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産業全体の動向がわかる経済指標を徹底解説

産業全体の動向がわかる経済指標を徹底解説

産業全体の動向がどのように経済に影響を与えるのか

人が豊かな生活を送るには、経済活動により収入を得ることが必要です。そうした収入は仕事をすることで得られますが、産業が活発でなければ仕事のもらい先である会社が十分な利益を得られず、個人の収入も十分なものにならないでしょう。

新型コロナの影響により、一時は多くの産業が活動を沈静化させました。経済活動ができなくなった産業に従事する人は、収入がないためお金を消費できず。その結果他の産業にもお金が回らなくなり、日本全体の経済が動きを鈍らせてしまったのです。

得た収入を市場に還元することで、経済は回り続けます。経済を活発に回すためには、多くの収入を得られる産業が必要。すなわち、産業が活発であって初めて経済は豊かに回り始め、市場が活性化していくのです。

産業全体の動向がわかる経済指標

産業には製造業、商業、金融業、サービス業など、多くの種類があります。経済統計によれば、細分化した数はなんと400以上。それぞれの産業の活動が鈍ければ、他の産業にも影響を与え、経済全体の動きが鈍化してしまいます。そうならないためにも、各産業がどのような動きを見せ、何に問題を抱えているのかを明確にするのが大切。そのために用いられるのが、産業全体の動向を測定する経済指標です。


法人企業統計とは

財務省主導で行われる、営利法人等の企業活動の実態を把握するための調査・統計です。調査には2種類あり、営利法人等のその年度における確定決算の計数を調査する「年次別調査」、資本金等が1,000万円以上の営利法人を対象とした四半期ごとの仮決算数を調査する「四半期別調査」に分かれています。

調査対象は2009年度以降、資本金5億円以上の全企業および資本金1億円以上の保険業・金融業が対象となっています。この調査では、各企業の貸借対照表・損益計算書に基づくあらゆる計数が集計され、業界別に集計されて公表。この統計により、業界ごとの景気の状況や設備投資の動向といった動きが読み取れます。

財務省財務総合政策研究所「法人企業統計調査

法人企業統計
法人企業統計・年次別調査


日銀短観とは

日本銀行が主導で全国の企業に調査を行う統計調査です。正式名称を「全国企業短期経済観測調査」といい、全国の企業動向から適切な金融政策の運営を行うことを目的としています。

調査対象は全国の資本金2,000万円以上民間企業から抽出された約1万社。回答義務や罰則がない調査ですが、回答率は軒並み99%という驚異的な数値を誇ります。

調査は毎年3・6・9・12月に行われ、翌月初~中旬に調査結果が公表されます。速報性が高いことから、市場からも注目を集める経済指標とされています。

調査内容は、売上や設備投資額などに対する実績や予測値など、企業活動全般に渡ります。また事業の状況に対する経営者の判断項目もあり、数値には表面化しにくい経営者の心理的動向も調査しています。

市場におけるあらゆる判断材料が集計されるため、政府主導の調査でないにも関わらず、非常に高い信頼度を持つ統計となっています。そのため日銀による景気動向の判断だけでなく、投資家による市場判断にも活用されています。

日本銀行「短観

日銀短観
日銀短観


景気動向指数とは

景気全体の現状の把握や未来の動向を予測するための指標です。内閣府が主導でまとめており、計30の指標から総合的に景気の動向を判断しています。

景気動向指数はコンポジット・インデックス(CI)とディフュージョン・インデックス(DI)に分かれており、さらにそれぞれ先行指数、一致指数、遅行指数の3本の指数に分かれています。それぞれ判断材料とする指標が異なり、景気の動向を過去・現在・未来の観点から分析するために用いられます。

景気動向指数は毎月第1~2週目に前月分の速報指数が発表され、約2か月後に改訂状況として再発表されます。速報性が高く、参照する指標も豊富な点が、GDPよりも優位な点として捉えられています。

内閣府「統計表一覧:景気動向指数 結果

景気動向指数


CI,DI、先行指標、一致指数、遅行指数の違い

景気動向指数を構成する5つの要素が「CI」「DI」「先行指標」「一致指数」「遅行指数」です。

CIとDIは、同じ指数を異なる観点から分析する景気指標です。

CIは景気変動の大きさやテンポを表す指数です。構成する指標の動きを合成して測定します。2015年の指数を基本値となる100とし、前月の指数が100を上回るようなら景気が拡大局面、下降しているなら後退局面であることを示します。また指数変化の大きさがテンポを表しており、指数の変化が大きいほど拡張または後退のテンポが早いことを表します。

DIは、関連する経済指標の中で、景気の拡大を示している指標の割合を示したものです。50%を景気の拡大・後退の境目とし、100%に近いほど景気は拡大局面にあり、0%に近いほど後退局面であることを示します。

先行指標・一致指数・遅行指数は、景気との連動の仕方によって分類される指数です。

先行指標は景気に対して先行して動く指標です。将来の景気がどのように変化をするか、先行きの予測に適しています。

一致指数は景気に対してほぼ一致する状態で連動する指数です。現在の景気の状態を把握するのに適しています。

遅行指数は、景気の変動と一致せず、やや遅れて変化する指数です。およそ数ヶ月から半年ほど遅れるとされており、景気対策の効果検証に適しています。

全国では、以下の指標を景気動向指数の分析に用いています。なお、都道府県によっては異なる基準を設けている場合もあります。


景気ウォッチャー調査とは

地域ごとの景気動向を把握し、国内の景気動向を判断するための調査です。対象地域は北海道・東北・北関東・南関東・甲信越・東海・北陸・近畿・中国・四国・九州・沖縄の12地域に分割。小売業やレジャー業、運送業といった地域の経済活動の動向を観察できる業種の中から「家計動向判断」「企業動向関連」「雇用関連」の調査に適した計2,050人を対象に、電話もしくはWebサイトを使ってインタビュー、または電子メールで質疑応答を行います。

調査期間は毎月25日から月末にかけて行われ、調査結果は翌月中旬に発表されます。調査内容は指数ではなく、各分野ごとに景気の現状判断、業種・職種、判断の理由、具体的状況の所感をリスト化。現地における景気の変動を肌で感じた声から、実態としての景気動向を推し量ることができます。

内閣府「景気ウォッチャー調査


企業倒産件数とは

日本国内における倒産件数を集計した調査です。民間企業である株式会社東京商工リサーチが実施しており、全国かつ負債総額1,000万円以上の倒産統計を対象に「倒産月報」として月次で発表。さらに年半期(1~6月、7~12月)、年度半期(4~9月、10~3月)ごとに集計しています。

倒産件数の推移から、現在の景気の動向や景気対策の成果が読み取れます。また産業別・地域別に集計された倒産件数からは、業界や地域に紐付く動向が見え、投資家の判断材料としても有効に活用できるでしょう。

株式会社東京商工リサーチ「企業倒産件数状況

企業倒産件数


鉱工業指数とは

日本国内全体の鉱業・工業の動向を示す統計です。生産・出荷・稼働率などの項目において、基準時と比較した指数を用いて現在の状況を表現します。

基準時は2015年1~12月の平均値を100とし、比較対象は数量の変動のみとしています。

指数比較の対象となる項目は、それぞれ以下の内容です。

集計は月次で行われ、速報は翌月末、確報は翌々月中旬に行われます。鉱工業の動向を通じて国内の生産業の景気を判断し、生産活動や生産動向の先行きに関する基調判断、GDP、景気動向指数といったあらゆる指標の集計に幅広く利活用されています。

経済産業省「鉱工業指数の概要

鉱工業指数


第3次産業(サービス産業)活動指数

第3次産業(サービス業)に属する業種の生産活動を総合的に捉えるため、経済産業省によって統計が出される経済指標です。対象は非製造業に該当する広義のサービス業であり、2015年を基準年とした「日本標準産業分類」の13大分類に属する業種が対象。集計時には11分類に再編成されています。

集計は月次で行われ、該当月の統計は翌々月の中旬に経済産業省のホームページにて発表されます。

第3次産業活動指数は景気動向を捉えるための指数として「景気動向指数」や「月例経済報告」の参考とされています。「鉱工業生産指数」と並んで、国内産業の動向を捉えるための指数として大変重要な存在です。

経済産業省「第3次産業(サービス産業)活動指数


まとめ

産業の動向を指標を通じて読み解くことで、経済の動向をより深く分析できるようになるでしょう。各産業の指標は、短期的な分析だけでなく長期的な視野も重要。数字の動きがどのように経済に結びついているかを考えると、一歩進んだ経済分析に繋がります。ぜひそれぞれの産業指標を読み解いてみてください。

この記事を書いた人

著者:大手町のランダムウォーカー

大手町のランダムウォーカー

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トータルSNSフォロワー20万人の会計インフルエンサー。著書の『世界一楽しい決算書の読み方』はシリーズ累計30万部突破。

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