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固定比率・固定長期適合率とは?計算式や目安をわかりやすく解説

2024.5.22

固定比率・固定長期適合率とは?計算式や目安をわかりやすく解説

固定比率とは?

固定比率とは、純資産に対する固定資産の割合を示す指標です。固定資産のうち何割が純資産でまかなわれているかを見ることで、企業の財務健全性を測ることができます。


投資回収に時間がかかる固定資産を、返済義務のない純資産でカバーできていることが望ましいため、この数値が低いほど安全性が高いと考えます。

固定比率とは
新卒くんのセリフ

この記事では、固定比率と固定長期適合率の意味計算式目安について図解を用いてわかりやすく解説します。

企業分析をする際は、ぜひ参考にしてみてください。

固定比率の構成要素

固定比率は、固定資産純資産の比率を見る指標です。

  • 固定資産
  • 純資産

それぞれの意味について詳しく解説します。

‍固定資産

固定資産とは、長期にわたって所有し事業を行うために使用するもので、1年を超えて使用したり投資目的で長期間保有したりするような資産です。


固定資産の中身には、次のようなものがあります。

  • 建物
  • 工場
  • 無形固定資産

いずれも、現金化に長期の時間を要する特徴があります。

固定資産とは

純資産

純資産とは、企業が調達してきた資金のうち返済が不要なものを意味します。


純資産の中身には、次のようなものがあります。

  • 利益剰余金
  • 資本金
  • 新株予約権

いずれも、返済する必要がない資産という特徴があります。

純資産とは

固定比率の計算式

固定比率は、下記の計算式で算出します。

  • ( 固定資産÷純資産 )×100=固定比率(%)

現金化に時間がかかる固定資産と返済義務のない純資産のバランスを見ることで、企業の安全性を測ることができます


たとえば、固定資産が2,000万円で純資産が2,500万円の企業の場合、固定比率は80%(2,000万円÷2,500万円×100)となります。

固定比率の計算式

固定比率の目安は?

それでは、固定比率の目安はどれくらいがいいのかについて解説していきます。

固定比率の目安は100%以下

固定比率の目安は、100%以下が望ましい水準となります。

なぜなら、投資回収に時間がかかる固定資産すべてを、返済義務のない純資産でまかなえている方が、安全性が高いためです。

固定比率の目安

一方、100%以上の場合は、純資産以上の固定資産を購入していることを意味するため、安全性が低いと判断できます。


しかし、100%を超えたら必ず危険であるというわけではありません。返済義務のない純資産に返済に猶予がある固定負債も含めて固定資産をカバーできていれば、固定比率が100%を超えていたとしても安全性に問題はないと判断することができます。


固定負債も含めてより正確に安全性を分析する際は、後述する固定長期適合率という指標を使います。

固定比率の目安

固定比率の業種別平均

固定比率は、業種ごとに平均値が異なります。

固定比率の業種別平均

上の表を見ると、宿泊業や飲食業、不動産業の固定比率が高いのがわかります。これらの業界は設備投資が必要なため、固定資産の割合が高くなる特徴があります。そのため、固定長期適合率もあわせて確認すると良いでしょう。


一方、設備投資が必要ない情報通信業は、固定比率が低い傾向にあるのが読み取れます。


このように、固定比率は業種ごとに異なるため、企業分析を行う際は数値だけ見るのではなく、それぞれのビジネスモデルも考慮する必要があります。

固定長期適合率とは?

固定長期適合率とは、純資産と固定負債の合計額に対して、どれくらい固定資産が占めているかを示す指標です。固定資産のうち何割が、返済義務のない純資産と返済期限まで長時間の猶予がある固定負債でまかなわれているか見ることで、企業の財務健全性を測ることができます。


投資回収に時間がかかる固定資産を、返済する必要のない純資産と返済までに猶予がある固定負債でカバーできていることが望ましいため、この数値が低いほど安全性が高いと考えます。

固定長期適合率とは

固定長期適合率の構成要素

固定長期適合率は、純資産固定負債の合計額と固定資産のバランスを見る指標です。

  • 固定資産
  • 固定負債
  • 純資産

ここからは、固定負債の意味について見ていきます。

固定負債

‍固定負債とは、返済期限が1年を超える負債のことをいいます。


固定負債の中身には、次のようなものがあります。

  • 長期借入金
  • 社債

いずれも、1年以上先に支払期限が訪れる点で、共通しています。

固定負債とは

固定長期適合率の計算式

固定長期適合率は、下記の計算式で算出します。

  • 固定資産÷(固定負債+純資産) ×100=固定長期適合率(%)

返済に猶予がある固定負債と返済義務のない純資産の合計額と、現金化に時間がかかる固定資産のバランスを見ることで、企業の安全性を測ることができます。


たとえば、固定資産が2,000万円、固定負債が1,000万円、純資産が1,500万円の企業の場合、固定長期適合率は80%[2,000万円÷(1,000万円+1,500万円)×100]となります。

固定長期適合率の計算式

固定長期適合率の目安は?

それでは、固定長期適合率の目安について解説します。

固定長期適合率の目安

固定長期適合率は、100%以下が望ましい水準となります。

なぜなら、投資回収に時間がかかる固定資産すべてを、長期の資金である純資産と固定負債でまかなえている方が、安全性が高いためです。

固定長期適合率の目安

固定比率と異なり、返済義務のある固定負債を考慮した指標となっています。

しかし、固定負債であれば、返済猶予が1年以上あるため、すぐに返済を求められる可能性は低く、長期間使える資金と捉えてよいでしょう。


したがって、固定比率が100%を超えていたとしても、固定長期適合率が100%以下であれば、安全性は高いと判断できます。

固定長期適合率の目安

固定長期適合率が100%以上は危険である理由

ここで、なぜ固定長期適合率が100%以上ではいけないのかを説明します。


固定長期適合率が100%以上の場合、固定資産の一部を流動負債でまかなっていることになります。

流動負債は、返済期限が1年以内に到来する負債です。


つまり、流動負債を返済するために、資産の一部を売却しなければいけない可能性があります。


設備投資が必要となるビジネスは、固定資産を使って収益を上げていることが多いため、資産の一部を売却してしまうと、安定した経営ができなくなるリスクがあります。


以上の点から、固定長期適合率は100%以下が望ましいです。

ただし、売上の目処や資金調達の目処が立っている場合は例外です。

固定長期適合率が100%以上は危険である理由

固定長期適合率の業種別平均

固定長期適合率は、業種ごとに平均値が異なります。


固定長期適合率の業種別平均全体を見ると、100%を超えている業種はありません。そのため、100%を超えた場合は安全性に問題があると判断することができます。


また、固定比率が100%を超えた場合は、固定長期適合率もあわせて見ることで、より深い示唆が得られます。

固定長期適合率の業種別平均

固定長期適合率を見る際のポイント

固定長期適合率を見る際のポイントは、以下の2点です。

  • 固定長期適合率が機能するケースと機能しないケース
  • 類似指標である流動比率との比較

それぞれ詳しく解説します。

固定長期適合率が機能するケース

固定長期適合率は、固定資産を多く保有する企業に対して、安全性を評価するときに機能します。

固定長期適合率が機能するケース

固定長期適合率が機能しないケース

反対に、固定資産を多く持たない企業に対しては、固定長期適合率が機能しません。なぜなら、固定長期適合率は投資回収に時間がかかる固定資産を、安定した資金でカバーできているかを見る指標だからです。


例えば、流動資産が多い企業や、固定資産を持たない経営をしている企業です。

最近は、化粧品メーカーでも製造を外部に委託する企業が増えています。また、飲食店であればフランチャイズ展開で店舗を持たない企業があります。


このような企業に対しては、固定長期適合率を使って安全性分析をしても、あまり有益な示唆は得られないことが多いです。

固定長期適合率が機能しないケース

類似指標である流動比率との比較

下の図の左側に示した固定長期適合率は、固定資産を固定負債+純資産でまかなえているかを見ることで、経営の安全性を評価しています。


これに対して、右側に示した流動比率は、流動負債を支払うだけの、十分な流動資産を持っているかを見ることで、短期的な支払能力を評価しています

それぞれ使う数値を整理すると、下のようになります。

  • 固定長期適合率:固定資産、流動負債、純資産
  • 流動比率:流動資産、流動負債
固定長期適合率と流動比率の比較

つまり、固定長期適合率が100%以下であれば、必ず流動比率は100%以上となります。

計算で使う数値は異なるものの、本質的には同じことを評価している指標といえます。‍

  • 流動比率:短期の支払能力を知りたい時
  • 固定長期適合率:投資に対する安全性を知りたい時

‍以上のように、本質的には同じことを評価していますが、指標によって得られる示唆が異なります。

分析の目的や企業の形態に合わせて、使い分けましょう。


流動比率の分析方法について、より詳しく知りたい方は下記の記事もおすすめです。

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固定比率・固定長期適合率の調べ方とは?

それでは実際の指標の調べ方です。

有価証券報告書から固定比率と固定長期適合率の取得方法を紹介します。

‍有価証券報告書から必要な情報を取得する

第一部【企業情報】の中にある、第5【経理の状況】を開いてください。

その中にある貸借対照表から、次の項目を取得します。

  • 固定資産
  • 固定負債
  • 純資産
固定比率・固定長期適合率の調べ方

固定比率を計算する

貸借対照表から固定資産と純資産の数値を取得できたら、計算式に当てはめることで、固定比率を計算できます。

固定比率の調べ方

固定長期適合率を計算する

また、固定資産、固定負債、純資産の数値を計算式に当てはめることで、固定長期適合率も計算することができます。

ぜひ気になる企業の固定比率・固定長期適合率を調べてみてください。

固定長期適合率の調べ方

固定比率・固定長期適合率のまとめ

以上、固定比率・固定長期適合率でした。

固定比率・固定長期適合率は、どちらも固定資産を安定した資金でカバーできているかを見る指標です。より厳密に安全性を分析したい場合は、固定長期適合率を用いることがおすすめです。流動比率との使い分けを意識して、ぜひ企業分析に取り入れてみてください!


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この記事を書いた人

著者:大手町のランダムウォーカー

大手町のランダムウォーカー

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トータルSNSフォロワー20万人の会計インフルエンサー。著書の『世界一楽しい決算書の読み方』はシリーズ累計30万部突破。

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