(売上原価÷棚卸資産)=棚卸資産回転率(回)
棚卸資産回転率とは

棚卸資産回転期間と回転率の違い

どちらの指標を使っても意味は同じであるため、分析やほかの指標との兼ね合いで使い分けることが望ましいです。
使用用途によって、どちらで表現する方が適切かを判断して使ってみてください。
棚卸資産回転期間と回転率の違い

棚卸資産回転期間の考え方

棚卸資産回転期間は、損益計算書の売上原価が貸借対照表の棚卸資産の何倍存在するかを測り、棚卸資産の効率性を把握する指標です。

例えば、売上原価の金額が1,200万円で、棚卸資産の金額が100万円だったとします。売上原価の金額は棚卸資産の金額の12倍に相当します。
つまり、1年でかかる売上原価1,200万円に対して、100万円(約1ヵ月分)を棚卸資産で保有していることを意味します。
棚卸資産回転期間で表すと約30日となり、企業が商品を仕入れてから販売するまでに30日程度要すると概算することができます。

棚卸資産回転期間は、一般的に短い方がいいとされています。
企業の現金は無限ではありません。
企業は保有している現金をいくつかの選択肢の中から、最も利益を出せると考えたものに投資しています。
今回の場合は他にも様々な投資機会がある中で、棚卸資産(商品)に投資しているということです。
よって、棚卸資産回転期間が長いということは、仕入れた商品が販売できずに現金が拘束されていることを表し、他の投資機会を失っているということです。

<参考>取引の全体像の図解
棚卸資産回転期間の全体像

棚卸資産回転期間の構成要素の把握

より深堀りするために構成要素についても解説していきます。

棚卸資産とは

棚卸資産とは、企業の貸借対照表の流動資産に含まれる勘定科目の一種で、企業が販売する商品の在庫のことを指します。
棚卸資産
一般的には棚卸資産は、

  • 通常の営業過程において販売する財貨または用役→仕入れた商品や製造した製品
  • 販売を目的とした現在製造中の財貨または用役→販売するための製品で、現在製造途中にある仕掛品
  • 販売目的の財貨または用役を生産するために短期的に消費されるべき財貨→製品を製造するために投入される材料など
  • 販売活動および一般管理活動において短期的に消費されるべき財貨→販売するための製品を包装する資材などの消耗品

の4つに分類されます。

りんごジュースの製造過程を例に上げると、
①材料(りんご+砂糖などの材料)
②仕掛品(ミキサーにいれて砕いてる途中)
③製品(りんごジュースとして販売できる状態〔ジュース自体+容器〕)
となります。
この過程にある材料は、全て棚卸資産として計上されます。

しかし、棚卸資産と言っても、長い期間かけて材料から製品にするものもあれば、すぐに販売できる完成品を仕入れる場合も存在します。
そのため、「商品を製造しているのか」、「どの程度製造しているのか」、「棚卸資産には何が入るのか」を知ることが非常に重要となります。
棚卸資産の分解

合わせて見るべき仕入債務回転期間と売上債権回転期間

企業は、仕入販売、現金の支払いと回収という取引の流れが存在します。
そして、この取引の流れすべてを見ることで、企業の取引と現金の動きを把握することにつながります。
しかし、取引と現金の流れを、棚卸資産回転期間を見るだけでは把握できません。

そのため棚卸資産回転期間を見る際には、仕入債務回転期間と売上債権回転期間も合わせて確認する必要があります。
特に仕入(製造)販売を行なっている企業では、仕入と販売、現金の支払と回収という取引の全てに関わってくるため、確認しましょう。

では各指標について簡単に解説します。

まず、売上債権回転期間は、商品を売り上げてから現金として回収できる期間を表します。
次に仕入債務回転期間は、商品を仕入れてから現金を支払うまでの期間を表します。
そして、棚卸資産回転期間は、商品を仕入れてから商品を販売するまでの棚卸資産として計上される期間を表します。

上記の3つを見ることで、企業の取引と現金の流れを把握することができます。

特に確認すべきは、現金の支払から回収までの期間です。
支払いが遅く、現金の回収が早いほど、企業が多くの現金を保有することができます。

そもそも可能な限り現金を保有した方がいい理由は、企業を存続させるために現金が最も重要だからです。
たとえば、急な出費が発生した際に、企業に現金がなければ支払うことができず、企業が危機にさらされるかもしれません。さらに、魅力的な投資機会があっても現金がなければ、投資することができません。
よって、現金が企業の存続に最も重要です。

詳しくは、CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)の記事で解説しています。

各指標は以下から!
仕入債務にフォーカスした仕入債務の発生から現金の支払いまでの期間を測れる仕入債務回転期間
商品を販売してから現金を受け取るまでの時間を計算する売上債権回転期間

棚卸資産回転期間(棚卸資産回転率)の計算に使う分母

棚卸資産回転期間を計算する際に、分母の金額を「売上原価」と「売上高」どちらで計算するのが適切かが論点になります。
結論から言うと、いずれかの数値を採用する理由が明確にある場合にはどちらを使っても問題はありません。

売上原価を使う場合

棚卸資産と金額的に対応するのは売上原価です。

営利企業の場合、仕入れた商品をそのままの原価で販売することはほとんどありません。
通常は仕入原価に利益が上乗せされて売価が決まります。

指標の算出の際にも売上原価を使用するというのが金額的な対応を考慮した計算アプローチです。

売上債権回転期間や仕入債務回転期間と比較する場合は、棚卸資産回転期間の分子に売上原価を用いると適切に比較することができます。

売上高を使う場合

売上高を使う場合は、他の指標との対応関係を考慮している場合が考えられます。

例えば総資産回転率は売上高と総資産を比べて算出されます。
総資産の中身を分解してより正確な資産の効率性を検証する場合、有形固定資産回転率や売上債権回転率などの指標に分解されます。
同様に棚卸資産も総資産の構成要素の1つであるため、棚卸資産回転率を計算する際には、分母を統一して売上高を用いる方が合理的です。

場合によって、使い分けることが望ましいです。
計算式はあくまで型の1つであり、計算式に固執し過ぎないというのが分析においては重要となります。
ビジネス実態をより正確に反映する財務数値を用いることを心がけましょう。

棚卸資産回転期間の使い方

計算式に当てはめて経営指標を算出するだけでは何も意味がないため、必ず意味のある示唆を見つける必要があります。
その際には、比較対象を決めて指標の数値を比較するというアプローチが有効です。

棚卸資産回転期間の場合、

  • 時系列での比較
  • 同業界での比較

が有効です。

時系列での比較

企業の在庫の滞留状況の大枠を追うことができ、企業をより深堀りするためのとっかかりを見つけることができます。
たとえば、大きな数値の変動があった際に、何があったのかを調べることで企業の変化を理解することができます。

同業界での比較

企業ごとの数値の差を比較することで、同業界の企業の強みや弱みの発見につながります。

一般的に、同業界の企業は、「ビジネスモデルが似ている」「取り扱っている商品が似ている」などにより、数値に大きな差は生まれづらい傾向にあります。
しかし、深く数値の差を追求すると、企業の強みや弱みが見えてくることがあります。
加えて、業種の平均値を知ることがより正確に数値を読み取ることにつながります。

棚卸資産回転期間の使い方

棚卸資産回転期間を使ってより深い考察をするヒント

仮に、似たような業種で棚卸資産回転期間に差が出る場合には、その差にどのような原因があるのかを考える必要があります。
ここでは差が出る原因の例を紹介します。

①商品の販売形態で差が出るケース

小売業と製造業では棚卸資産の性質が異なります。

小売業は通常、他社の製造したものを仕入れて販売するため、棚卸資産の中身は完成品である商品となることが多いです。
一方、製造業の場合は、自社で材料を仕入れ、製造過程を通して製品を完成させます。

したがって、棚卸資産の中身は、製品はもちろん、製造過程の仕掛品、製造のための材料となります。
両者のどちらが棚卸資産回転期間が長いかを考えた場合、通常は材料から製造工程を経て完成させる製造業の方が長くなります。
販売形態の違いによる棚卸資産回転期間の違い

製造販売の場合の分解式

製造販売の場合は、棚卸資産回転期間を棚卸資産の構成要素ごとに分解して考えるとより深い示唆を得られます。
‍‍
例えば、棚卸資産回転期間が長い製造業があったとして、その原因を調べるために、棚卸資産を「材料」、「仕掛品」、「製品」に分解しました。
その結果、材料の状態でいる期間が、一番期間が長いことが判明し、その原因を調べていくような思考フローです。
棚卸資産の種類の多い製造業の場合には有効な分析となることが少なくないので、ぜひ頭の片隅にでも入れておいてください。
棚卸資産回転期間の分解式

②商品の特徴で差が出るケース

扱っている商品の特徴によって棚卸資産回転期間に差が出るケースです。

例えば賞味期限が長い商品と短い商品があったとします。
賞味期限が短いということは出来る限り早く販売しなければなりません。
さらに、賞味期限が短いということは、仮に売れなかった場合も処分するため、棚卸資産として滞留することがほとんどありません。
よって、賞味期限が短い商品を扱う方が、棚卸資産回転期間は短くなる傾向にあります。

このように企業の扱っている商品によっても棚卸資産回転期間に差が出るので、商品への理解が非常に重要となります。
商品の違いによる棚卸資産回転期間の違い

棚卸資産回転期間を使う上で注意するべきポイント

棚卸資産回転期間を見る際に注意するべきポイントは、在庫の量が適切かどうかです。
基本的には、棚卸資産が少ない方が望ましいです。

棚卸資産が少ない方がいい理由

棚卸資産は一般的には少ない方が良いとされています。

企業は利益を増加させるために様々な投資機会を探しており、その選択肢の中の1つとして棚卸資産(商品)に投資を決めます。
しかし、商品が思うように売れず、在庫として多く残ってしまうことがあります。

この場合、棚卸資産に投資資金が拘束されてしまい、本来投資をできたはずの他の投資機会を逃してしまっていることを意味します。
したがって、棚卸資産は可能な限り素早く販売し現金化させることが重要となります。
このような理由から一般的には棚卸資産は少ない方が良いとされています。
棚卸資産が少ない方がいい理由

棚卸資産の適正量

棚卸資産は少ない方が良いと前述しましたが、逆に少なすぎる場合も問題があります。

例えば、売れるかわからないという理由で、棚卸資産を10個程度仕入れたとします。
しかし、予想とは裏腹に100人以上の人が購入を求めにやってきました。
棚卸資産の在庫は10個しかないため10人分にしか販売できません。
残りの90人には本来なら売れたにも関わらず在庫が無いために販売することができませんでした。これは大きな機会の損失です。

このように棚卸資産の適正量というのは非常に難しい話であり、多すぎても良くなければ少なすぎても良くありません。
その場その場での判断が重要となります。
棚卸資産の適正量

棚卸資産が一時的に増加している場合

在庫の動きを追っていると、一時的に棚卸資産が急増するようなケースに遭遇します。
教科書通りの判断をすると「在庫が多いは悪」となりますが、必ずしもそうならないケースももちろん存在します。

例えば

  • 翌期に新規出店を控えているケース
  • 翌期に大量の納品を控えているケース
  • 環境変化により需要が急拡大しているケース

などがあります。

新規出店を控えているケース

新規出店の店の商品を開店前に用意する必要があるため、一時的に棚卸資産は増加します。

翌期に大量の納品を控えているケース

製造途中の仕掛品や材料などが必要となるため一時的に棚卸資産は増加します。

環境変化により需要が急拡大しているケース

購入する人の方が多いのであれば、販売機会を逃がさないために一時的に棚卸資産を増やすのも合理性があります。
コロナウイルスが流行したタイミングでマスクの需要が急拡大したようなケースです。
棚卸資産回転期間を見る際の注意点

棚卸資産回転期間の調べ方

それでは実際の指標の調べ方です。
今回は有価証券報告書を使って棚卸資産回転期間の計算に必要となる数値を取りに行きます。

有価証券報告書の第一部【企業情報】の中の、第5【経理の状況】に売上原価と棚卸資産が記載されています。
経理の状況の貸借対照表の資産の部の中に棚卸資産、損益計算書の売上原価から棚卸資産回転期間を計算することができます。
また、棚卸資産の中身まで開示している企業の場合、注記事項を見ることで棚卸資産の中身まで確認することができます。
棚卸資産回転期間と有価証券報告書
棚卸資産回転期間と有価証券報告書
棚卸資産回転期間と有価証券報告書
棚卸資産回転期間と有価証券報告書
以上、指標の解説でした。
どんな指標でも同じことが言えますが、回転期間が長い、短いだけではなく、なぜ長いのか?なぜ短いのか?をビジネスに結び付けて考えられるとより示唆のある分析となります。
指標を比べ差が出ることがわかったら、次はその原因がどこにあるのかを調べることで一歩深堀した企業分析を行うことができます。ぜひ参考にして頂けると幸いです。

他の類似指標も見てみてください!
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売上が上がってから現金が入るまでの時間を計算する売上債権回転期間
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