家事代行サービスの儲けの仕組みは?ビジネスを決算書から読み取る
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企業分析2024.4.29
企業のビジネスモデルと財務数値を結びつける会計クイズ。
1日1問挑戦して、ビジネス知識を身に付けましょう。
今回は、地域特化型サービスを展開する2社の比較問題です。
この記事では、地域特化型サービスがどのように収益を生み出すのか事業を見るうえで何が重要になるかを、数字を使って解説します。
会計クイズ:登場企業紹介
最初に今回の登場企業の紹介です。
・CaSy(家事代行サービス)
・ジモティー(地元の掲示板サイト)
この2社は、地域特化型サービスを展開する企業です。
同じ地域特化型サービスを展開していますが、それぞれのビジネスモデルには違いがあります。
CaSy:事業内容と特徴
CaSyは家事代行サービスのマッチングプラットフォームを運営する企業です。
利用者から料金を受け取り、キャストへ業務委託料を支払う商流となっています。
ジモティー:事業内容と特徴
ジモティーは、モノやサービスの取引情報を無料で掲載できる、いわゆる「地元の掲示板メディア」を運営している企業です。
メインの売上高は掲示板に掲載する広告からの収入です。
会計クイズ:問題
以上を踏まえてクイズです。
家事代行サービスのマッチングプラットフォームを運営するCaSyの損益計算書はどちらでしょう?
両者のビジネスモデルがどのようなコスト構造になるのかを予想して考えてみてください。
タップで回答を見ることができます
選択肢①
選択肢②
損益計算書について詳しく知りたい方は、下記の記事もおすすめです。
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会計クイズ:正解の発表
正解は選択肢②がCaSyの損益計算書でした。
お付き合い頂き、ありがとうございました。
CaSyとジモティーのビジネスモデルの比較
それではここから解説です。
この記事では、上場したばかりの家事代行サービスを運営するCaSyと、地元の掲示板メディアを運営するジモティーを比較し、地域特化型サービスの儲けの仕組みを徹底解説します。
CaSyのビジネスモデル
まずは、CaSyのビジネスモデルについて解説します。
CaSyは家事代行サービスのマッチングプラットフォームを運営している企業です。
利用者から料金を受け取り、キャストへ業務委託料を支払う商流です。
家事代行サービスを行うキャストの雇用形態は、CaSyとの業務委託契約となっています。従って、メルカリのように、プラットフォーム上で個人間で自由に取引を行うというわけではなく、CaSyがしっかりと間に入り家事代行ビジネスを運営しています。
この動きは決算書にも反映されます。CaSyの売上原価の内訳を見ると、業務委託を締結しているキャストへの報酬は業務委託費として計上しています。
CaSyの損益計算書
CaSyの損益計算書から、家事代行ビジネスの収益構造を確認してみます。利用者から受け取るサービス料の総額がCaSyの売上高として計上される一方で、キャストへの報酬が売上原価として計上されています。この売り手と買い手の利ザヤがCaSyの付加価値を意味しており、売上総利益の絶対額がCaSyに取って重要な指標となります。
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CaSyのKPI
それでは、売上総利益をKGI(目標ゴール指標)とした時のCaSyの収益構造をモデル化します。
CaSyの売上総利益は「利用時間」「サービス単価」「報酬単価」によって決まります。
CaSyは他のプラットフォームとは違い、サービス料(サービス単価)と支払い報酬(報酬単価)の2つの単価に特徴があり、2つの単価はCaSyが予め固定で設定しています。
したがって、CaSyの売上総利益を伸ばすためには「利用時間」の増加が鍵となります。
しかし、家事代行サービスはオフラインでのサービス提供のため、メルカリのように全国の顧客がターゲットではなく、対応エリアが限定される特徴があります。
そのため、利用者数を一気に増やすことは現状難しいです。
そこで、利用時間を増加させるためには1ユーザーあたりの利用時間を伸ばす必要があります。
1ユーザーあたりの利用時間を上げるためのサービスとして、CaSyは「定額利用プラン」を提供しています。
サービス単価や報酬単価が固定で利用者数増加が限定的な家事代行サービスにとって、定期契約ユーザー数を伸ばすことが利益成長に最も影響を与えます。
また、利用者の定期サービス需要に対応できるだけのキャスト数も求められます。
そのため、キャストチャーン(解約)も利益成長への影響が大きくなります。
したがって、家事代行プラットフォーム運営するCaSyの主要なKPIは定期UU(ユニークユーザー)とキャストチャーンとなります。
CaSy:今後の成長可能性
最後にCaSyの今後の成長可能性についてをみていきましょう。
定額利用プランはスポットよりも時間単価が低いため、定期契約UUが伸びると売上総利益率は低下する可能性が高くなります。
家事代行利用率は海外と比べると低い一方で、SDGsで挙げられている「女性の社会進出」や「ワークライフバランス」を背景に高い成長が見込まれます。
また、市場の後押しをする可能性の高い共働き世帯数は増加しており、専業主婦世帯を上回っています。このような背景からも、家事代行サービスの需要は今後も増加していく可能性が高いと考えられます。
ジモティーのビジネスモデル
次にジモティーのビジネスモデルについて解説します。
ジモティーはモノやサービスの取引情報を無料で掲載できる地元の掲示板サイトを運営している企業です。
メインの売上高はマーケテイング支援売上や広告配信売上です。
オフライン取引ではマッチング後に別でやり取りすることで手数料を回避できてしまいます。
そのため、オフライン取引に取引手数料は適していません。
したがって、ジモティーはユーザーへの課金ではなくマーケテイング支援や広告配信による売上がメインです。
ジモティーの主要なKPIはマーケテイング支援の課金者数やPV数などです。
ジモティーの損益計算書
メディアを充実させるためには訪問ユーザーを増やす必要があるため、広告宣伝費が成長原資となるビジネスです。
そのため、販管費率が高い傾向にあります。
会計クイズ:まとめ
最後にまとめです。
今回は、地域特化型サービスというテーマで、両者のビジネスモデルを比較しました。
地域特化型サービスと言っても、両者の取引対象や主要なKPIが全く違うことが決算数値を見ることによって読み取ることができます。
以上、今回のクイズの正解は、選択肢②がCaSyでした。
お付き合いいただきありがとうございました。
決算書や企業のビジネスについて少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。
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<この分析記事の出典データ>
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