法定開示・適時開示・任意開示とは?企業情報の開示ルールを解説
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会計2024.6.2
企業は、投資家や株主などのステークホルダーに対して、適正な評価を受けるために、投資判断に必要な情報を公開しなければなりません。情報開示の種類は、主に以下の3つがあります。
- 法定開示
- 適時開示
- 任意開示
企業の情報開示には、開示が法律で義務付けられているものや、企業の判断で開示することが可能なものが存在します。
「企業分析をするときはどれを見ればいいの?」「欲しい情報がいつ、どこで見れるのか分からない」と悩んでいる方も多いでしょう。
この記事では、企業の情報開示の種類や開示時期、開示場所について、図解を用いてわかりやすく解説します。
法定開示とは?
法定開示とは、金融商品取引法と会社法により義務付けられている情報開示のことをいいます。法律によって情報開示を強制することによって、投資家への情報提供や会社の不正防止などの役割を果たしています。
法定開示の種類
法定開示は大きく2種類に分けられます。
- 金融商品取引法に基づく開示書類
- 会社法に基づく開示書類
それぞれ詳しく解説していきます。
金融商品取引法に基づく開示書類
金融商品取引法に基づいて開示される書類の代表的なものとして、有価証券報告書や四半期報告書が挙げられます。事業内容や財務状況が記載された有価証券報告書や四半期報告書は、監査法人による監査が義務付けられており、信頼性が最も高いです。特に有価証券報告書は、事業のリスクや設備の状況、コーポレート・ガバナンスの状況など、企業分析に必要なさまざまな情報が掲載されています。
有価証券報告書の読み方については、下記の記事で詳しく解説しています。
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会社法に基づく開示書類
会社法に基づいて開示される書類として代表的なものに、計算書類や株主総会への招集通知などがあります。計算書類とは、会社の経営成績や財産状態を明らかにするための書類です。情報量として有価証券報告書より少ないため、有価証券報告書を開示しない非上場企業の分析を行うために使われます。
法定開示の開示時期
法定開示の開示時期は、各資料によって異なります。
今回は、企業分析でよく使われる有価証券報告書・四半期報告書・計算書類の開示時期について解説します。
有価証券報告書の開示時期
有価証券報告書は、決算の約3か月後に開示されます。投資判断に有用な情報が100~300ページにわたって記載されているため、開示される時期は他の開示資料と比べて遅くなります。
四半期報告書の開示時期
3か月ごとの財務状況を報告する四半期報告書は、各四半期末の約45日に開示されます。主に、年度途中の進捗状況を網羅的に知りたい場合に使われます。
計算書類の開示時期
計算書類は、1年に1回、定時株主総会の2週間前までに開示されます。
法定開示の開示場所
法定開示は、EDINETを通じて行います。EDINET(Electronic Disclosure for Investors' NETwork)とは、金融庁が運営する金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システムのことをいいます。
EDINETでは、有価証券報告書や半期報告書、四半期報告書、大量保有報告書、臨時報告書、株主総会への招集通知などの法定開示資料が閲覧できます。上記の法定開示を用いて企業分析を行いたい方は、EDINETで見たい資料を探しましょう。
適時開示とは?
適時開示とは、証券取引所により義務付けられている情報開示のことをいいます。上場企業の場合は、法律に基づく開示だけでなく、証券取引所のルールに基づく開示にも従わなければなりません。
適時開示の種類
適時開示の代表的な資料として、主に決算短信、適時開示資料が挙げられます。
- 決算短信
- 適時開示資料
決算短信
決算短信とは、証券取引所の適時開示ルールに則り作成し、証券取引所に提出する企業の財務状況をまとめた資料です。主に、投資家や株主に向けて最新決算の状況を伝える目的で作成されます。
決算短信は2種類あり、事業年度終了後に発表される1年分の決算内容をまとめた資料を通期決算短信といい、四半期ごとの決算内容をまとめた資料を四半期決算短信といいます。
決算短信の読み方について知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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適時開示資料
適時開示資料とは、自己株式の取得状況や業績予想の修正など、重要な企業情報が記載された資料のことをいいます。適時開示資料に記載される情報は株価に影響を与えることが多いため、企業分析をする際は必ず確認したい資料です。
適時開示の開示時期
適時開示も法定開示同様、それぞれの資料によって開示時期が異なります。
この記事では、先ほど例に挙げた決算短信と適時開示資料を紹介します。
決算短信の開示時期
決算短信は、四半期決算および通期決算の終了後30日~45日に発表されるのが一般的です。有価証券報告書と比べて開示のタイミングは早いですが、監査の対象外であるため正確性はそこまで高くはなく、また情報量も10~20ページ程度で簡潔にまとめられています。そのため、最新情報を素早く入手したい場合に決算短信が使われます。
適時開示資料の開示時期
適時開示資料の開示時期は、明確にこの時期と決まっているわけではありません。しかし、業績予想の修正など株価に影響を与える事実が決定した場合は、速やかに開示しなければならないというルールがあります。
適時開示の開示場所
適時開示は、TDnetを通じて行います。TDnetとは、「Timely Disclosure network」の略称で、東京証券取引所が運営する適時開示情報伝達システムのことをいいます。
決算短信や適時開示資料、コーポレート・ガバナンス資料などの適時開示が閲覧できます。企業の情報をいち早く入手したい場合は、TDnetから調べたい企業の適時開示を探しましょう。
任意開示とは?
任意開示とは、企業の判断で開示する投資家向けの情報開示です。法定開示・適時開示とは異なり、強制ではありません。
任意開示の種類
任意開示は、大きく分けて2種類あります。
- IR
- PR
順に解説します。
IR
IR(Investor Relations)とは、任意で開示する投資判断に有用な企業情報のことをいいます。具体的には、決算説明会資料やアニュアルレポート、統合報告書、CSR報告書、株主通信、ファクトブックなどがあります。
- 決算説明会資料
- アニュアルレポート
- 統合報告書
- CSR報告書
- 株主通信
- ファクトブック
それぞれ簡単に紹介します。
決算説明会資料
決算説明会資料とは、企業の決算状況や経営戦略、有価証券報告書だけでは伝えきれないデータなどをわかりやすくまとめたものです。企業ごとに開示内容やデザインが異なる特徴があります。
アニュアルレポート
アニュアルレポートとは、事業年度終了後に作成する企業の活動を包括的にまとめた年次報告書です。決算内容だけでなく、社長からのメッセージや株主の構成などがまとめられています。
統合報告書
統合報告書とは、財務情報だけでなく非財務情報もまとめた年次報告書です。企業の持続可能性や企業が創造する価値を機関投資家に対して伝える目的で作成されます。
CSR報告書
CSR報告書とは、企業が社会的責任をどのように果たしたのかをまとめた年次報告書です。現在ではESG投資が注目されており、投資家に対して地域社会への貢献や環境対策についてを伝える手段として活用されています。
株主通信
株主通信とは、ある一定期間の会社の事業状況などを記載した報告書です。経営戦略や業績の進捗などをアピールするために株主に送付されます。
ファクトブック
ファクトブックとは、財務状況や市場における自社のポジショニングなどをまとめた冊子のことをいいます。主に、メディアでのアピール等の広報活動で活用されています。
PR
PRとは、任意で開示するステークホルダーに有用な企業情報で、文字通り広報のことを指します。内容は主に、新商品や新サービスのリリースなど、ステークホルダーに対してアピールしたい情報がメインです。
任意開示の開示時期
任意開示は、企業の任意の判断で開示されるため、基本的に明確な時期は決まっていません。ただし、IRに関しては、有価証券報告書や決算短信と同じタイミングで開示されることがほとんどです。
任意開示の開示場所
任意開示の開示場所は、一般的に企業のIRページに開示されます。企業ごとに形式が異なりますが、基本的には「IRライブラリ」と書かれたページにまとめられています。ただし、任意開示はあくまで企業の任意の判断で開示されるものであるため、開示していない企業もあります。
まとめ
今回は企業情報の開示ルールについて解説してきました。
企業の情報開示には法定開示・適時開示・任意開示の3つがあります。それぞれ資料の特徴や開示時期、開示場所が異なるため、企業分析を行う際は用途に応じて使い分けましょう!
最後まで読んでいただきありがとうございました。