STP分析とは?勝てる販売戦略の立案に必須な分析手法を解説
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企業分析2024.4.29
マーケティングでは、基本的に「あらゆる顧客を狙った商品は、誰からも必要とされない」ということを忘れてはいけません。
現代は世界中に商品があふれています。また個人のニーズも多様です。そのなかで消費者に自社の商品を手にとってもらうには、「これはあなた向けですよ」というメッセージが伝わる必要があります。
つまりビジネスを展開する際は、どの市場(顧客)を狙い、どのようなポジションでアピールしていくかを明確にすることが重要です。
それを効率的に行えるフレームワークがSTP分析です。
STP分析とは
STP分析とは、マーケティング戦略立案で使うフレームワークの一つです。
Segmentation(市場の細分化)、Targeting(標的セグメントを選ぶ)、Positioning(他社との違いを認識してもらう)の3つの英単語の頭文字をとって名付けられた分析法です。
STP分析のメリット
STP分析を行うメリットは主に2つあります。
(1)経営資源を最大限に活かせる
商品を作り届けるには、資金、人材などの多くの経営資源が必要になります。
しかし、自社が持てる資源は限られています。
STP分析をすることで、限られた資源を最大限に活かす戦略を立てることができます。
(2)顧客思考のマーケティングが可能になる
STP分析は消費者の属性やニーズを起点に考えます。そのため、その後の値付けや広告などの施策立案も顧客視点で考えられるようになります。
STP分析のやり方
最初にSTPの各用語の意味や考え方を解説します。
次にSTP分析の使い方を紹介します。
STPの各用語の解説
STPのそれぞれの用語と考え方についてS→T→Pの順に解説します。
Segmentation(セグメンテーション):市場の細分化
セグメンテーションとは、市場にいる顧客を、属性やニーズといった切り口で仕分けることです。
セグメンテーションを行う上で用いられる一般的な視点を4つ紹介します。
(1)人口動態変数:デモグラフィック
人口動態変数には以下のようなものがあります。
・年齢
・性別
・職業
・収入
・家族構成
・最終学歴
例えば教育サービスでは、「年齢」や「職業」が使われます。
(2)地理的変数:ジオグラフィック
地理的変数には以下のようなものがあります。
・世界の地域
・国
・気候
・文化
・宗教
・発展度
・県
・市町村
・人口密度
例えば食品スーパーマーケットでは、「市町村」や「人口密度」が使われます。
(3)心理的変数:サイコグラフィック
心理的変数には以下のようなものがあります。
・興味関心
・ライフスタイル
・価値観
・購買動機
・社会階層
例えば保険サービスでは、「ライフスタイル」や「価値観」が使われます。
(4)行動変数:ビヘイビア
行動変数には以下のようなものがあります。
・利用経験
・利用頻度
・購入回数
・購入のプロセス
・購入時のベネフィット
・ロイヤリティの状態
例えばビールメーカーでは「利用頻度」や「購入のプロセス」が使われます。
Targeting(ターゲティング):標的セグメントを選ぶ
ターゲティングとは、仕分けた中からアプローチするセグメントを選ぶことです。
アプローチするセグメントは、自社にとって魅力的なセグメントにするべきです。
ここでは魅力的なセグメントを見つけるための「6R」という考え方を紹介します。
(1)Realistic Scale:マーケット(市場規模)は適切か
そのセグメントが狙うのに適した市場規模かどうかを判断します。
規模は大きいほうが魅力的に見えますが、競合が多くなる可能性が高いです。
また小さすぎても、コストを回収できない可能性があります。
自社の経営資源を踏まえて、定量的に判断しましょう。
(2)Rank:顧客にとって優先度が高いものか
顧客にとっての優先度を判断します。
優先度・関心が高い場合、SNSによって拡散されるように、まわりの顧客に対して一気にアプローチをかけることが可能になります。
(3)Rate of Growth:成長は見込めるか
収益を得続けられるような成長性があるかを判断します。
ターゲティングで選択する市場は、ただ大きければ良いというものだけではありません。
なぜなら、分析時点では十分な大きさがあった市場でも、その後に衰退していくことがあるからです。
競合の売上高や対象となるジャンルの商品、サービスの消費額などを参考に成長性を判断することが重要です。
(4)Rival:競争が激化していないか
セグメントの競合状況や、自社が勝ち残れるかを判断します。
一般に、競合他社が市場で既に大きな地位を占めてしる場合には、魅力は低いでしょう。
それに対してそれほど激しくない市場は、自社をうまく差別化できれば大きな地位を獲得できる可能性があります。
(5)Reach:ユーザーに到達できるのか
セグメントにコミュニケーションを図り、接触できるかを判断します。
たとえ魅力的なセグメントでも、接触できる媒体やツールがなければ価値を届けることが難しいです。
(6)Response:反応を測定できるか
アプローチの効果を測定できるかを判断します。
広告をうった際にその反応や効果が測定できなければ、今後の施策に活かすことができません。
効果が測定できるセグメントであれば、改善策を考えることができます。
以上が6Rです。
6Rを使用する際は、個々に注目しすぎるのではなく、6つを総合的に見ることがポイントなります。
Positioning(ポジショニング):他社との違いを認識してもらう
ポジショニングとは、ターゲットにイメージしてもらう「競合にはないユニークな提供価値」を決めることです。
ポジショニングでは、ポジショニングマップという2軸のマトリクス図を作成する事が多いです。
X軸とY軸それぞれに、顧客のニーズや購買決定要因を設定し、競合企業と自社をマップに載せます。
そこで良いポジションが取れればマップの完成です。
注意しなければならないのが、ポジショニングマップを完成させることが目的ではないということです。
ポジショニングマップを作成する目的は、顧客にとっての魅力の示し方を明確にすることです。
このマップを元に値付けや広告などの施策を打ち出していきます。
STP分析の使い方
ここからは、STP分析の使い方について解説していきます。
①セグメンテーション
上記に挙げた切り口を2~3種類組み合わせて、消費者を仕分けます。
ビジネスモデルや業界の特徴を考慮して、有効な切り口を選ぶことが大切です。
②ターゲティング
仕分けたセグメントから魅力的なセグメントを選びます。
6Rそれぞれを確認して、総合的な魅力度を測りましょう。
③ポジショニング
ポジショニングマップを活用して、競合にはないユニークな提供価値を確定します。
いろいろな項目を軸に当てはめてマップを作り、最も優位なポジションを見つけましょう。
STP分析をする際に意識するポイント
目的を持って分析する
フレームワークは思考・作業を効率化してくれる便利なツールです。しかし、何も考えずに使うと、ただ言葉を埋めて終わりになってしまうため、次のアクションに繋がりません。
それぞれの目的を意識しながらフレームワークを使いましょう。
セグメンテーションの目的は大きく2つあります。
1つ目は、市場にどのような顧客候補がいるかを明らかにすることです
2つ目は、どの企業が自社と競合関係になるかを明らかにすることです。
ターゲティングの目的は、自社が狙うべき最も魅力的なセグメントを選ぶことです。
ポジショニングの目的は、顧客にとっての魅力の示し方を明確にすることです。
戻ることも重要
STP分析は基本的にS→T→Pの順で進めていきます。しかし、妥協しながら進めても効果的な戦略は生み出されません。
例えば、ターゲティングで魅力的なセグメントが見当たらなかった場合は、一旦セグメンテーションに戻るべきです。
そのままポジショニングに進んでも「いまひとつのターゲットに対する魅力の打ち出し方」を考えることになってしまいます。
したがってこの場合は、一旦セグメンテーションに戻って、別の切り口で顧客を仕分けてから、再びターゲティングを行いましょう。
顧客視点で考える
ポジショニングマップを作る際、つい自社に都合の良いものや、最初に思い浮かんだものを軸に設定してしまいます。
それでは、ただきれいなマップが完成するだけです。
自社都合から離れて、「顧客が抱えるニーズ」と「顧客が購入する際の決定要因」を意識しましょう。
STP分析を事例から学んでみよう
ユニクロを事例に考えてみます。
・Segmentation:セグメンテーション
ユニクロが扱っている商品には年齢や性別の特徴が見られません。
したがって、人口動態変数ではなく、心理的変数や行動変数でセグメンテーションしていると考えられます。
・Targeting:ターゲティング
ユニクロはセグメントのなかから、「トレンドよりも機能性」という価値観や「安価に着られる普段着がほしい」というニーズを持つ顧客層をメインターゲットに選んでいます。
・Positioning:ポジショニング
ユニクロは「LifeWear(進化し続ける普段着)」というポジションで商品づくりや広告を打ち出しています。
STP分析のまとめ
マーケティングの一般的な流れとして、戦略を立てたのちに、商品や価格、広告などの細かい施策を考えます。つまり戦略が組織の具体的アクションの土台・指針となります。
その重要な戦略立案において、STP分析は有効なフレームワークです。
注意点を意識しながら活用しましょう。
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