【図解】コストリーダーシップ戦略とは?企業事例を用いて解説
2024.8.11
コストリーダーシップ戦略とは?
コストリーダーシップ戦略とは、業界内で最も低いコスト構造を実現することで競争優位を獲得し、市場シェアを拡大する戦略です。低いコストで経営を回すことが可能なため、競合他社よりも安い価格帯で商品・サービスを提供しても、収益を確保できる特徴があります。
簡単に言えば、「一番安く作って、一番安く売る」という戦略です。
例えば、ファーストフード業界のマクドナルドは、大量生産と標準化されたプロセスにより、低コストで商品を提供し、コストリーダーシップ戦略を実践しています。
この記事では、コストリーダーシップ戦略のメリットやリスク、企業事例などについて図解を用いてわかりやすく解説します。ぜひ最後まで読んでいただけますと幸いです。
全体の中での位置づけ
コストリーダーシップ戦略は、ハーバード大学教授のマイケル・ポーター氏が提唱した3つの経営戦略のうちの1つです。残り2つは、「差別化戦略」と「集中戦略」と呼ばれ、企業が競争に打ち勝って利益を上げるための戦略はこの3つしかないと主張しました。
- コストリーダーシップ戦略
- 差別化戦略
- 集中戦略
上記3つの戦略はどのように違うのかについて解説します。
差別化戦略
差別化戦略とは、競合にはない付加価値をつけて商品・サービスを提供することで、他社との差別化を図る戦略です。
低いコスト構造を実現することで競争優位を獲得するコストリーダーシップ戦略とは真逆の戦略とも言えます。
例えば、スターバックスは単にコーヒーを売るのではなく、「サードプレイス(家庭と職場に次ぐ第三の居場所)」という概念を打ち出し、くつろぎの空間を提供することで差別化を図りました。
差別化戦略についてさらに詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。
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集中戦略
集中戦略とは、ニッチな市場に絞って経営資源を集中し、競争優位性を確立する戦略です。コストリーダーシップ戦略と差別化戦略では業界全体をターゲットとするのに対して、集中戦略は特定の業界に絞るという違いがあります。
例えば、ケンタッキー・フライド・チキンは、自社のマーケットを「フライドチキン」に絞って経営を行うことで、競合がいない市場で競争優位性を確立しています。
集中戦略について、さらに詳しく知りたい方は下記の記事がお勧めです。
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コストリーダーシップ戦略と安売りとの違い
コストリーダーシップ戦略と安売りは似ていますが、意味は全く異なります。
新卒くん
同じものだと思ってたんですけど、どう違うのですか?
安売りとは、利益度外視で販売価格を下げるセールを行って、一時的な集客を行うことをいいます。バーゲンセールや閉店セールなどがこれに当てはまります。
一方、コストリーダーシップ戦略は、コストを抑える仕組みを構築したうえで販売価格を下げる戦略です。十分な利益が担保されているという点で、単なる安売りとは大きく異なります。
コストリーダーシップ戦略を実行するための条件とは?
コストリーダーシップ戦略を実行するための条件は主に4つあります。
- 規模の経済の実現
- 経験曲線効果の活用
- 仕入価格の削減
- オペレーションコストの削減
順に解説していきます。
規模の経済の実現
規模の経済とは、事業規模の拡大に伴って商品・サービスの1単位あたりのコストが低下するという経済性原理のことをいいます。
生産規模を拡大し生産量を増やすことによって、規模の経済を実現することができ、コストリーダーシップ戦略の実行につなげることができます。
経験曲線効果の活用
経験曲線効果とは、経験値が積み上げられることで作業効率が向上し、1単位あたりのコストが低下することをいいます。
精算や業務の経験を積むことで、経験曲線効果を活用し、コスト削減を行うことが可能になります。
仕入価格の削減
ビジネスの世界では、商品を多く仕入れる力があるほど仕入先に対しての交渉力が強くなります。仕入先から商品の大量仕入れを行うことで、1単位当たりの仕入価格を下げることができ、コスト削減を実現しています。ビジネス用語では、これを「ボリュームディスカウント」などと呼びます。
オペレーションコストの削減
生産プロセスを効率化したり、商品・サービスを標準化したりすることで、生産性が向上しオペレーションコストを削減することができます。
コストリーダーシップ戦略のメリットとリスク
コストリーダーシップ戦略には、メリットだけでなくリスクも存在します。
ここからは、コストリーダーシップ戦略を実行するメリットとリスクについて見ていきます。
コストリーダーシップ戦略のメリット
コストリーダーシップ戦略のメリットは、主に2つあります。
- 集客効果が狙える
- 利益率を上げることができる
集客効果が狙える
低いコスト構造を実現することで、競合他社よりも安い価格帯で商品・サービスを提供することが可能です。顧客にとって「商品が安い」というのは非常に魅力的に映るため、集客効果を狙うことができます。
また、低価格での商品販売は競合他社の顧客も奪うことができるため、コストリーダーシップ戦略において最大のメリットといえます。
利益率を上げることができる
コストリーダーシップ戦略は、必ずしもコストの優位性を活かして、低価格で商品を販売するだけではありません。コストを抑えたうえで商品・サービスの価格をそのままにすることで、利益率を上げることができます。低コストで経営を回せているからこそ、価格を自由に決めることができるのもコストリーダーシップ戦略のメリットです。
コストリーダーシップ戦略のリスク
コストリーダーシップ戦略のリスクは、主に3つあります。
- 価格競争の激化
- 初期投資に大きな負担
- 品質低下のリスク
価格競争の激化
競合他社もコストリーダーシップ戦略を取り、販売価格を下げてきた場合、価格競争が激化するリスクがあります。今よりも値段を下げざるを得ない状況に陥るため、利益率が悪化してしまい、値上げもできないというケースが考えられます。
初期投資に大きな負担
コストリーダーシップ戦略を実行するためには、最新の生産設備への投資や効率化のためのシステム導入など、初期投資に大きな負担がかかります。予算管理や投資回収の見込みをしっかり行わないと、赤字になってしまうリスクもあるため、コストリーダーシップ戦略を実行する際は注意する必要があります。
品質低下のリスク
また、コスト削減に注力するあまり、商品・サービスの品質が低下してしまう危険性があります。顧客から「安かろう悪かろう」と思われ、企業のイメージ低下にもつながるため、利益だけを求めないようにする必要があります。
コストリーダーシップ戦略の企業事例を紹介
最後に、コストリーダーシップ戦略を実行することで競争優位性を確立させた企業の事例を紹介します。
- サイゼリヤ
- ユニクロ
サイゼリヤ
サイゼリヤは、イタリアンファミリーレストランを運営する企業です。低価格で高品質なイタリアン料理を提供できている理由には、徹底した垂直統合にあります。
サイゼリヤは、自社農場で野菜を生産、ワインや生ハムなどは問屋を挟まず直輸入、ハンバーグはオーストラリアの工場で生産しています。中間マージンを取られることなく安く仕入れることができるため、良いものを低価格で提供することが実現できます。
また、サイゼリヤは安さを売りにしているため、CMなどを出さなくても集客をすることができます。そのため、広告宣伝費が一切かからずコスト削減につなげています。
ユニクロ
ユニクロは、衣料品の製造小売を展開するアパレル企業です。高品質な衣服を低価格で販売できる背景には、SPAモデルにあります。
SPAモデルとは、製造、物流、販売までを自社ですべて行うビジネスモデルです。ユニクロは、このSPAモデルを採用しているため、中間マージンが乗らず低価格で衣服を提供することができます。
また、ユニクロは流行に左右されない標準化された衣服を取り扱っているため、商品を大量生産をすることができます。仕入先からボリュームディスカウントを受けることによって、仕入価格を削減していることも、低価格の実現につなげているのです。
まとめ
最後に、まとめです。
今回は、コストリーダーシップ戦略について解説してきました。
コストリーダーシップ戦略とは、業界内で最も低いコスト構造を実現することで競争優位を獲得し、市場シェアを拡大する戦略です。競合他社よりも安い価格帯で商品・サービスを提供することができるため、集客効果を狙うことができます。
本記事では、コストリーダーシップ戦略の企業事例としてサイゼリヤとユニクロを紹介しましたが、他にもたくさんあります。身近な企業の決算書を読み、ぜひコストリーダーシップ戦略を取っている企業を探してみてください。