10年間で大きく資産の中身が変化した企業はどれでしょうか?
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企業分析2024.4.29
「会計クイズ」とは企業の決算数値とビジネスモデルをリンクさせる思考トレーニングです。
今回は10年間で企業のビジネスモデルがどのように変化していったのかを数字で追っていきます。
目次
10年間で貸借対照表が大きく変わったのはどこ?
早速クイズです。
10年間で大きく貸借対照表の構造の変わったこの企業は選択肢のうちどの企業でしょう?
タップで回答を見ることができます
日本マクドナルドHD
サイゼリヤ
ワタミ
くら寿司
貸借対照表について詳しく知りたい方は、下記の記事もおすすめです。
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みんなの回答状況
Twitterでは1,510名の方が参加していただきました。
投票では、ワタミが最も多くなりました。
ワタミ 51.3%
マクドナルド 23.4%
くら寿司 14.6%
サイゼリヤ 10.7%
時系列分析を使った決算書の読み方
正解は選択肢③ワタミでした。
お付き合い頂きありがとうございました。
それではここからは解説です。
時系列分析:ワタミの財務数値の10年比較
ワタミの売上高の推移を見てみると年々売上高が縮小していることが読み取れます。
2014年を境に直近年度まで継続して減少傾向にあります。
売上高の推移の次は、総資産の推移を見ていきます。
ワタミの総資産の推移を確認するとある変化に気付きます。
2015年を境に資産が半分近くまで減っていることが読み取れます。
一体、この時期に何が起こったのでしょうか?
総資産が大きく減少した2015年前後のワタミの情報を見に行くと、100%子会社である「ワタミの介護」事業をSOMPOホールディングスへ売却していることがわかります。
当時のワタミは過労死問題などが発生し、基幹事業である飲食事業が傾いてしまっていました。
その結果、多額の投資が必要となる介護事業にお金を流す余裕が無くなってしまい、苦肉の策として「ワタミの介護」事業の売却を決定します。
介護事業のセグメント情報を確認すると、利益こそ生み出しているものの、多額の負債を抱えていることがわかります。
老人ホームの出店を増やすために多額の資金調達が必要であり、その結果、資産も負債も非常に多額に計上されている事業が介護事業でした。
介護事業の売却前後のワタミの貸借対照表を見てみます。
介護事業の多額の設備を売却したことで、固定資産が急激に縮小します。
それと同時に、介護事業の抱えていた有利子負債も減り、固定負債の比率も急激に縮小していることがわかります。
このように、基幹事業である飲食事業が傾いてしまった結果、介護事業の売却を決断し、貸借対照表の構造が大きく変化しました。
その後のワタミがどうなっていったのかを追うため、総資産の推移と、総資産に占める有利子負債の割合の推移を見てみます。
介護事業を売却したことで、一時的に有利子負債の占める比率は大きく減少しました
しかし、直近2020年の1年間で、再び大きく上昇していることがわかります。
これは、新型コロナウイルスに備え、手元流動性を確保するために、約150億円の追加の借入を実施したことによる影響が反映されています。
ワタミは居酒屋形態の飲食チェーンを主に展開していることから、緊急事態宣言や時短営業により、大きく収入が減少してしまうリスクが存在します。
そのため、手許の現金を厚くする目的から追加で多額の借入を実施しました。
その動きを2020年前後の貸借対照表を比較して確認します。
追加の借入の額だけ固定負債の額が増加し、総資産に占める固定負債の比率が大きく増加していることが読み取れます。
このように、企業の経営判断によって貸借対照表の形は刻々と変化していくことがわかります。
ワタミは、業態転換が非常に上手い会社という印象を持っていることからも、今後の動きにはぜひとも注目していきたいですね。
その他の企業の決算書の読み方
サイゼリヤの財務数値の10年比較
くら寿司の財務数値の10年比較
日本マクドナルドHDの財務数値の10年比較
会計クイズ:まとめ
以上、今回の問題の解答解説でした。
財務数値とビジネスモデルをセットで追っていくと、非常に有用な示唆を得られることが少なくありません。
1人でも多くの人に決算書を読む面白さが伝わりますと幸いです。
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<この分析記事の出典データ>
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