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パチンコ業界の儲けの仕組みは?パチンコ事業のビジネスモデル

2024.10.24

パチンコ業界の儲けの仕組みは?パチンコ事業のビジネスモデル

会計クイズ:公営ギャンブル

この記事では、企業のビジネスモデルと財務数値を結びつける会計クイズを元に、企業がどのように利益を生み出しているかを解説します。

今回扱うのは公営ギャンブルです。

パチンコ業界と競馬業界の比較から、それぞれの業界の特徴や儲けの仕組み、今後の将来性についてを数字を使って読み解いていきます。

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登場企業の紹介

最初に今回の登場企業の紹介です。

  • マルハン
  • 東京都競馬

この2社は公営ギャンブルを展開する企業ですが、それぞれ事業内容が大きく異なります。

2社の特徴


マルハンの事業内容

マルハンは、全国に313店舗のパチンコホールを展開する企業です。パチンコ業界では最大手となります。

マルハンとは

東京都競馬の事業内容

東京都競馬は、大井競馬場や場外発売所施設、在宅投票システムなどを地方公共団体に賃貸している企業です。

また、東京サマーランドの運営やショッピングモールの賃貸なども行っています。

東京都競馬とは


会計クイズ:問題

以上を踏まえてクイズです。

パチンコホールを展開するマルハンの損益計算書はどちらでしょう?

両社のビジネスモデルがどのようなコスト構造になるのかを予想して考えてみてください。

タップで回答を見ることができます

1

選択肢①

2

選択肢②

クイズの前に、損益計算書の読み方について詳しく学びたい方は、下記の記事をご覧ください。

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それでは、正解の発表です。

会計クイズ:正解の発表

正解は、選択肢①がマルハンの損益計算書でした。

みなさん分かりましたか?

会計クイズ:正解発表

それでは、ここから解説に入ります。

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パチンコ業界とは?

まずは、マルハンのビジネスモデルを読み解いていく前に、そもそもパチンコ業界とはどのような市場でどのような特徴があるのかを見ていきましょう。

パチンコ業界の市場規模

パチンコ業界の市場規模は14.6兆円、参加人口は720万人と規模の大きい業界であることが分かります。

しかし、年々市場規模も参加人口も減少傾向にあるというのが現状です。

パチンコ業界の市場規模


パチンコ業界の仕組みとは?

次に、パチンコ業界の仕組みについて説明します。

そもそもパチンコというビジネスがなぜ成り立っているのでしょうか?

違法性の有無やパチンコビジネスが成り立っている仕組みを紐解いていきます。

刑法第185条「賭博罪」

パチンコは一般的にギャンブルと言われているため、懸念される罪状として刑法第185条の賭博罪が考えられます。ここでいう「賭博」とは、①「偶然の勝敗」により、②「財物や財産上の利益」について、③「得喪を争うこと」をいいます。

パチンコというビジネスは、偶然の勝ち負けでお金を失ったり、景品を得たりするため、一見上記の構成要件に当てはまるように見えます。

しかし、パチンコは但し書きにある「一時の娯楽に供する物」に該当するため、賭博罪には当たりません。

刑法第185条「賭博罪」

一時の娯楽に供する物とは

一時の娯楽に供する物とは、その場限りで消費する少額の物を指します。

たとえば、食事代を賭けたじゃんけんやビンゴ大会の賞品などがこれに当てはまります。パチンコもその場限りの勝ち負けであるため、賭博罪には該当しないということになります。

一時の娯楽に供する物

それでも、パチンコで勝つと「現金がもらえる」という点に違法性を感じる人もいるかと思います。

風営法第23条「遊技場営業者の禁止行為」

風営法第23条第1項第1号でも、賞品として「現金」や有価証券を提供することは禁止されています。

風営法第23条「遊技場営業者の禁止行為」

では、なぜ違法ではないのでしょうか?

それは、パチンコが3店方式という仕組みを利用しているためです。

3店方式とは

3店方式の取引の流れは以下の通りです。

  1. パチンコ店が貸し玉料を顧客から受け取り、パチンコ玉を渡します。
  2. 顧客はそのパチンコ玉を元手に遊び、玉を増やします。
  3. 遊び終えたら勝玉を景品に交換します。景品には洗剤やお菓子だけでなく、特殊景品というものに引き換えることができます。
  4. 洗剤などはその場で受け取って終わりですが、特殊景品は景品交換所に行き、現金と交換することができます。
  5. 景品交換所は、持ち込まれた特殊景品を景品卸業者に買い取ってもらいます。
  6. 景品卸業者は、買い取った特殊景品をパチンコ店に買い取ってもらいます。

ここで登場する景品交換所と景品卸業者の経営は、パチンコ店と関係のない業者です。

したがって、パチンコ店は顧客からお金を受け取り、道具を貸して、結果に応じて景品を渡すという一時の娯楽性ゲームを提供しており、景品として現金を直接渡していないため、合法となるわけです。

3店方式とは


マルハンのビジネスモデルとは?

パチンコ業界について理解できたかと思うので、ここからはクイズに登場したマルハンのビジネスモデルを財務数値を使って読み解いていきます。

マルハンとは

売上の仕組み

それでは、早速ですが第2問のクイズです。

パチンコ業界の売上とはどちらを指すでしょうか?

会計クイズ②

タップで回答を見ることができます

1

貸し玉料

2

貸し玉料から景品代を差し引いた金額(粗利)

正解発表

正解は、選択肢①の貸し玉料でした。

パチンコ店の売上は「貸し玉料」を指しています。

会計クイズ②:正解発表


収益構造

パチンコホール事業のコストは、ほとんどが顧客への払い戻し(還元)で構成されています。

パチンコ業界の収益構造


マルハンの損益計算書

以上を踏まえて、マルハンの損益計算書を確認します。

パチンコ事業は顧客への還元率が高く、またパチンコ台やホールの維持コストなどがかかるため、売上原価率が高く利益がほとんど残らない特徴があります。

マルハンの損益計算書


マルハンの貸借対照表

次に、貸借対照表を見ていきます。

パチンコ台の製造メーカーであるSANKYOの貸借対照表と比較すると、固定資産と負債が大きいのが分かります。

パチンコ店は、集客するために駅前の一等地などに土地を保有しています。そのための資金として銀行から借り入れていることが、決算書に分かりやすく表れています。

マルハンの貸借対照表


パチンコ業界の今後の将来性

最後に、パチンコ業界の今後について見ていきます。

パチンコ業界は新型コロナウイルスの影響で市場規模が大きく減少しました。また、パチンコ以外にもNetflixなどのような他の娯楽が広がっていることもあり、今後は厳しい状況が続くと考えられます。

パチンコ業界の今後


東京都競馬のビジネスモデルとは?

次に、東京都競馬のビジネスモデルについて解説します。

東京都競馬は、大井競馬場や場外発売所施設、在宅投票システムなどを地方公共団体に賃貸している企業です。

東京都競馬とは

JRAとの違い

JRA(日本中央競馬会)とは、中央競馬を主催する農林水産省下の特殊法人です。

日本で開催される競馬には「中央競馬」と「地方競馬」の2つがあり、中央競馬はJRAが主催し、地方競馬は地方公共団体が主催しています。

今回扱う東京都競馬は、地方競馬を主催する地方公共団体に対して競馬場や在宅投票システムを賃貸する事業を行っている企業です。

そのため、東京都競馬は競馬場の主催者ではない点に注意しましょう。

JRAとは

売上高が伸びている背景

直近5年間の売上高の推移を見ると、右肩上がりで伸びています。

なぜ競馬業界は売上高が好調なのでしょうか?

東京都競馬の売上高の推移

コロナ禍でのネット投票ブーム

新型コロナウイルスの影響で競馬場への入場ができない時期が続いていました。しかし、競馬場に行かなくても手軽に馬券を購入することができるネット投票がコロナ禍でブームとなりました。

東京都競馬が運営する在宅投票システム(SPAT4)は、利用に応じた歩合制を導入しているため、利用者数が増加するほど売上が増加するビジネスモデルです。

その結果、新型コロナウイルスの影響をあまり受けず、売上高が右肩上がりで伸びたということです。

コロナ禍でのネット投票ブーム

コスト構造

東京都競馬のコスト構造は、SPAT4のキャッシュバック費用や広告宣伝費、競馬場・場外発売所施設の減価償却費、保守費などが中心です。

東京都競馬のコスト構造

東京都競馬の損益計算書

以上を踏まえて、東京都競馬の損益計算書を確認します。

施設の減価償却費や維持費が売上原価に計上されるため、売上原価率は約55%と高くなっています。

一方で、在宅投票システムであるSPAT4が追い風となっていることもあり、営業利益率は約40%と非常に高い収益性であることが読み取れます。

東京都競馬の損益計算書

東京都競馬の貸借対照表

貸借対照表を見ると、競馬場・場外発売所施設を保有しているため、固定資産の比率が高い特徴があります。また、稼いだ利益は純資産として内部留保していることも決算書から読み取ることができます。

東京都競馬の貸借対照表

競馬業界の今後の将来性

最後に、競馬業界の今後について見ていきます。

新型コロナウイルスの影響で入場人数は減少傾向にありますが、収入は増加傾向にあります。今後はネット投票が主流となり、さらに市場規模が拡大していくのではないかと考えられます。

競馬業界の今後


会計クイズ:まとめ

最後にまとめです。

今回は公営ギャンブルというテーマで、2社のビジネスモデルを比較しました。

同じ公営ギャンブルと言っても、業界ごとの特徴やビジネスモデルが全く違うことが決算数値を見ることによって読み取ることができます。

以上、今回のクイズの正解は、選択肢①がマルハンでした。

会計クイズ:正解発表

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

決算書や企業のビジネスについて少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。

決算書の基礎からしっかり学びたい方は、ぜひ学習アプリ「Funda簿記」をご覧ください。

アプリ内で決算書の構成や作り方を学ぶことができます。

<この分析記事の出典データ>

株式会社マルハン IR

東京都競馬株式会社 IR

この記事を書いた人

著者:大手町のランダムウォーカー

大手町のランダムウォーカー

Funda社運営

トータルSNSフォロワー20万人の会計インフルエンサー。著書の『世界一楽しい決算書の読み方』はシリーズ累計30万部突破。

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