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GDPとは?意外と知られてないGDPを徹底解説

GDPとは?意外と知られてないGDPを徹底解説

2023.4.6に更新

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大手町のランダムウォーカー

トータルSNSフォロワー20万人の会計インフルエンサー。著書の『世界一楽しい決算書の読み方』はシリーズ累計30万部突破。

目次

GDPとは

GDPとは「Gross Dmestic Product」の頭文字を取った略称で、「国内総生産」を指します。1年間などの区切られた期間内に、国内で産出されたモノやサービスの付加価値すべての合計金額を表します。
ここでいう付加価値は、企業が売り上げたモノやサービスの販売価格から原材料などの経費を差し引いた価値を指しており、「国内で生まれた儲けの合計」を表す数値がGDPといえます。
GDPを算出することで、国内で生み出せる利益を通じて国内経済の状態を把握し、景気の動向や国際的な競争力を測ることができます。

名目GDPと実質GDPとは?

GDPには計算方法により「名目GDP」と「実質GDP」の2つに分けられます。
名目GDPは、生産数量に市場価格をかけて算出したものです。景気の変動などによる価格変化の影響を受けます。
実質GDPは、名目GDPで発生した市場価値の変化による影響を無視して算出したものです。こちらは価格変化の影響を受けず、取引数や物流の量が色濃く反映されます。
名目GDP 実質GDP
ある商店で販売された弁当を例に解説しましょう。
ある商店において、2020年から2022年の間に売れた弁当の個数と価格はそれぞれ以下の通り。
名目GDPと実質GDP
上記のデータから名目GDPを算出すると、以下のような数値になります。
2020年 …… 5,000万円(10,000個×500円)
2021年 …… 7,150万円(13,000個×550円)
2022年 …… 7,200万円(12,000個×600円)
同じデータを用いて、市場価値の基準年は2020年として算出した実質GDPは、以下のような数値となります。
2020年 …… 5,000万円(10,000個×500円)
2021年 …… 6,500万円(13,000個×500円)
2022年 …… 6,000万円(12,000個×500円)
年々上昇する弁当の価格を盛り込んだ名目GDPは、右肩上がりに上昇しているように見えます。一方の実質GDPでは、2022年に販売個数が1,000個減少したため、GDPも下落に転じました。
名目GDPは物価変動がダイレクトに反映されることから、インフレ・デフレの影響が色濃く反映されます。そのため物価の変動に経済活動の成果が隠れてしまうため、実質的な経済成長率の判断には向いていないといわれています。
経済成長率を判断する場合には、物価変動の影響を取り除いた実質的な経済活動の量を計る、実質GDPが用いられるのが一般的です。

日本のGDPは、世界で何番目?

GDPは国の経済規模を表すことから、国の豊かさを表す指標としても扱われています。
日本のGDPは、2020年においては世界第3位に位置しており、世界的にはトップクラスの裕福な国であることが分かります。
GDPの世界ランキング
※IMF統計より

1位はアメリカであり、日本の約4倍。2位は中国で、日本の約3倍です。
なお、日本はかつてはアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国とされてきましたが、中国が2010年にGDPで日本を抜き第2位に。それ以降、順調に経済規模の拡大を続けています。一方の日本は2012年の6.2兆ドルをピークにマイナス成長が続いてしまい、一時期は4兆ドル台に転落。その後緩やかな成長を取り戻し、直近の数年は5兆ドル前後に留まっています。

GDPの算出方法は?何で構成されている?

GDPは国内におけるあらゆる経済活動をベースに計算されます。
数式に表すと、以下のような計算式となります。
Y=C+I+G+(X-M)
それぞれのアルファベットは
Y …… GDP(国民所得)
C …… 民間消費
I …… 民間投資
G …… 政府支出(消費+投資)
X …… 輸出
M …… 輸入
を表しています。
GDPの算出方法

GDPの構成内訳(金額ベース)

日本の2020年名目GDP538.7兆円の最終需要構成は以下の通りです。
GDPの構成内訳
引用:内閣府「国民経済計算(GDP統計)」2020年度年次GDP実額 名目

続いて、それぞれの構成項目が持つ意味を解説します。

民間最終消費支出(個人消費)とは

家計から支出された、財貨やサービスへの対価です。食料品や家具、家電製品など、あらゆる消費財への支払いが含まれます。自動車のように、購入した後に何年も継続して使用するものに対する消費でも、支出したその年に計上されます。
民間最終消費支出に関連する指標には「消費支出(2人以上世帯)」と「消費動向調査」があります。

消費支出(2人以上世帯)とは

総務省が発表する「家計調査報告」では、2人以上の世帯における消費支出が集計されています。平成27年の国勢調査によれば、日本国内における53,332世帯の一般世帯のうち、単独世帯が18,418世帯(34.5%)に対し2人以上世帯が34,914世帯(65.5%)と、約2倍の世帯数となることから、民間の消費支出において重視されています。
家計調査報告は月次結果・四半期結果・年結果が発表されており、それぞれ集計対象期間から2か月後に発表。2人以上の世帯の実収入および消費支出の推移が読み取れ、国民の経済状態がどのように推移しているかを測れます。
2020年の年結果によれば、2人以上の勤労者世帯における実収入は、実質・名目ともに4.0%の増加。しかし消費支出は名目・実質共に5.3%の減少となりました。新型コロナの影響から回復し収入は回復しつつも、将来に向けて支出を絞る傾向が強いことがうかがえます。
総務省統計局「家計調査報告 ―月・四半期・年―

消費動向調査とは

消費者が意識する今後の暮らしへの見通しや、各種サービス等への支出予定など調べる調査です。毎月15日に調査が行われ、翌月1日に総務省統計局のホームページに発表されます。
調査方法は「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」「資産価値」について、今後半年間の見通しを5段階で回答するアンケート方式です。集計結果は、景気動向判断の基礎資料とされています。
集計されたデータは「消費者態度指数」としてポイント表示されます。2021年9月には、前月に比べて1.1ポイント上昇。新型コロナウイルスの感染が広がった8月の落ち込みを取り戻すように、主に雇用環境・資産価値が伸びています。現時点ではコロナ禍前の消費者態度指数である40ポイント超えには届きませんが、緩やかな持ち直しの傾向が見られました。
総務省統計局「消費動向調査

民間住宅(住宅投資)とは

個人が住宅を新築・増改築する際の支出を指します。新築の一戸建てやマンションの購入、または既存住宅の増築、改築に対する支出を対象としています。中古住宅の購入や賃貸の家賃は含まれません。
民間住宅投資がGDP全体に締める割合は大きいとは言えませんが、新築に伴い木材や鉄鋼、住宅設備用の金属など、多くの材料が消費されます。また家具や家電といった新生活に関連した支出も伴うため、間接的に経済活動に与える影響は大きいと考えられています。
関連指標には「建築着工統計調査」があります。

建築着工統計調査とは

全国における建築物の着工状況に関する統計調査です。建築物数、床面積合計、工事費予定額を建築主、構造、用途等別に分類されます。国土交通省により毎月作成されており、月次報告のほか、年計報告・年度計報告にまとめられています。
民間建築物の着工動態を通じて、民間住宅投資の推移の予測や、副次的な支出への影響を類推。国や地方公共団体が行う施策の基礎資料として活用されています。
国土交通省「建築・住宅関係統計

民間企業設備(設備投資)とは

民間企業が工場や店舗などの設備を新築・増設するために行う投資を指します。投資に含まれる対象は建物だけでなく、関連する機械や備品、ソフトウェアや特許などの無形固定資産も含まれます。
設備投資による営業力の向上だけでなく、設備投資に必要な原材料の仕入れ、開発費用の発生などの経済活動に繋がり、GDPに与える影響は大きいとされています。
関連指標には「法人企業統計」「機械受注」があります。

法人企業統計とは

日本における営利法人の活動実態を把握するために行われる統計調査です。対象の年度に行われた確定決算の数を調査する「年次別調査」、資本金等が1,000万円以上の営利法人を対象とした「四半期別調査」があり、年次調査は9月、四半期別調査は3・6・9・12月に発表されます。
両方の調査では法人の活動を損益計算書、貸借対照表から判断できますので、日本全体、または地方ごとの経済活動の状況を把握し、国や地域による施策に活用されています。
財務省「法人企業統計調査

機械受注とは

機械製造業が受注した設備機械類の販売額・受注額に関する統計調査です。毎月行われる基本調査の他、四半期に一度見通し調査があります。機種別の販売額および受注残高を調査することで、設備への先行投資の傾向を分析し、景気動向の判断の材料とされます。
内閣府「機械受注統計調査報告

民間在庫変動とは

民間企業の在庫変動幅を指します。会計期間中における期首在庫への在庫の繰入額・引出額を反映させて算出します。在庫変動がGDPに占める割合は非常に小さなものですが、GDPの成長率と連動する重要な指標と考えられています。

政府最終消費支出(政府消費)とは

政府が負担する支出全般を指し、大きく「個別消費支出」と「集合消費支出」に分けられます。個別消費支出は医療費や介護の給付金など、個々の家計のために支出される項目。集合消費支出は、公務員などの給料や公共財への支出など、個別に対する支出に含まれない項目を指します。

公的固定資本形成(公共投資)とは

政府が社会資本に対する整備や投資にかかる支出、またはその資産そのものを指します。公共投資とも呼ばれ、電気・ガス・水道といったインフラ、道路やダムなどの公共の設備、教育や福祉への投資など、社会全体に対する広い投資が含まれます。
関連指標に「公共工事受注額」「公共工事請負金額」があります。

公共工事受注額とは

電気工事・管工事・計装工事に関する受注額を把握するための統計です。それぞれの業界団体に紐付く主要20社ずつを対象に、民間および官公庁からの受注高を集計します。調査は毎月行われ、随時公開されます。
民間および官公庁からの受注額がそれぞれ集計され、前年同月との比較も出されるため、受注額の増減を通じて景気の動向を類推できます。
国土交通省「建設工事関係統計

公共工事請負金額とは

国や地方自治体が発注する公共工事の発注動向を示す統計です。東日本建設業保証株式会社含む3社が、前払金保証契約を締結した公共工事を集計した「公共工事前払金保証統計」から読み取れます。集計は毎月15日までに前月分が集計され発表されます。公共工事の発注状況を通じ、景気動向を類推できますが、公共工事は大型案件の有無などで指標が振れやすいため、3か月移動平均するなど、読み方には工夫が必要とされています。
東日本建設業保証株式会社「公共工事前払金保証統計

公的在庫変動(米や原油の在庫)とは

政府が保有する在庫の変動を指します。主に政府備蓄の米や原油、国有林野等の原材料、資材、貯蔵品などが対象です。在庫変動の大部分は食料安定供給特別会計による米の買い増しが占めており、政府主導による食糧需給や価格安定に用いられています。

財貨・サービスの輸出入(貿易収支)とは

モノやサービスの輸出入の収支を指しています。輸出額が輸入額を上回れば貿易黒字、下回れば貿易赤字と評価されます。貿易黒字傾向になると輸入国から外貨を受け取る量が増えるため、GDPを押し上げる一因となり、反対に貿易赤字が増えると円が海外に流出するため、GDPは押し下げる一因となります。

貿易統計とは

日本と諸外国の貿易の記録を集計し、日本の貿易の実態を明らかにするための統計資料です。貿易統計は「普通貿易統計」「特殊貿易統計」「船舶・航空機統計」に大別されて集計されています。公表は速報が1~2週間おきに上旬分、上中旬分、月分の月3回、確報が月1回行われています。
普通貿易統計は、日本から輸出・海外から輸入された貨物を、金額・数量・品目・国別にまとめた統計です。一般的には貿易統計といえば普通貿易統計を指すと考えられています。
特殊貿易統計は、金統計(金貨および貨幣用金に関する統計)、船用品・機用品統計(積み込まれた船用品および機用品に関する統計)、通過貿易統計(本邦を通過する外国貨物に関する統計)の3種をまとめた統計です。
船舶・航空機統計は、船舶および航空機の入出港を国籍別にまとめた統計です。
貿易統計にまとめられた貿易の実態からは、国内外の経済動向や産業構造の変化をうかがい知ることができます。また各国別の貿易収支を通じ、対象国との経済関係の動向を予測できるでしょう。
財務省「財務省貿易統計

GNP、GNIって何?

GNIは「Gross National Income」の頭文字をとった略称で、「国民総所得」を指す言葉です。
GDPは国内で生み出された商品・サービスの付加価値の総計を表す指標であるため、日本企業が海外で得た収益は考慮しません。
それに対しGNIは、日本国民が得た所得の合計を指す指標とされています。この所得は国内で得たモノに限らず、海外事業での利益や外国株式・債券への投資によって得た収入もすべて加えます。GDPは在日外国人を含めた”国内"を対象としており、GNIは海外在住を含める"国民"を対象としている点に大きな違いがあります。
また、GNIと類似の指標にGNP(Gross National Product=国民総生産)があります。かつて日本ではGNPが用いられていましたが、2000年以降の内閣府「国民経済計算」では、それまで採用されていたGNPに代わりGNIが用いられるようになりました。
GNPはGNI同様に国民を対象とした指標であり、GNIは国民が得た所得を対象としているのに対し、GNPは国民が生み出した付加価値を対象とするという違いがあります。ただし「生産(付加価値)」「分配(所得)」「支出(需要)」はすべて同じ額となる「三面等価の原則」により、GNIとGNPは観点が異なるだけで、集計の結果は同じ額を示します。
なお、かつては日本の景気を表す指標として主にGNPが用いられていましたが、近年ではより国内の景気を反映できるGDPを重視する傾向が強まっています。

【番外編】経済に大きな影響を与える通貨量がわかるマネーストック統計

日本銀行は、景気や物価の動向や先行きを判断するための指標として、経済全体に流通している通貨量を集計し、統計として発表してきました。かつては「マネーサプライ」という名称で発表されていましたが、やがて金融商品の多様化やゆうちょ銀行の誕生など、金融を取り巻く環境が変化。時代に合わせる形で2008年6月、通貨保有主体や各指標の通貨発行主体および金融商品範囲の見直しを行うと共に、名称を「マネーストック」に変更しました。

マネーストックとは

日本銀行を含む金融機関から、経済全体に出回っている通貨の総量を指す指標です。一般法人、個人、地方公共団体ら「通貨保有主体」が保有する通貨が統計の対象となっています。中央政府および金融機関は統計の対象にはなりません。
マネーストック統計は対象とする通貨の範囲に応じた4つの指標を設けています。
マネーストック

マネーストックと経済の関係

マネーストックと経済の動向は、非常に密接な関係にあります。
銀行が個人や企業へ積極的に貸し出しを行うと、経済を流通する通貨量が増加。すると企業や家計で使用されるお金の量が増加し、市場にお金が流れ込むため、一般的には景気が上昇方向に向かうとされています。ただし通貨量が増えすぎるとそれだけお金の価値が下落するため、同じものを買うにも多くのお金が必要となるインフレ傾向へと進みます。
一方で銀行が貸し出しを渋り、経済に流通する通貨量を制限すると、企業や家計から市場にお金が流れ込まなくなるため、景気は下落方向へと動きます。市場に流れるお金が少ないため、お金の価値が上がり少ないお金でモノが変えるデフレ傾向が進行。しかし同じ労力に対する収入も減額していくため、人々の生活は苦しい方向へと向かうことになります。
そうした景気の調整を行うためにも、マネーストック統計を通じて通貨の流通量を把握していくことが必要なのです。
なお、近年のマネーストックは、新型コロナの影響もあり過熱気味ともいえる大幅な伸び率を見せていました。特に預金通貨の伸びはすさまじく、2019年までは前年比5~6%程度の伸び率でしたが、2020年5月からは10%を超え、2021年初頭前後には15%を超えています。
この現象には、国民全員に対する特別定額給付金や企業や個人事業主に対する持続化給付金など、新型コロナ対策関連の給付が大きく影響しています。
一方で、2021年中盤に入ると、コロナ明けが見えてきた影響もあってか、増加率は落ち着きを取り戻し始めました。2021年6月以降の預金通貨は1ケタ台の成長率へ。10%に迫る勢いだったM2も5%を下回り始めています。今後も新型コロナの収束に伴い、緩やかに例年基準へと戻っていくでしょう。

まとめ

GDPは、国内のモノやサービスの付加価値の合計額。すなわち日本国内全体の儲けを指す指標です。現在の日本はどのような経済状態であり、どんな未来に進んでいくのか。複雑に絡み合った指標を読み解けば、今まで見えてこなかった世界が見えてくるでしょう。GDPへの理解は、あらゆる経済指標の理解への入り口です。この機会にGDPを学び、新しい世界の見方を身につけてみましょう。

GDPとは

GDPとは「Gross Dmestic Product」の頭文字を取った略称で、「国内総生産」を指します。1年間などの区切られた期間内に、国内で産出されたモノやサービスの付加価値すべての合計金額を表します。
ここでいう付加価値は、企業が売り上げたモノやサービスの販売価格から原材料などの経費を差し引いた価値を指しており、「国内で生まれた儲けの合計」を表す数値がGDPといえます。
GDPを算出することで、国内で生み出せる利益を通じて国内経済の状態を把握し、景気の動向や国際的な競争力を測ることができます。

名目GDPと実質GDPとは?

GDPには計算方法により「名目GDP」と「実質GDP」の2つに分けられます。
名目GDPは、生産数量に市場価格をかけて算出したものです。景気の変動などによる価格変化の影響を受けます。
実質GDPは、名目GDPで発生した市場価値の変化による影響を無視して算出したものです。こちらは価格変化の影響を受けず、取引数や物流の量が色濃く反映されます。
名目GDP 実質GDP
ある商店で販売された弁当を例に解説しましょう。
ある商店において、2020年から2022年の間に売れた弁当の個数と価格はそれぞれ以下の通り。
名目GDPと実質GDP
上記のデータから名目GDPを算出すると、以下のような数値になります。
2020年 …… 5,000万円(10,000個×500円)
2021年 …… 7,150万円(13,000個×550円)
2022年 …… 7,200万円(12,000個×600円)
同じデータを用いて、市場価値の基準年は2020年として算出した実質GDPは、以下のような数値となります。
2020年 …… 5,000万円(10,000個×500円)
2021年 …… 6,500万円(13,000個×500円)
2022年 …… 6,000万円(12,000個×500円)
年々上昇する弁当の価格を盛り込んだ名目GDPは、右肩上がりに上昇しているように見えます。一方の実質GDPでは、2022年に販売個数が1,000個減少したため、GDPも下落に転じました。
名目GDPは物価変動がダイレクトに反映されることから、インフレ・デフレの影響が色濃く反映されます。そのため物価の変動に経済活動の成果が隠れてしまうため、実質的な経済成長率の判断には向いていないといわれています。
経済成長率を判断する場合には、物価変動の影響を取り除いた実質的な経済活動の量を計る、実質GDPが用いられるのが一般的です。

日本のGDPは、世界で何番目?

GDPは国の経済規模を表すことから、国の豊かさを表す指標としても扱われています。
日本のGDPは、2020年においては世界第3位に位置しており、世界的にはトップクラスの裕福な国であることが分かります。
GDPの世界ランキング
※IMF統計より

1位はアメリカであり、日本の約4倍。2位は中国で、日本の約3倍です。
なお、日本はかつてはアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国とされてきましたが、中国が2010年にGDPで日本を抜き第2位に。それ以降、順調に経済規模の拡大を続けています。一方の日本は2012年の6.2兆ドルをピークにマイナス成長が続いてしまい、一時期は4兆ドル台に転落。その後緩やかな成長を取り戻し、直近の数年は5兆ドル前後に留まっています。

GDPの算出方法は?何で構成されている?

GDPは国内におけるあらゆる経済活動をベースに計算されます。
数式に表すと、以下のような計算式となります。
Y=C+I+G+(X-M)
それぞれのアルファベットは
Y …… GDP(国民所得)
C …… 民間消費
I …… 民間投資
G …… 政府支出(消費+投資)
X …… 輸出
M …… 輸入
を表しています。
GDPの算出方法

GDPの構成内訳(金額ベース)

日本の2020年名目GDP538.7兆円の最終需要構成は以下の通りです。
GDPの構成内訳
引用:内閣府「国民経済計算(GDP統計)」2020年度年次GDP実額 名目

続いて、それぞれの構成項目が持つ意味を解説します。

民間最終消費支出(個人消費)とは

家計から支出された、財貨やサービスへの対価です。食料品や家具、家電製品など、あらゆる消費財への支払いが含まれます。自動車のように、購入した後に何年も継続して使用するものに対する消費でも、支出したその年に計上されます。
民間最終消費支出に関連する指標には「消費支出(2人以上世帯)」と「消費動向調査」があります。

消費支出(2人以上世帯)とは

総務省が発表する「家計調査報告」では、2人以上の世帯における消費支出が集計されています。平成27年の国勢調査によれば、日本国内における53,332世帯の一般世帯のうち、単独世帯が18,418世帯(34.5%)に対し2人以上世帯が34,914世帯(65.5%)と、約2倍の世帯数となることから、民間の消費支出において重視されています。
家計調査報告は月次結果・四半期結果・年結果が発表されており、それぞれ集計対象期間から2か月後に発表。2人以上の世帯の実収入および消費支出の推移が読み取れ、国民の経済状態がどのように推移しているかを測れます。
2020年の年結果によれば、2人以上の勤労者世帯における実収入は、実質・名目ともに4.0%の増加。しかし消費支出は名目・実質共に5.3%の減少となりました。新型コロナの影響から回復し収入は回復しつつも、将来に向けて支出を絞る傾向が強いことがうかがえます。
総務省統計局「家計調査報告 ―月・四半期・年―

消費動向調査とは

消費者が意識する今後の暮らしへの見通しや、各種サービス等への支出予定など調べる調査です。毎月15日に調査が行われ、翌月1日に総務省統計局のホームページに発表されます。
調査方法は「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」「資産価値」について、今後半年間の見通しを5段階で回答するアンケート方式です。集計結果は、景気動向判断の基礎資料とされています。
集計されたデータは「消費者態度指数」としてポイント表示されます。2021年9月には、前月に比べて1.1ポイント上昇。新型コロナウイルスの感染が広がった8月の落ち込みを取り戻すように、主に雇用環境・資産価値が伸びています。現時点ではコロナ禍前の消費者態度指数である40ポイント超えには届きませんが、緩やかな持ち直しの傾向が見られました。
総務省統計局「消費動向調査

民間住宅(住宅投資)とは

個人が住宅を新築・増改築する際の支出を指します。新築の一戸建てやマンションの購入、または既存住宅の増築、改築に対する支出を対象としています。中古住宅の購入や賃貸の家賃は含まれません。
民間住宅投資がGDP全体に締める割合は大きいとは言えませんが、新築に伴い木材や鉄鋼、住宅設備用の金属など、多くの材料が消費されます。また家具や家電といった新生活に関連した支出も伴うため、間接的に経済活動に与える影響は大きいと考えられています。
関連指標には「建築着工統計調査」があります。

建築着工統計調査とは

全国における建築物の着工状況に関する統計調査です。建築物数、床面積合計、工事費予定額を建築主、構造、用途等別に分類されます。国土交通省により毎月作成されており、月次報告のほか、年計報告・年度計報告にまとめられています。
民間建築物の着工動態を通じて、民間住宅投資の推移の予測や、副次的な支出への影響を類推。国や地方公共団体が行う施策の基礎資料として活用されています。
国土交通省「建築・住宅関係統計

民間企業設備(設備投資)とは

民間企業が工場や店舗などの設備を新築・増設するために行う投資を指します。投資に含まれる対象は建物だけでなく、関連する機械や備品、ソフトウェアや特許などの無形固定資産も含まれます。
設備投資による営業力の向上だけでなく、設備投資に必要な原材料の仕入れ、開発費用の発生などの経済活動に繋がり、GDPに与える影響は大きいとされています。
関連指標には「法人企業統計」「機械受注」があります。

法人企業統計とは

日本における営利法人の活動実態を把握するために行われる統計調査です。対象の年度に行われた確定決算の数を調査する「年次別調査」、資本金等が1,000万円以上の営利法人を対象とした「四半期別調査」があり、年次調査は9月、四半期別調査は3・6・9・12月に発表されます。
両方の調査では法人の活動を損益計算書、貸借対照表から判断できますので、日本全体、または地方ごとの経済活動の状況を把握し、国や地域による施策に活用されています。
財務省「法人企業統計調査

機械受注とは

機械製造業が受注した設備機械類の販売額・受注額に関する統計調査です。毎月行われる基本調査の他、四半期に一度見通し調査があります。機種別の販売額および受注残高を調査することで、設備への先行投資の傾向を分析し、景気動向の判断の材料とされます。
内閣府「機械受注統計調査報告

民間在庫変動とは

民間企業の在庫変動幅を指します。会計期間中における期首在庫への在庫の繰入額・引出額を反映させて算出します。在庫変動がGDPに占める割合は非常に小さなものですが、GDPの成長率と連動する重要な指標と考えられています。

政府最終消費支出(政府消費)とは

政府が負担する支出全般を指し、大きく「個別消費支出」と「集合消費支出」に分けられます。個別消費支出は医療費や介護の給付金など、個々の家計のために支出される項目。集合消費支出は、公務員などの給料や公共財への支出など、個別に対する支出に含まれない項目を指します。

公的固定資本形成(公共投資)とは

政府が社会資本に対する整備や投資にかかる支出、またはその資産そのものを指します。公共投資とも呼ばれ、電気・ガス・水道といったインフラ、道路やダムなどの公共の設備、教育や福祉への投資など、社会全体に対する広い投資が含まれます。
関連指標に「公共工事受注額」「公共工事請負金額」があります。

公共工事受注額とは

電気工事・管工事・計装工事に関する受注額を把握するための統計です。それぞれの業界団体に紐付く主要20社ずつを対象に、民間および官公庁からの受注高を集計します。調査は毎月行われ、随時公開されます。
民間および官公庁からの受注額がそれぞれ集計され、前年同月との比較も出されるため、受注額の増減を通じて景気の動向を類推できます。
国土交通省「建設工事関係統計

公共工事請負金額とは

国や地方自治体が発注する公共工事の発注動向を示す統計です。東日本建設業保証株式会社含む3社が、前払金保証契約を締結した公共工事を集計した「公共工事前払金保証統計」から読み取れます。集計は毎月15日までに前月分が集計され発表されます。公共工事の発注状況を通じ、景気動向を類推できますが、公共工事は大型案件の有無などで指標が振れやすいため、3か月移動平均するなど、読み方には工夫が必要とされています。
東日本建設業保証株式会社「公共工事前払金保証統計

公的在庫変動(米や原油の在庫)とは

政府が保有する在庫の変動を指します。主に政府備蓄の米や原油、国有林野等の原材料、資材、貯蔵品などが対象です。在庫変動の大部分は食料安定供給特別会計による米の買い増しが占めており、政府主導による食糧需給や価格安定に用いられています。

財貨・サービスの輸出入(貿易収支)とは

モノやサービスの輸出入の収支を指しています。輸出額が輸入額を上回れば貿易黒字、下回れば貿易赤字と評価されます。貿易黒字傾向になると輸入国から外貨を受け取る量が増えるため、GDPを押し上げる一因となり、反対に貿易赤字が増えると円が海外に流出するため、GDPは押し下げる一因となります。

貿易統計とは

日本と諸外国の貿易の記録を集計し、日本の貿易の実態を明らかにするための統計資料です。貿易統計は「普通貿易統計」「特殊貿易統計」「船舶・航空機統計」に大別されて集計されています。公表は速報が1~2週間おきに上旬分、上中旬分、月分の月3回、確報が月1回行われています。
普通貿易統計は、日本から輸出・海外から輸入された貨物を、金額・数量・品目・国別にまとめた統計です。一般的には貿易統計といえば普通貿易統計を指すと考えられています。
特殊貿易統計は、金統計(金貨および貨幣用金に関する統計)、船用品・機用品統計(積み込まれた船用品および機用品に関する統計)、通過貿易統計(本邦を通過する外国貨物に関する統計)の3種をまとめた統計です。
船舶・航空機統計は、船舶および航空機の入出港を国籍別にまとめた統計です。
貿易統計にまとめられた貿易の実態からは、国内外の経済動向や産業構造の変化をうかがい知ることができます。また各国別の貿易収支を通じ、対象国との経済関係の動向を予測できるでしょう。
財務省「財務省貿易統計

GNP、GNIって何?

GNIは「Gross National Income」の頭文字をとった略称で、「国民総所得」を指す言葉です。
GDPは国内で生み出された商品・サービスの付加価値の総計を表す指標であるため、日本企業が海外で得た収益は考慮しません。
それに対しGNIは、日本国民が得た所得の合計を指す指標とされています。この所得は国内で得たモノに限らず、海外事業での利益や外国株式・債券への投資によって得た収入もすべて加えます。GDPは在日外国人を含めた”国内"を対象としており、GNIは海外在住を含める"国民"を対象としている点に大きな違いがあります。
また、GNIと類似の指標にGNP(Gross National Product=国民総生産)があります。かつて日本ではGNPが用いられていましたが、2000年以降の内閣府「国民経済計算」では、それまで採用されていたGNPに代わりGNIが用いられるようになりました。
GNPはGNI同様に国民を対象とした指標であり、GNIは国民が得た所得を対象としているのに対し、GNPは国民が生み出した付加価値を対象とするという違いがあります。ただし「生産(付加価値)」「分配(所得)」「支出(需要)」はすべて同じ額となる「三面等価の原則」により、GNIとGNPは観点が異なるだけで、集計の結果は同じ額を示します。
なお、かつては日本の景気を表す指標として主にGNPが用いられていましたが、近年ではより国内の景気を反映できるGDPを重視する傾向が強まっています。

【番外編】経済に大きな影響を与える通貨量がわかるマネーストック統計

日本銀行は、景気や物価の動向や先行きを判断するための指標として、経済全体に流通している通貨量を集計し、統計として発表してきました。かつては「マネーサプライ」という名称で発表されていましたが、やがて金融商品の多様化やゆうちょ銀行の誕生など、金融を取り巻く環境が変化。時代に合わせる形で2008年6月、通貨保有主体や各指標の通貨発行主体および金融商品範囲の見直しを行うと共に、名称を「マネーストック」に変更しました。

マネーストックとは

日本銀行を含む金融機関から、経済全体に出回っている通貨の総量を指す指標です。一般法人、個人、地方公共団体ら「通貨保有主体」が保有する通貨が統計の対象となっています。中央政府および金融機関は統計の対象にはなりません。
マネーストック統計は対象とする通貨の範囲に応じた4つの指標を設けています。
マネーストック

マネーストックと経済の関係

マネーストックと経済の動向は、非常に密接な関係にあります。
銀行が個人や企業へ積極的に貸し出しを行うと、経済を流通する通貨量が増加。すると企業や家計で使用されるお金の量が増加し、市場にお金が流れ込むため、一般的には景気が上昇方向に向かうとされています。ただし通貨量が増えすぎるとそれだけお金の価値が下落するため、同じものを買うにも多くのお金が必要となるインフレ傾向へと進みます。
一方で銀行が貸し出しを渋り、経済に流通する通貨量を制限すると、企業や家計から市場にお金が流れ込まなくなるため、景気は下落方向へと動きます。市場に流れるお金が少ないため、お金の価値が上がり少ないお金でモノが変えるデフレ傾向が進行。しかし同じ労力に対する収入も減額していくため、人々の生活は苦しい方向へと向かうことになります。
そうした景気の調整を行うためにも、マネーストック統計を通じて通貨の流通量を把握していくことが必要なのです。
なお、近年のマネーストックは、新型コロナの影響もあり過熱気味ともいえる大幅な伸び率を見せていました。特に預金通貨の伸びはすさまじく、2019年までは前年比5~6%程度の伸び率でしたが、2020年5月からは10%を超え、2021年初頭前後には15%を超えています。
この現象には、国民全員に対する特別定額給付金や企業や個人事業主に対する持続化給付金など、新型コロナ対策関連の給付が大きく影響しています。
一方で、2021年中盤に入ると、コロナ明けが見えてきた影響もあってか、増加率は落ち着きを取り戻し始めました。2021年6月以降の預金通貨は1ケタ台の成長率へ。10%に迫る勢いだったM2も5%を下回り始めています。今後も新型コロナの収束に伴い、緩やかに例年基準へと戻っていくでしょう。

まとめ

GDPは、国内のモノやサービスの付加価値の合計額。すなわち日本国内全体の儲けを指す指標です。現在の日本はどのような経済状態であり、どんな未来に進んでいくのか。複雑に絡み合った指標を読み解けば、今まで見えてこなかった世界が見えてくるでしょう。GDPへの理解は、あらゆる経済指標の理解への入り口です。この機会にGDPを学び、新しい世界の見方を身につけてみましょう。

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