この記事では企業分析を行う際に、役に立つ経営指標の意味と使い方について解説します。
図解を交えながら解説していきますので、ぜひ最後まで読んでいただけますと幸いです。
従業員増加率とは?
従業員増加率とは、従業員数がどの程度増加しているかを示す経営指標です。
一般的に企業が成長する際、現状の従業員だけでは足りなくなり、新しい従業員が必要となります。
そのため、企業の成長性を判断する指標として従業員増加率が有効な場合があります。
当年度従業員数と前年度従業員数を比較して算出
従業員増加率は、以下の計算式で算出します。
(当年度従業員数÷前年度従業員数−1)×100=従業員増加率(%)
従業員増加率の基本的な考え方
従業員増加率は、前期と今期の従業員数を比較して、どれほど増えているかを見る指標です。
企業が従業員を増やすのは、以前に比べて業務が多くなり、今いる従業員のみでは仕事をさばけなくなるであろうタイミングです。
ということは、従業員増加率は企業の売上が伸びる前兆ととらえることができます。
すべての企業で当てはまるわけではないですが、上記の理由から企業の従業員の増加率から企業の将来性を測ることができます。
従業員増加率の使い方とは?
計算式に当てはめて経営指標を算出するだけでは何も意味がないため、必ず算出した指標の数値から意味のある示唆を見つけることが重要です。
従業員増加率は従業員の増減数が元になっているため、従業員数が大きく変動している時により効果を発揮します。
従業員数が大きく変動する場合は、
- 事業の拡大のために大量に新たな従業員を採用している時
- 企業を買収した結果、買収先の企業の従業員数がそのまま増加した時
等があります。
上記のように、どのような要因で従業員数が増減したのかを、知ることが企業への理解を深めます。
事業拡大の場合
事業の拡大によって従業員が増えた場合は
- 企業全体で従業員がどれほど増えたのか
- どの事業の従業員がどれほど増えたのか
を把握する必要があります。
事業ごとの従業員の動きを調べることによって、企業がどの事業に力をいれているのか?など成長分野の事業までわかることがあります。
企業が力をいれている事業が分かれば、その事業がどうなると成長するのかまで具体的に調べることができます。
よって、ニュースやプレスリリースが出た際に、それが企業にとってどれだけプラスになるのかまで把握することができます。
また、急激に従業員数が減っていた場合も
- 事業を縮小するのか
- 配置転換
- 中で何か大量退職などの問題が発生したのか
と想像する切っ掛けになります。
M&A等の場合
企業のM&Aなどにより従業員が増減するケースは、必ず他の指標とセットで見ることが望ましいです。
企業を買収し子会社化した場合、従業員増加率が急激に向上していたとしても、それは買収による一時的なものであるため、その数値のみで判断をするのは非常に難しいです。
また、買収した企業の財務数値と従業員数が合算されるため、買収した企業の規模次第では大きく経営数値が変化してしまうことがあります。
買収直後に業績が急激に良くなることは稀で、通常は効率性の指標が一時的に悪化します(利益率や資産回転率など)。
したがって、従業員数が買収により大きく変動していた場合にはより一層注意して財務数値を見る必要があります。
補足:M&A
M&Aとは、「Mergers」and 「Acquisitions」の略で、企業・事業の合併や買収の総称のこと指します。他の企業の事業が自社に入るまたは、他の企業を自社に統合することなどが該当します。
従業員増加率の調べ方とは?
それでは実際の指標の調べ方です。
今回は有価証券報告書を使って従業員増加率の計算に必要となる数値を取りに行きます。
有価証券報告書から従業員増加率を計算する
有価証券報告書の第一部【企業情報】の中の、第1【企業の概況】に企業の財務数値のデータが掲載されています。
企業の概況の主要な経営指標当の推移から5年間の財務データを見ると、従業員数という項目を見つけることができます。
その数値をもとに企業全体としての従業員数と増加率を計算します。
さらに詳しく見る際に、【企業の概況】の5【従業員の状況】から各事業ごとの従業員数を把握することでより深い従業員の状況を知ることができます。
①今期の従業員数と比較対象年度の従業員数を比べることで、従業員増加率を算出できます。
②次に【従業員の状況】の従業員のデータを元に事業ごとの従業員数を把握します。
有価証券報告書には1年分の情報しか記載されていないため、前年の有価証券報告書の事業別の従業員数を調べることで、前期と当期の従業員増加率の比較が可能です。
決算説明会資料から従業員増加率を計算する
他には決算説明会資料を参考に計算する場合もあります。
従業員数が企業の事業を伸ばす際のKPIになっている場合は、ほぼ確実に決算説明会資料にも掲載されているのでぜひ確認してみてください。
例:株式会社SHIFT 決算説明会資料
従業員増加率のまとめ
以上、指標の解説でした。
どんな指標でも同じことが言えますが、利益率が高い、低いだけではなく、なぜ高いのか?なぜ低いのか?をビジネスに結び付けて考えられるとより示唆のある分析となります。
指標を比べ差が出ることがわかったら、次はその原因がどこにあるのかを調べることで一歩深堀した企業分析を行うことができます。ぜひ参考にして頂けると幸いです。
企業分析を1からしっかり学びたい方は、企業の経営成績の読み方がわかる下記の記事がおすすめです。
また、簿記の学習に興味がある方は、下記の記事もおすすめです。
もっと財務諸表を学びたい、財務スキルを身につけたい、企業のビジネスについて知りたいという方は、「Funda」で学びませんか?
どこよりもわかりやすく「財務」や「会計」が学べます。早速、下記の画像をクリックして学習を始めよう!