エンタメ業界の儲けの仕組み!コロナ影響から読み取る企業課題
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企業分析2024.4.29
会計クイズとは、企業のビジネスモデルと財務数値を結びつけるトレーニングができるコンテンツです。
今回はエンタメ業界に所属する、「東宝」「ラウンドワン」「第一興商」の3社の比較問題です。
クイズを通じて、分析力やビジネスリテラシーを身に付けましょう!
目次
エンタメ業界の会社
まずは、エンタメ業界とはどのような業界なのかを解説するとともに、今回のテーマ企業である3社のビジネスの紹介をします。
エンタメ業界とは
エンタメ業界とは、作品を通じて人を楽しませることを目的とする業界の総称です。
ここでいう作品には出版、音楽、映像、演芸、スポーツ、演劇、遊園地、ギャンブル等、多岐にわたります。時代のニーズと共に、作品の形態や、儲けの仕組みも変化していくのが特徴的な業界です。
今回は、エンタメ業界の中でも、映画(東宝)、スポーツ(ラウンドワン)、音楽(第一興商)を中心に扱う3社を事例に取り上げ、それぞれがどのようなビジネスを営み利益を生み出しているのかを解説します。
エンタメ業界の会社:東宝
東宝は、映画・演劇の製作配給・興行や不動産業を展開している会社です。
コロナ前の2019年度の売上の内訳を見ると、映画事業が大半を占めていることが読み取れます。
また、映画事業の次に売上比率の大きい不動産事業も東宝を支える柱の一つです。
エンタメ業界の会社:ラウンドワン
ラウンドワンは、ボウリング、アミューズメント、スポッチャを中心とした屋内型複合レジャー施設を国内外で運営している会社です。
複合レジャー施設に関する事業を国内外で展開していますが、売上の大部分は日本国内での売上となっています。
エンタメ業界の会社:第一興商
第一興商は、業務用カラオケ機器の販売や、カラオケルーム「BIG ECHO」を運営している会社です。
コロナ前の2019年度の売上の内訳を見ると、業務用カラオケ事業と、カラオケ・飲食店舗事業の比率は半々程度となっています。
エンタメ業界:コロナ影響
各社の直近の売上高の推移を見ると、2020年度はコロナの影響で3社共に売上高が大きく減少していることがわかります。
このことからも、エンタメ業界のビジネスはコロナの影響を大きく受けていることが伺えます。
会計クイズ:エンタメ業界
さて、ここでクイズです。
エンタメ業界に所属する会社、「東宝」、「ラウンドワン」、「第一興商」3社のうち、コロナ禍でも唯一黒字を出している企業はどれでしょう?
各社の事業をイメージしながら、ぜひ考えてみて下さい。
タップで回答を見ることができます
東宝(映画)
ラウンドワン(複合レジャー)
第一興商(カラオケ・ビッグエコー)
損益計算書を1から学びたい方は下記の記事がおすすめです。
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会計クイズ:正解の発表
正解は映画事業を展開している東宝が黒字の企業でした。
ご参加、ありがとうございました。
この3社は娯楽施設を運営しているという共通点がありますが、それぞれビジネスモデルが異なります。
ここからは、ビジネスモデルの違いが、財務数値にどのように影響してくるかを見ていきましょう。
エンタメ業界:東宝の事業内容
まずは、東宝の事業内容を見てきます。
東宝は、映画・演劇の製作配給・興行や不動産業を展開している会社です。
2019年度の売上高の内訳を見ると、映画事業で大半を占めており、残りは不動産事業等で儲けていることが読み取れます。
エンタメ業界:東宝の映画事業
それでは、東宝の基幹事業である映画を見てみましょう。
コロナの影響により、映画事業の売上高は500億円以上減少しており、かなりのダメージを受けていることが読み取れます。
しかし、売上の減少にも関わらず、継続的に黒字は維持することができています。
映画事業の興行収入の推移を見てみると、緊急事態宣言の影響で2020年3月~6月は興行収入がほとんどなくなっていることがわかります。しかし2020年の後半には、大ヒット作となった『「鬼滅の刃」無限列車編』の公開により収入は大きく回復しています。
映画事業は、鬼滅の刃が起死回生の一手となり、何とか黒字を維持することができています。
エンタメ業界:東宝の不動産事業
東宝は鬼滅の刃の大ヒットがなければ赤字になっていたのでしょうか?
その答えは必ずしもYesとは言えません。なぜなら、東宝のもう一つの柱事業である不動産事業は、コロナ禍でも業績は安定して推移しているからです。
賃貸収入や管理収入が中心の不動産事業は、安定収入が見込めるビジネスであるため、外部環境の変化の影響を受けにくいことが数字から読み取れます。
エンタメ業界:東宝の儲けの仕組み
このように、東宝は業績の変動の激しい映画事業と、業績が安定する不動産事業の2つの事業を組み合わせることで、外部環境の変化に影響を受けにくい事業運営を行っていることがわかります。
その結果、コロナ影響を受けつつも、2020年度は全体で黒字を維持することに成功しています。
エンタメ業界:第一興商
次に、第一興商を見ていきます。
第一興商は、業務用カラオケ機器の販売やカラオケルーム「BIG ECHO」を運営している会社です。
まずはコロナ前の2019年度の売上高の内訳を見ると、業務用カラオケ事業で48%、カラオケ・飲食店舗事業で47%を構成していることが読み取れます。
エンタメ業界:第一興商のカラオケ事業
カラオケ・飲食店舗事業はコロナの影響を特に受けた業態の1つです。
第一興商も例外では無く、コロナ禍では売上高は大きく減少し、その結果、多額の赤字を計上しています。
カラオケビジネスのコスト構造を確認してみます。
第一興商の原価明細を確認すると、カラオケ・飲食店舗事業の原価の大半が労務費や賃借料などの固定費が中心ということが読み取れます。
固定費は客数や売上に関係無く、一定額発生する費用です。コロナ禍で客足が減ってしまっても、店舗の賃料や人件費は変わらずに一定額発生することになります。その結果、固定費を回収するだけの売上を生み出すことができずに、コロナ禍で第一興商は大きな赤字を計上していまいました。
エンタメ業界:第一興商の業務用カラオケ事業
一方、第一興商のもう一つの事業である業務用カラオケ事業の業績は、売上高は多少減少したものの、高い営業利益率をキープし続けていることがわかります。
業務用カラオケ事業では、顧客店舗に対してカラオケ機器の販売や賃貸を行っています。そのため、カラオケ店舗の事業よりも収益が安定しやすい傾向があります。
また、カラオケ機器の生産はグループ外企業に委託していることから、自社で工場等も保有しておらず固定費の金額も多額となりません。
その結果、業務用カラオケ事業の収益性はコロナ禍でも安定していることがわかります。
エンタメ業界:第一興商の儲けの仕組み
以上を踏まえて、第一興商の損益計算書を見ると、カラオケ・飲食店舗事業で大きな損失を出してしまったものの、業務用カラオケ事業が安定して利益を稼いでいるため、全体の損失幅は小さく抑えることができました。
エンタメ業界:ラウンドワン
最後に、ラウンドワンを見ていきます。
ラウンドワンは、ボウリング・アミューズメント・スポッチャを中心とした屋内型複合レジャー施設を国内外で運営している会社です。
エンタメ業界:ラウンドワンのレジャー事業
コロナ禍での業績を確認してみると、客足が遠のき売上高が大きく減少し、また大幅な赤字も計上していることがわかります。
ラウンドワンのコスト構造を確認すると、第一興商のカラオケ店事業と同様に、原価の大半が人件費や賃借料などの固定費が中心となっています。
東宝や第一興商と異なり、ラウンドワンは複合レジャー施設事業を中心に運営しているため、不動産やカラオケ機器の賃貸ビジネスのような安定収入を生み出す事業は行っていません。従って、複合レジャー施設事業の業績が傾いてしまうと、損益計算書にその影響がそのまま反映してしまいます。
エンタメ業界:まとめ
今回は娯楽施設を運営している3社のビジネスモデルを解説しました。
決算数値を見ることで、身近に使用しているサービスの実態を読み取ることができます。
以上、コロナ禍でも黒字を維持し続けているのは、映画事業を展開する東宝でした。
ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
ぜひ、友達や同僚、先輩にも出題してみてくださいね。
以上、お付き合いいただきありがとうございました。
決算書や企業のビジネスについて少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。
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<この分析記事の出典データ>
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