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旅行比較サイトと旅行代理店のビジネスモデルを徹底解説!

2024.4.29

旅行比較サイトと旅行代理店のビジネスモデルを徹底解説!

企業のビジネスモデルと数値を結び付ける「会計クイズ」。

今回は旅行業界の儲けの仕組みを図解で解説します。

旅行比較サイトのオープンドアと旅行代理店の近畿日本ツーリストの2社を比較しながら、クイズを通じて、分析力やビジネスリテラシーを身に付けましょう!

会計クイズ:登場企業紹介

最初に今回の登場企業の紹介です。

  • オープンドア(トラベルコ)
  • KNT-CTホールディングス

この2社は、旅行業界でビジネスを展開する企業です。

同じ旅行業ですが、それぞれサービス内容に違いがあります。


旅行業界の商流

ホテル・航空券の比較サイトや旅行代理店が、商流のどこに当てはまるか確認しましょう。

旅行代理店(旅行会社)は、航空会社から仕入れた航空券等を旅行者にそのまま販売したり、パッケージツアーを企画して販売したりします。一方で比較サイトは、旅行者に対しては情報を提供するのみで、旅行会社からサイト経由で販売した旅行商品の一部手数料を受け取ります。


会計クイズ:問題

旅行比較サイト「トラベルコ」を運営するオープンドア、旅行代理店を運営するKNT-CTホールディングス、2社の損益計算書のうち、オープンドアの損益計算書はどちらかを予想してみてください。

タップで回答を見ることができます

1

選択肢①

2

選択肢②

損益計算書の読み方を1からしっかり学びたい方には、下記の記事もおすすめです。

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会計クイズ:正解

正解は選択肢②がオープンドアの損益計算書でした。

今回も沢山の方にお付き合い頂きました。ありがとうございました。

それでは、解説です。


オープンドア:「トラベルコ」のビジネスモデル

図解で解説:旅行比較サイトのビジネスモデル

オープンドアの運営する旅行比較サイト「トラベルコ」の商流を解説します。

旅行比較サイトはユーザーからすると無料で利用できるため、どこで収益をあげているかがわかりずらくなっていすが、旅行会社の商品情報をユーザー(旅行者)に提供し、旅行会社から手数料を受け取るビジネスモデルです。


旅行比較サイトのマネタイズパターン

「トラベルコ」の収益のパターンは、①従量課金収入、②固定課金収入、③広告収入の3つがあります。

そのうち、売上の大部分を「従量課金収入」が占めています。

従量課金収入とは、トラベルコ経由で旅行商品を購入した時に発生する成果に応じた手数料のことです。


旅行比較サイトの決算書:オープンドア

まずはコロナ影響前の、平常時のオープンドアの決算書を見てみましょう。

売上原価は小さく、販管費が大きくなっています。

旅行比較サイトは、旅行会社に顧客を送客した際に手数料を受けとるモデルです。したがって、運営に多額なコストは発生せず、売上原価の多くはサイト運営費のみとなっています。

一方で、サイトに顧客を集めるための広告宣伝に積極的であるため、販管費の割合は大きい特徴があります。


KNT-CTホールディングス:旅行代理店のビジネスモデル

図解で解説:旅行代理店のビジネスモデル

旅行代理店ビジネスは、サプライヤー(ホテル、航空)から仕入れたホテル予約券や航空券等を顧客に販売するビジネスモデルです。

比較サイトとは異なり、ホテルの部屋や航空券を実際に仕入れて販売しています。従って在庫を持つビジネスです。


旅行代理店の決算書:KNT-CTホールディングス

KNT-CTホールディングスのコロナ前の平常時の決算書を見てみましょう。

オープンドアとは反対に、売上原価が大きい特徴が読み取れます。理由は、実際に商品を外部から仕入れているため、売上原価に旅行券等(航空券など)が仕入代が含まれているためです。


旅行業界の決算書の読み方:損益計算書

それでは、ここからはコロナ禍で旅行ビジネスがどのような影響を受けたのかを解説していきます。

旅行比較サイトと旅行代理店の違い

これまでの解説から、旅行比較サイトと旅行代理店では、ビジネスモデルに違いがあることがわかります。

旅行比較サイトを運営するオープンドアは、主にサイト運営費と、集客に必要な広告宣伝費で費用が構成されています。

一方で、旅行代理店を運営するKNT-CTホールディングスは、旅行者にホテルや航空券を仕入販売するビジネスであるため、仕入れに関する費用が多くを占めています。

つまり、旅行比較サイトはサイト運営費や広告宣伝費といった固定費が中心に発生する一方、旅行代理店は売上に応じて変動的に発生する変動費が中心となっています。


コロナ禍の旅行ビジネスの決算書の読み方

コロナ禍で旅行業界は大きな打撃を受け、両者共に売上が大きく減少してしまいました。

この固定費中心のビジネスと変動費中心のビジネスの違いは、売上が変動した際に決算書の様々な箇所に影響を与えます。

両者の売上の変動を確認すると、両者共に売上が前年度から77%減少します。

次に、それぞれの利益への影響を見てみます。

コロナ前の平常時には高い収益性を生み出していた旅行比較サイト(オープンドア)のほうが、営業損失の割合が大きくなっていることがわかります。

売上高の減少率が同じ中で、旅行比較サイトのオープンドアの方が、より損失が拡大しているように思えます。

この理由は、旅行比較サイトが固定費中心のビジネスという特徴があるからです。

固定費とは、操業度や販売量に関係無く一定額発生する費用です。

固定費中心のビジネスの場合、売上が大きく減少してしまうと、固定費を回収することができずに、結果として大きな損失が発生してしまいます。

一方で、KNT-CTホールディングスは、仕入費用という販売量に連動して発生する変動費がメインのビジネスです。そのため、売上高の減少に連動して費用も減少します。その結果、オープンドアと比べると、損失は限定的となりました。


旅行業界の決算書の読み方:キャッシュ・フロー計算書

以上、コスト構造の違いによるコロナの影響度の違いの解説でした。

ここまでの内容を踏まえると旅行比較サイトを運営するオープンドアの方が、コロナの影響をより大きく受けているように思えます。

しかし、現金の動きを確認すると、また違う見方をすることができます。

最後に現金の動きを表す両者の営業活動によあるキャッシュ・フローを比較してみましょう。

実は、現金ベースでみてみると、より多くのお金が外に出てしまっているのは、旅行代理店を運営するKNT-CTホールディングスです。


旅行代理店のビジネスモデルの弱点

なぜ、損失が小さいKNT-CTホールディングスの方が、現金をより流出させているのでしょうか?

その答えは、旅行代理店が前受金ビジネスであることにあります。

前受金ビジネスとは、旅行に実際に行く前に旅行代金をあらかじめ回収するモデルのことで、通常時は現金を早期に獲得できるという大きなメリットがあります。

しかし、キャンセルが発生した際には、顧客に返金する必要があります。

今回、料金をすでに支払っていた顧客が、コロナの影響でキャンセルするということが相次いだため、多くの現金が一気に流出してしまいました。

これが、現金が多額に流出しまっている理由です。


会計クイズ:解説のまとめ

今回は、旅行業界に関連する比較サイトと旅行代理店のビジネスモデルや見るべきポイントを解説しました。

決算数値を見ることで、身近に使用している店舗やサービスを読み取ることができます。

以上、今回のクイズの正解は、選択肢②がオープンドアでした。

クイズに正解した方はぜひTwitterやInstagramで教えて下さい。

大手町のランダムウォーカー」のアカウントをタグ付けしてくだされば必ず拝見しに行きます。

以上、お付き合いいただきありがとうございました。

決算書や企業のビジネスについて少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。

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<この分析記事の出典>

近畿日本ツーリスト IRページ

オープンドア IRページ

この記事を書いた人

著者:大手町のランダムウォーカー

大手町のランダムウォーカー

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トータルSNSフォロワー20万人の会計インフルエンサー。著書の『世界一楽しい決算書の読み方』はシリーズ累計30万部突破。

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