音楽配信と動画配信で収益力が高いのは?決算書の数値から読み解く
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企業分析2024.4.29
この記事では、企業の儲けの仕組みについてを図解を通じてわかりやすく解説します。
今回は、コンテンツ配信がテーマです。
この記事では、音楽配信や動画配信を使ってどのように収益を生み出しているかを、数字を使って解説します。
今回の会計クイズ
会計クイズ:登場企業紹介
最初に今回の登場企業の紹介です。
- Spotify Technology(音楽配信)
- NETFLIX(動画配信)
この2社はコンテンツ配信事業を行っている会社です。
両者ともにコンテンツ配信を提供していますが、それぞれのビジネスモデルには違いがあります。
Spotify Technology:事業内容と特徴
Spotify Technologyは、フリーミアム型の音楽配信サービス「Spotify」を展開している企業です。
フリーミアムとは
フリーミアムとは、「フリー」と「プレミアム」を組み合わせた造語です。
製品やサービスの基本的な機能を無償で提供し、より高度な機能やサービスは有料で提供し収益を得るビジネスモデルです。
NETFLIX:事業内容と特徴
NETFLIXは、サブスク型の動画配信サービス「NETFLIX」を展開している企業です。
両者の売上高の内訳
両者の売上高の内訳を見ると、2社ともメインの収益はサブスクリプション課金収入であることが読み取れます。
会計クイズ:問題
以上を踏まえてクイズです。
無料でも楽しめる音楽配信サービス「Spotify」を運営するSpotify Technologyの損益計算書はどちらでしょう?
両者のビジネスモデルがどのようなコスト構造になるのかを予想して考えてみてください。
※両者ともに2021年度のデータを元にしています
タップで回答を見ることができます
選択肢①
選択肢②
損益計算書の読み方を1からしっかり学びたい方には、下記の記事もおすすめです。
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会計クイズ:正解の発表
正解は選択肢①がSpotify Technologyの決算書でした。
お付き合い頂き、ありがとうございました。
コンテンツビジネス:両者の共通点
それではここから解説です。
まずは両者の共通点についてを解説します。
共通点①:コンテンツ配信ビジネス
2社ともにユーザーへのコンテンツ配信ビジネスを展開しています。
Spotify Technologyは音楽、NETFLIXは動画を配信しています。
共通点②:メイン収益源
2社ともメインの収益源はサブスクリプション課金収入で共通しています。
共通点③:KPI
重要指標である有料会員数はともに2億近くまで成長しています。
コンテンツビジネス:両者の相違点
次に両者の相違点についてを解説します。
相違点①:コンテンツ費用
Spotify TechnologyとNETFLIXの大きな相違点は「コンテンツ費用」です。
Spotify Technologyのコンテンツ費用
Spotify Technologyはロイヤリティとして収益総額の約2/3を権利保有者へ支払う仕組みです。
再生ごとやストリーミングごとの歩合で支払う仕組みではないため、ユーザーの再生回数によってSpotify Technologyの原価が大きくなるわけではありません。
収益をもとに算出されたロイヤリティは、ストリーミングシェアに応じて分配しています。
ストリーミングシェアとは、総ストリーミングに占める各権利者の所有楽曲の割合のことをいいます。
NETFLIXのコンテンツ費用
NETFLIXは取得・制作したコンテンツをまず資産として計上し、視聴可能期間などによって償却した金額を費用として計上する仕組みです。
償却期間は「視聴可能期間」「推定利用期間」「10年」のうち最も短い期間で償却します。
平均して、90%以上のコンテンツが4年以内に償却されます。
両者の費用の特性
つまり、主要な費用である2社の「コンテンツ費用」は、真逆の特性を持っています。
Spotify Technologyのコンテンツ費用は収益に連動して発生する変動費型です。
一方、NETFLIXのコンテンツ費用は収益に関わらず発生する固定費型です。
相違点②:収益性
2つ目の相違点として収益性が挙げられます。
Spotify Technologyの業績推移
Spotify Technologyのコンテンツ費用は収益に連動して発生する変動費型です。
したがって、収益が右肩上がりでも各利益率は低いまま横ばいを推移しています。
NETFLIXの業績推移
一方、NETFLIXのコンテンツ費用は収益に関わらず発生する固定費型です。
そのため、右肩上がりの収益とともに各利益率も右肩上がりで上昇しています。
両者の損益計算書
以上の内容を踏まえて両者の損益計算書を確認します。
Spotify Technologyはコンテンツ費用が変動費型のため、利益率が高くなりにくい特徴があります。
一方、NETFLIXはコンテンツ費用が固定費型のため、利益率が高くなりやすい特徴があります。
相違点③:営業キャッシュフロー
最後に3つ目の相違点として営業キャッシュフローを見ていきましょう。
両者の売上高と営業利益率の推移
売上高・営業利益率ともに右肩上がりで上昇しているNETFLIXと比べて、Spotify Technologyは直近2021年度までは赤字続きでした。
両者の営業活動によるキャッシュフロー
しかし、Spotify Technologyの営業キャッシュフローは常にプラスです。
一方で、NETFLIXは2019年度まで大幅なマイナスが続いていました。
なぜ収益性が低いSpotify Technologyはキャッシュフローではプラスで、収益性が高いNETFLIXはマイナスが続いていたのでしょうか?
NETFLIXの現金の流れ
NETFLIXはビジネスモデル上、コンテンツ取得・制作のために先に現金が出ていき、後にユーザー課金によって現金が入る流れとなっています。
Spotify Technologyの現金の流れ
一方、Spotify Technologyはユーザー課金によって先に現金が入り、後に権利者への分配のために現金が出ていく流れとなっています。
したがって、Spotify Technologyは損益計算書上では収益性が低く見えるものの、営業活動による現金の動きは優れていることが読み取れます。
以上の相違点は両者の貸借対照表からも読み取れます。
Spotify Technologyの貸借対照表
Spotify Technologyは現金が大きくなりやすく、その大半を権利者に対する未払費用が占めています。
NETFLIXの貸借対照表
NETFLIXはビジネスモデル上、現金が小さくなりやすい特徴があります。
そのため、借入金によって外部から調達していることが読み取れます。
会計クイズ:まとめ
最後にまとめです。
今回は、コンテンツ配信ビジネスというテーマで、両者のビジネスモデルを比較しました。
コンテンツ配信ビジネスと言っても、両者の費用構造や利益率、現金の動きなどが全く違うことが決算数値を見ることによって読み取ることができます。
以上、今回のクイズの正解は、選択肢①がSpotify Technologyでした。
お付き合いいただきありがとうございました。
決算書や企業のビジネスについて少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。
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<この分析記事の出典データ>
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