クラウドファンディングの儲けの仕組みとは?時系列比較から読み取る
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企業分析2024.4.29
この記事では、企業のビジネスモデルと財務数値を結びつける会計クイズを元に、サービスの儲けの仕組みを解説します。
1日1問挑戦して、ビジネス知識を身に付けましょう。
今回は、クラウドファンディングサイトで有名なマクアケの時系列比較問題です。
この記事では、時系列比較からマクアケの儲けの仕組みや今後の展望についてを解説します。
会計クイズ:登場企業紹介
最初に今回の登場企業の紹介です。
マクアケ:事業内容と特徴
マクアケは、プロジェクトの実行者とサポーターをマッチングする購入型クラウドファンディング「Makuake」を運営している企業です。
プロジェクトに対する購入額の約20%を手数料として受け取るモデルを採用しています。
会計クイズ:問題
以上を踏まえてクイズです。
購入型クラウドファンディング「Makuake」を運営しているマクアケの2022年度(コロナ明け)の損益計算書はどちらでしょう?
タップで回答を見ることができます
選択肢①
選択肢②
損益計算書について詳しく知りたい方は、下記の記事もおすすめです。
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会計クイズ:正解の発表
正解は選択肢②がマクアケの2022年度の損益計算書でした。
お付き合い頂き、ありがとうございました。
ここからはマクアケの決算資料から、事業の内容や儲けの仕組み、今後の展望についてを読み取っていきます。
まずは、クラウドファンディングとはそもそも何かについて解説します。
クラウドファンディングとは?
クラウドファンディングとは、「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語で、インターネット上で不特定多数の人から少額ずつ資金を調達するという意味です。
金融機関からの資金調達と比べ、手軽かつテストマーケティングに使えるというメリットがあります。
クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングの種類は主に4つあります。
- 購入型クラウドファンディング
- 寄付型クラウドファンディング
- 融資型クラウドファンディング
- 株式投資型クラウドファンディング
順に解説していきます。
購入型クラウドファンディング
購入型クラウドファンディングとは、起案者が立ち上げたプロジェクトに対して支援者がお金を支援し、リターンを得るクラウドファンディングです。
購入することで応援の気持ちを示す新しい消費の形です。
代表的なものに今回扱う「Makuake」や「CAMPFIRE」、「READYFOR」などがあります。
寄付型クラウドファンディング
寄付型クラウドファンディングとは、リターンが活動の報告やお礼のメッセージとなるクラウドファンディングです。
代表的なものに「GoodMorning」などがあります。
融資型クラウドファンディング
融資型クラウドファンディングとは、融資を受けたい会社と融資をしたい複数の個人をマッチングする金融型のクラウドファンディングです。
代表的なものに「OwnersBook」や「CAMPFIRE Owners」などがあります。
株式投資型クラウドファンディング
株式投資型クラウドファンディングとは、非上場株式に対して出資を募る方式の金融型クラウドファンディングです。
代表的なものに「FUNDINNO」などがあります。
マクアケ:ビジネスモデル
それでは、ここからマクアケのビジネスモデルについて解説します。
マクアケはプロジェクト実行者と支援者を繋げる購入型クラウドファンディングを運営しており、プロジェクトに対する応援購入額の約20%を手数料として受け取るビジネスモデルを採用しています。
マクアケの提供価値は、「新商品」の売り手と買い手をマッチングする0次流通市場のプラットフォームを作ったことにあります。
新しい商品やサービスをテストマーケティングにするのに最適な場所であるため、事業者にとって魅力的でありコロナ禍で流通総額が拡大しました。
0次流通市場とは
0次流通市場とは、量産前の新商品・新サービスを消費者に先行的に販売する市場のことをいいます。
一方、1次流通市場とは、すでに量産されている商品やサービスを消費者に販売する市場のことを指します。
補足:2次流通市場も存在します。1次流通市場が事業者から消費者に販売する市場で、2次流通市場が1次流通市場で消費者が購入した商品を他の消費者に販売する市場(いわゆる中古市場)のことです。
マクアケ:売上高の内訳
マクアケの売上高は、購入型クラウドファンディング「Makuake」での手数料収入が約8割を占めています。
マクアケ:売上高・営業利益の推移
コロナ禍で売上高・営業利益が伸びていますが、直近では赤字に転落しています。
マクアケ:収益構造
購入型クラウドファンディングの収益分解をすると下図の通りとなります。
「Makuake」事業の売上高は流通総額×テイクレートに分解できます。
テイクレートはサービスの魅力を表しており、容易に引き上げることができません。
したがって、「Makuake」事業で重要なKPIは流通総額となります。
それではここからは、マクアケの主要なKPIの推移から、コロナ禍で伸びた理由とコロナ明けで赤字に転落した理由を読み取っていきます。
マクアケ:流通総額
コロナ禍では消費者のライフサイクルが変化し、新たなニーズが生まれ、新商品の掲載を希望する実行者が増加したと同時に、展示会やオフラインでの店舗などを使用することが困難であったため、オンラインでの新商品デビューの場である「Makuake」が多く利用され流通総額が急上昇しました。
しかし、コロナが落ち着きオフラインでの商流・消費が増加したことや円安・原材料費高騰による悪材料から事業者の新商品開発の動きが鈍化し、直近では流通総額が減少傾向にあります。
マクアケ:サポーターのKPI
次に、マクアケの流通総額を構成するKPIの推移について見ていきます。
まずはサポーター(支援者)のKPIです。
支援者のKPIで重要な決済件数についてですが、オフラインでの消費が増加した影響で前年度と比較すると減少しています。
アクセス数もコロナ禍では増加しましたが、直近では外部環境の影響で減少しています。
会員数は広告費をかけているため増加していますが、コロナ禍と比較すると増加幅は鈍化しています。
支援者のリピート購入率も同様に減少したものの、約8割のリピーターがいるためストック収益は期待できることが分かります。
以上、決算資料からサポーターのKPIは全体的に減少していることが読み取れます。
マクアケ:実行者のKPI
次にプロジェクト実行者のKPIを見ていきます。
外部環境の影響で事業者の新商品開発の動きが鈍化したため、プロジェクト掲載数も同様、直近では減少傾向にあります。
リピート実行者による掲載数は横ばいを推移しており、コロナ禍で獲得した新規顧客がコロナ明けでもリピーターとして継続していることが分かります。
決算資料から、外部環境の影響で全体的にKPIが減少しているものの、リピーターによるストック収益がマクアケの業績を支えていることが読み取れます。
マクアケ:損益計算書
以上を踏まえて、直近の損益計算書を見ていきます。
外部環境の逆風でほとんどの指標が減少し、業績は赤字に転落しました。
しかし、リピーターによるストック収益があるため赤字の幅は抑えることができています。
コスト構造を見ると、多額の広告宣伝費をかけていますが、コロナ禍と比較して新規顧客を囲えていないため、費用に対して売上が上がっていないことが読み取れます。
マクアケ:今後の成長戦略
それでは、マクアケの今後の成長戦略を見ていきます。
広告費をかけてもコロナ禍と同じように新規顧客を囲えないため、リピーターの単価をいかに上げれるかが今後の成長のカギとなります。
従業員数の推移を見ると、キュレーター人材を積極的に採用していることが分かります。
キュレーターとは、主にプロジェクト実行者のサポートを行う職種です。
今後はサポートを手厚くし、リピーター数と単価を上げる戦略を取るのではないかと考えられます。
会計クイズ:まとめ
最後にコロナ禍とコロナ明けの変化ポイントをまとめます。
・コロナ禍
コロナ禍では、消費者のライフサイクルが変化し、新たなニーズが生まれたと同時に、オンラインでの新商品デビューの場である「Makuake」が注目され売上・営業利益ともに増加。
・コロナ明け
コロナが落ち着きオフラインでの商流・消費が増加したことや円安・原材料費高騰による悪材料から事業者の新商品開発の動きが鈍化。
そのため、広告費をかけても新規顧客を囲えない厳しい状況が続き赤字に転落。
以上、今回のクイズの正解は、選択肢②がマクアケの2022年度(コロナ明け)の損益計算書でした。
お付き合いいただきありがとうございました。
決算書や企業のビジネスについて少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。
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