業種別の決算書の読み方!-ゲーム業界の経営戦略を読み解く-
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企業分析2024.4.29
この記事では、企業の儲けの仕組みについてを図解を通じてわかりやすく解説します。
今回は、ゲーム業界がテーマです。
この記事では、ゲームビジネスの経営戦略やビジネスモデルの特徴についてを解説します。
会計クイズ:登場企業の紹介
今回の登場企業の紹介です。
・カプコン
・MIXI(モンスト)
この2社は日本を代表するゲーム事業を営む企業です。
しかし、ゲームの会社とはいえ、それぞれの課金形態は大きく異なります。
カプコンのゲーム事業
カプコンはバイオハザードやモンスターハンターなどのゲーム機/PC向けソフトを販売しています。
売上高の内訳を見ると、デジタルでの販売が全体の約5割を占めていることがわかります。
MIXIのゲーム事業
MIXIは主にスマートフォン向けゲーム(以下スマホゲーム)が主力の企業です。代表作にはモンスターストライク等があります。
売上高の内訳を見ると、大部分はスマホゲームからの収益ですが、近年はスマホゲーム依存からの脱却のためスポーツをはじめとした様々な分野の事業へ投資を行っています。
ゲームビジネスの課金形態
次に両社のゲーム事業の課金形態を見ていきます。
カプコンはゲーム機/PC向けソフトを販売する「プレミアム」モデルを採用しています。
一方で、MIXIは基本ゲームを無料で提供し一部のユーザーから課金収益を得る「フリーミアム」モデルを採用しています。
会計クイズ:問題
それでは、以上を踏まえてクイズです。
「モンスターハンター」や「バイオハザード」シリーズでおなじみのカプコンの損益計算書はどちらでしょう?
両者のゲーム事業と課金形態の違いが、どのようにコスト構造に影響するのかを予想して考えてみてください。
タップで回答を見ることができます
選択肢①
選択肢②
損益計算書の基本について詳しく知りたい方は、下記の記事もおすすめです。
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会計クイズ:正解の発表
正解は選択肢①がカプコンの損益計算書でした。
お付き合い頂き、ありがとうございます。
ゲーム業界の決算書の読み方
それでは両社のゲームビジネスがどのように決算数値に反映されるかを順を追って解説します。
カプコンのゲームビジネス
まず、カプコンのビジネスについて解説します。
カプコンは、主にゲーム機とPC向けソフトを開発・販売している企業です。
カプコンの主な販売先
カプコンの製品の販売相手は、個人向け、企業向けと多岐にわたりますが、特にゲーム機メーカーやPCゲームプラットフォーマーの売上比率が高い傾向にあります。
売上比率の高い代表的な販売先には、任天堂などが挙げられます。
カプコンのコスト構造
カプコンの売上原価の内訳を見ると、大部分がゲームソフトの製造原価であることが分かります。
カプコンの損益計算書を見てもわかる通り、発生するコストの大部分が売上原価で占められています。
このように、ゲーム機器を製造開発するゲームメーカーは、売上原価が比較的大きくなりやすい傾向にあります。
MIXIのゲームビジネス
次に、MIXIのゲームビジネスを解説します。
MIXIはスマホゲームであるモンスターストライクが主力の企業です。
スマホゲームのビジネスモデル
MIXIのスマホゲームのビジネスモデルは、主にフリーミアムモデルが採用されています。
フリーミアムモデルとは、基本ゲームを無料で提供し、一部のユーザーの課金によりゲームを運営する儲けの仕組みです。
フリーミアムモデルについてより詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
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事例で学ぶフリーミアムモデル!なぜ無料でサービスを提供できるの?
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MIXIの損益計算書
以上を踏まえて、MIXIの損益計算書を見ていきます。
MIXIの運営するスマホゲームは、アプリ上で提供されます。したがって、製造に関する費用は発生せず、売上原価は小さくなる傾向にあります。
一方、アプリ内課金では、AppleやGoogle等のプラットフォーマーに対して、約30%の手数料を支払う必要があります。
Appleのビジネスモデルについて、さらに詳しく知りたい方は、下記の記事もおすすめです。
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このプラットフォーマーへの支払手数料は、損益計算書上の販管費に計上されるため、MIXIの販管費率は比較的大きい傾向にあります。
このように、製造コストが少なく、一見すると儲かるように見えるスマホゲームも、支払手数料や広告宣伝費を加味すると、必ずしも収益性が高くなるわけではないことがわかります。
ゲーム業界のビジネスの特徴
それでは、ここからはゲーム業界のビジネスの特徴について解説していきます。
MIXIの業績推移
MIXIの業績推移を見ると、「モンスターストライク」リリース時は利益が一気に増加しますが、次のヒット作を生まないと高収益は長く続かないことが分かります。
カプコンの業績推移
カプコンも同様2012年度までヒット作の有無によって業績が大きくブレていました。
しかし、2013年度から9期連続で増益を果たしました。
なぜ業績のブレが大きいゲーム業界で安定的に成長できたのでしょうか?
カプコンの成長戦略
カプコンの安定成長の要因はゲームソフトのデジタル化にあります。
デジタル化とは、具体的にソフトのダウンロード版やダウンロードコンテンツの追加などがあります。
家庭用ゲーム機がインターネットへの常時接続を前提として開発されることをきっかけに、2013年からデジタル対応を強化しています。
その結果、デジタル売上高とともに、売上全体に占めるデジタル売上高比率も上昇していることが分かります。
デジタル化によるメリット
デジタル化によるメリットは主に4つあります。
①製造・流通コストの削減
②プレイ時間の長期化
③グローバル化
④旧作の収益化
順番に解説します。
まずはじめに、デジタル化のメリットとして製造コストの削減があります。
ソフトとは異なり製造コストがかからず在庫リスクを回避することが可能になります。
また、継続的なDLCの配信により、ユーザーに長期間プレイしてもらうというメリットもあります。
その結果、ブレの大きい業績を安定させることができます。
3つ目のメリットとして、グローバル化があります。
PCプラットフォームの活用で家庭用ゲームが普及していない地域にも販売可能となり、収益の安定につながっています。
4つ目のメリットとして、旧作の収益化があります。
ソフトのみでの販売であった旧作をデジタル販売することで、新作だけに頼らない安定した収益源を確保することに成功しています。
デジタル化による成長を支える「開発力」
カプコンがデジタル化で業績を拡大できた理由は、世界中で愛されるコンテンツと内製の高性能エンジンを有しているためです。
カプコンのビジネスモデル
世界トップクラスの開発力を有するカプコンは、デジタル化により時間的・地理的な制限がなくなったことで高収益企業へと変化しました。
会計クイズ:まとめ
最後に今回の記事のまとめです。
今回はゲームビジネスというテーマで、両者のビジネスモデルを比較しました。
同じゲームビジネスといっても、両者のビジネスモデルや課金形態などが全く違うことが決算数値を見ることによって読み取ることができます。
以上、今回のクイズの正解は、選択肢①がカプコンでした。
お付き合いいただきありがとうございました。
決算書や企業のビジネスについて少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。
決算書の読み方を基礎から学びたい方は下記の記事もおすすめです。
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<この分析記事の出典データ>
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