クレジットカード会社の決算書!アメックスはどっち?
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企業分析2024.4.29
企業のビジネスモデルと財務数値を結びつける会計クイズ。
1日1問挑戦して、ビジネス知識を身に付けましょう。
今回はクレジットカードブランド2社の比較問題です。
この記事では、クレジットカード業界の構造やビジネスモデルについてを数字を使って解説します。
アメックスの財務数値はどっち?
早速ですが、問題です。
世界のクレジットカードブランド2社である、VISAとAmericanExpressのうち、VISAはどちらでしょう?
両者共に2022年度の通期の決算数値を元にしています。
タップで回答を見ることができます
選択肢①
選択肢②
決算書ってそもそもどうやって読むの?という方は、先に下記の記事をご覧ください。
図解でわかりやすく決算書の読み方を解説しています。
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貸借対照表とは?読み方を企業分析のプロがわかりやすく解説
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皆さんはわかりましたか?
ぜひ、友達や同僚にもクイズを出題してみてくださいね。
それでは、ここからは正解発表です。
会計クイズ:正解発表
正解は選択肢①がVISAでした。
お付き合い頂きありがとうございました。
それではこの問題の解説です。
クレジットカード業界のプレイヤー
クレジットカード業界は5つの関係者で構成されています。
- 国際ブランド
- アクワイアラ
- イシュア
- 加盟店
- カード利用者
クレジットカード業界のお金の流れ
国際ブランドは、アクワイアラとイシュアからブランドライセンスフィーネットワーク利用料として約0.05%の手数料を受け取ります。
アクワイアラは加盟店から手数料を約3%程度受け取り、カード発行会社であるイシュアーに加盟店手数料を支払います。
VISAとアメックスの共通点は、両者共に国際ブランドとしてクレジットカードビジネスを展開しています。
しかし、同じようなビジネスを行っているにも関わらず、なぜ決算書の形が異なるのでしょうか?
ここからは、各社のビジネスモデルから解説していきます。
クレジットカードの仕組み
クレジットカードの取引の詳細を知りたい方は、下記の記事もセットでご覧ください。
VISAのビジネスモデル
VISAのビジネスモデルは上記でも解説した通り、国際ブランドとしてライセンスフィーを受け取る手数料ビジネスです。
- 取引金額×約0.05%
- 例(1,000円分、クレジットカード利用すると5円が収益となる)
VISAの収益構造
VISAの収益の内訳をみると様々な項目で構成されていることがわかります。
- Service revenues(ライセンス収入)
- Data processing revenues(データ処理収入)
- International transaction revenues(国際取引収入)
- Other revenues(その他)
- Client incentives(クライアントインセンティブ)
中でも、ライセンスフィーや決済インフラ料でほとんどを占めていることがわかります。
したがって、VISAは国際ブランドとしての手数料ビジネスが、収益のほとんどを占めています。
VISAの収益モデル
VISAの展開ビジネスを簡単にまとめるとアクワイアラとイシュアの両方から手数料を徴収する両取りのビジネスモデルとなります。
VISAの日本での事例
日本ではアクワイアラとイシュアに業務を兼任しているケースが多い傾向にあります。
日本で最も有名なVISAと契約している兼任企業に三井住友カードがあります。
三井住友カードは利用者にカードを発行するイシュアと、カード利用店を開拓するアクワイアラを兼任しているため、カード利用者と加盟店の両方から手数料を得てます。
このように、VISAは多くの加盟店を囲い込み、加盟店にカード発行と加盟店開拓を委託し、世界中にVISAカードの利用者を増やすことで、少ない手数料率でも高収益が成り立つビジネスを展開しています。
American Expressのビジネスモデル
American Expressのビジネスモデルは、国際ブランドとしての機能に加えて、アクワイアラとイシュアーの機能を自社で保有しています。
VISAにはカード発行機能はありませんが、American Expressは自身が、カードを発行し、顧客情報を管理するまで行なっています。
VISAとアメックスのビジネス上の違い
アクワイアラやイシュアの機能を持っているため、会員収入やカード利用者向けのサービスでも収益をあげることができる点でVISAとビジネスモデルが異なります。
アメックスの財務数値
American Expressの貸借対照表を見てみましょう。
カード利用向けサービスやローンの影響が、営業債権や貸付金が多額に計上されています。
銀行機能を有するアメックス
またAmerican Expressは、自社で銀行機能も有しており、銀行の子会社で発生する顧客預金の勘定科目が、貸借対照表の負債サイドに反映されています。
アメックスの経営戦略
それではAmerican Expressのビジネスを整理していきます。
American Expressは、カードブランドのみならず、カード発行会社としての機能を保有しています。
American Expressの決算資料には「カード1枚あたりの収益性が高いため、カード会員への特典に投資をすることができる」と記載されていることからもわかるように、カード発行ビジネスから大きな収益を生み出していることが読み取れます。
アメックスのカード利用者
American Expressの発行しているクレジットカードの利用者データを確認してみましょう。
クレジットカード利用者は、1人あたり年間約2万ドルを利用していることがわかります。
また、American Expressは、発行済みカード1枚あたりから、約82ドルの収益をあげていることも読み取れます。
クレジットカードは作ったはいいものの、ほとんど使われない休眠カードも多い中、カード1枚からこれだけの収益を上げているAmerican Expressのカードビジネスは高収益と見ることができます。
アメックスのコスト構造
American Expressのコスト構造を見てみましょう。
カード発行会社としての機能を有するため、カード会員向けのサービスや特典のコストが費用に計上されていることがわかります。
American Expressは年会費を支払う会員制のカードを発行しているため、会員費の見返りとして会員特典を豊富に用意しています。会員獲得のための費用が計上される点でもVISAとはビジネスモデルが異なることが読み取れます。
VISAとアメックスの違い
両者のビジネスの違いについて大きく異なることがわかりました。
VISAは加盟店を多く囲い込み、VISAカードの利用者を増やすことで少ない手数料率でも高収益を維持することが可能です。
一方のAmerican Expressは、取引総額や利用者数がVISA程多くなくとも、1人あたりの会員の利用額と手数料率が高いため、収益性の高いビジネスを展開することが可能となっています。
利用者データや決済金額を見てもわかるとおり、1位のVISAと3位のAmerican Expressにはかなりの差が存在します。
両者のビジネスモデルの違い
VISAとAmerican Expressは、国際ブランドという点では同じですが、展開ビジネスは大きく異なります。
VISAが広く利用者を増やし収益性を高めるビジネスに対し、American Expressは1人あたりの収益性を高めるビジネス展開しています。
その結果、両者のビジネスが反映される貸借対照表も大きく形が異なっています。
会計クイズ:まとめ
以上、今回の問題の解答解説でした。
財務数値とビジネスモデルをセットで追っていくと、非常に有用な示唆を得られることが少なくありません。
1人でも多くの人に決算書を読む面白さが伝わりますと幸いです。
決算書の読み方を基礎からしっかり学びたい方は、ぜひ学習アプリ「Funda簿記」をご覧ください。
アプリ内で決算書の構成や作り方を学ぶことができます。
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以上、今回はコスト貸借対照表のケーススタディでした。
ここまでお付き合い頂きありがとうございます。
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