10年間でメディアビジネスはどう変化した?アイティメディアを分析
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企業分析2024.4.29
企業のビジネスモデルと財務数値を結びつける会計クイズ。
1日1問挑戦して、ビジネス知識を身に付けましょう。
今回は、メディア企業の10年比較問題です。
この記事では、時系列分析からメディア企業の変遷を数字を使って解説します。
目次
- 企業紹介:アイティメディア
- 売上高の内訳が大きく変化
- アイティメディア:事業内容と特徴
- ITメディアのリードジェン事業とは?
- 会計クイズ:アイティメディアの時系列問題
- 会計クイズ:アイティメディアの時系列問題の正解
- アイティメディア:決算書の10年比較
- アイティメディア:セグメント別売上高
- アイティメディア:業績の推移
- アイティメディア:広告収入が主な収益だった2007年以前
- アイティメディア:2007年以前のビジネスモデル
- アイティメディア:2007年以前の制作・営業体制
- アイティメディア:業績が悪化した2008年~2009年
- アイティメディア:リーマンショックによる影響
- アイティメディア:利益率が大幅に改善した2010年~2014年
- アイティメディア:利益率上昇のための施策
- アイティメディア:リードジェネレーションとは
- アイティメディア:リードジェン事業が拡大した2015年
- アイティメディア:リードジェン事業の大幅拡大
- アイティメディア:業績が横ばいになった2016年~2018年
- アイティメディア:リードジェン事業の業績
- アイティメディア:リードジェン事業の投資フェーズ
- アイティメディア:リードジェン事業が再拡大している2019年~
- アイティメディア:リードジェン事業の拡大
- 会計クイズ:まとめ
企業紹介:アイティメディア
最初に今回の登場企業の紹介です。
今回は、メディア事業を複数営む上場企業アイティメディア(2148)を元に、メディア事業の経営戦略を解説します。
アイティメディアは「ITmedia」「ITmedia ビジネスオンライン」などの専門情報メディアや旬な情報を幅広く紹介する「ねとらぼ」を運営している上場企業です。ソフトバンクパブリッシング株式会社(現SBクリエイティブ株式会社)の100%子会社として1999年に設立されました。
売上高の内訳が大きく変化
アイティメディアは直近10年間で売上の内訳が大きく変化している特徴があります。
セグメント別売上高を10年前と比較して見ると、元々は広告収入を中心とした「メディア事業」が売上高が大部分を占めていました。
ところが近年、「リードジェン事業」の売上が拡大しており、全体の約半分を占めています。
アイティメディア:事業内容と特徴
アイティメディアの「メディア広告事業」は広告主から広告掲載に対する広告料を受け取るビジネスモデルです。
広告収益のうち約4割が運用型広告収益で、ねとらぼが運用型の拡大を牽引しています。
ITメディアのリードジェン事業とは?
次にアイティメディアの「リードジェン事業」について解説します。
リードジェンとは、リードジェネレーションの略でコンテンツ掲載や展示会への出展などを通じて、見込み顧客の情報を獲得するマーケティング手法のことをいいます。リード(lead)を獲得する(generatioin)という文字通り、マーケティング活動によって見込み顧客情報を獲得する活動のことを指します。
アイティメディアは運営する専門メディア群から得られるデータを活用して、特定のBtoB商材に関心の高いユーザーを判別し、顧客企業に見込み顧客リストとして提供しています。
2006年から参入していたリードジェンモデルのビジネスを2015年から拡大させました。
基盤システムの刷新を機に2018年からリードジェンモデルの対象メディアをさらに拡張させています。
会計クイズ:アイティメディアの時系列問題
以上を踏まえてクイズです。
「ITmedeia」や「ねとらぼ」を運営するアイティメディアの直近の損益計算書はどちらでしょう?
アイティメディアの10年間の変遷がどのようにコスト構造に変化があるかを予想して考えてみてください。
タップで回答を見ることができます
選択肢①
選択肢②
損益計算書について詳しく知りたい方は、下記の記事もおすすめです。
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会計クイズ:アイティメディアの時系列問題の正解
正解は選択肢①がアイティメディアの直近の損益計算書でした。
お付き合い頂き、ありがとうございました。
アイティメディア:決算書の10年比較
それではここから解説です。
アイティメディアは「ITmedia」「ITmedia ビジネスオンライン」などの専門情報メディアや旬な情報を幅広く紹介する「ねとらぼ」を運営している企業です。
アイティメディア:セグメント別売上高
アイティメディアの売上高の内訳を確認してみます。
セグメント別の売上高を見ると、10年前は売上の大部分がメディア広告中心でしたが、近年ではリードジェン事業が大きく売上に貢献しています。
アイティメディア:業績の推移
アイティメディアの業績の推移を見てみましょう。近年売上高、営業利益率共に右肩上がりで増加していることがわかります。
一方、2010年頃の、売上高の大部分がメディア事業で占められていた時期は、収益性が落ち込んでいるようにも思えます。
この記事では、アイティメディアの決算数値を時系列で並べ、どのように新規事業を立ち上げてきたのかを追っていきます。
アイティメディア:広告収入が主な収益だった2007年以前
まずは、メディア事業が売上の大部分を占めていた2000年代の決算数値を確認します。
2007年以前は高利益率をキープしながら右肩上がりに成長していたことがわかります。
アイティメディア:2007年以前のビジネスモデル
2007年以前のビジネスモデルはメディア掲載の広告収入がメインでした。
IT・技術専門のメディアとして価値の高い広告商品を販売し業績が大きく成長しました。
アイティメディア:2007年以前の制作・営業体制
当時の好調具合は組織体制からも伺えます。
決算資料にも記載されているように、業績好調にともないメディアビジネスの根幹である編集・記者と営業を積極的に採用しています。
アイティメディア:業績が悪化した2008年~2009年
ところが、2008年頃から業績が急激に悪化しています。
元々10%以上あった営業利益率が一気にマイナスまで落ち込んでしまっています。
この時期に、一体何が起こったのでしょうか?
アイティメディア:リーマンショックによる影響
2008年頃、リーマンショックが発生し、経済状況が大きく悪化した時期でした。
リーマンショックによる経済状況の悪化により多くの企業が広告宣伝費を抑制しました。アイティメディアは、売上の大部分を企業の広告収益で賄っていたため、業績に大きな影響を及ぼしました。
メディアの制作・営業体制を拡大していたこともあり、当時のアイティメディアは固定費の比率も大きくなっていました。営業費用の大部分が固定費であるため売上が大きく減少すると、固定費を回収することができず、その結果赤字に転落してしまいました。
アイティメディア:利益率が大幅に改善した2010年~2014年
その後、2010年以降は売上高が横ばいで推移していますが、営業利益率は大きく改善していることが読み取れます。
アイティメディア:利益率上昇のための施策
この時期の営業利益率上昇の背景には、不採算事業の廃止、人員削減、高利益商品への注力等がありました。
事業整理の1つとして、不採算事業であったゲーム関連情報メディア「ITmedia Gamez」と転職支援サービス「JOB@IT」の廃止を行い、人員の削減を実施しました。その結果、固定費の比率が下がり、売上高が横ばいでも営業利益が残る財務体質に生まれ変わります。
また、2010年前後のアイティメディアの売上の内訳にも変化が読み取れます。
アイティメディアは当時から様々なマネタイズパターンを有していましたが、そのなかでも特に利益率が高いターゲティング型の広告商品が5年で2倍の成長を遂げました。
このターゲティング型の商品が後のリードジェネレーション商品です。
アイティメディア:リードジェネレーションとは
リードジェネレーションとは、アイティメディアが運営する専門メディア群から得られるデータを活用して、特定のBtoB商材に関心の高いユーザーを判別し、顧客企業に見込み顧客リストとして提供するビジネスモデルです。
アイティメディア:リードジェン事業が拡大した2015年
その後、2015年頃には、営業利益率のみならず、売上高も大幅に上昇しています。
アイティメディア:リードジェン事業の大幅拡大
業績の向上の背景には、既存事業の成長の他にも、リクルートからのサービス譲受による影響もあり、その結果リードジェンモデルが大幅に拡大しました。
アイティメディア:業績が横ばいになった2016年~2018年
2016年から2018年の3年間は、売上高と営業利益率共に横ばいで推移しています。
アイティメディア:リードジェン事業の業績
当時の業績の動きの背景として、買収して事業を拡大したリードジェンモデルの業績があまり伸びていませんでした。
決算資料にも記載があるように、当時は投資フェーズと位置付けていたようです。
アイティメディア:リードジェン事業の投資フェーズ
当時の状況を決算資料からキャッチアップしてみると、アイティメディアが運営する多種多様な専門メディアに、リードジェンモデルを統合するための基盤システム強化へ投資を行っていることがわかります。
アイティメディア:リードジェン事業が再拡大している2019年~
その後、2019年以降は売上高、営業利益率共に過去最高業績を更新し、大きく成長しています。
アイティメディア:リードジェン事業の拡大
基盤システムへの投資が終わり対象メディアを拡大させました。
また、コロナによるマーケティングのデジタルシフト加速で需要が増加しています。
その結果、売上高と営業利益率共に過去最高の結果となりました。
以上、元々広告収入に依存していたアイティメディアでしたが、専門メディアの強みを活かした戦略で10年間で業績低迷から復活を成し遂げました。
会計クイズ:まとめ
最後にまとめです。
今回は、時系列分析からメディア企業であるアイティメディアを解説しました。
メディア企業の10年間の変遷がコスト構造にどのような変化があるかを決算数値を見ることによって読み取ることができます。
以上、今回のクイズの正解は、選択肢①がアイティメディアの直近の損益計算書でした。
お付き合いいただきありがとうございました。
決算書や企業のビジネスについて少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。
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<この分析記事の出典データ>
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