ファイブフォース分析とは?業界の競争状況を分析する分析手法を解説
2024.5.1
この記事では企業分析を行う際に、役に立つフレームワークの意味と使い方について解説します。
図解を交えながら解説していきますので、ぜひ最後まで読んでいただけますと幸いです。
目次
- ファイブフォース分析とは?:基本的な概念と使用方法
- ファイブフォース分析とは?
- ファイブフォース分析の背景・起源
- ファイブフォース分析の5つの要素を解説
- ファイブフォース分析の構成要素:売り手(サプライヤー)の交渉力
- ファイブフォース分析の構成要素:買い手(顧客)の交渉力
- ファイブフォース分析の構成要素:業界内の競争
- ファイブフォース分析の構成要素:新規参入の脅威
- ファイブフォース分析の構成要素:代替品の存在
- ファイブフォース分析の使い方
- ファイブフォース分析の使い方の説明
- ファイブフォース分析の例
- ファイブフォース分析のTips
- 主観的な分析とならないようにする
- 分析する単位を明確にする
- ファイブフォース分析のメリット・デメリット
- ファイブフォース分析のメリット
- ファイブフォース分析のデメリット
- ファイブフォース分析の事例
- ファイブフォース分析の代替手法
- ファイブフォース分析と比較した代替手法
- ファイブフォース分析の代替手法について
- ファイブフォース分析のまとめ
ファイブフォース分析とは?:基本的な概念と使用方法
ファイブフォース分析とは?
ファイブフォース分析とは、自社を取り巻く業界構造を分析するフレームワークです。
業界を構成する5つの要素を分析し、競争環境を明確にすることで、自社が利益を上げるための戦略立案に活用します。5つの要素として、売り手、買い手、業界内の競合、新規参入者、代替品が存在します。
ファイブフォース分析の背景・起源
ファイブフォース分析は、1979年に経営学者のマイケル・E・ポーター氏が提唱した競争戦略の分析フレームワークです。
業界内の競争環境を正確に把握するための有用なツールとされており、現在多くの企業が利用しています。
ファイブフォース分析の5つの要素を解説
業界に留保される利益は、「業界の利益を削る」5つの要因によって定まるという考え方がファイブフォース分析のベースにあります。
ここからは、ファイブフォース分析の対象である5つの要素について解説します。
- 売り手(サプライヤー)の交渉力
- 買い手(顧客)の交渉力
- 業界内の競争
- 新規参入の脅威
- 代替品の存在
ファイブフォース分析の構成要素:売り手(サプライヤー)の交渉力
売り手(サプライヤー)の交渉力とは、製品やサービスを提供するための材料やサービスを調達するサプライヤーと自社との関係を指します。
サプライヤーが多いと、原材料やサービスに対する競争が弱くなり、仕入価格が安定します。逆にサプライヤーが少ないと、売り手の寡占状態となり、仕入価格が高騰します。
分析する際は、仕入れコストを下げられるか、他に取引可能な仕入先はいくつあるかを考えましょう。
ファイブフォース分析の構成要素:買い手(顧客)の交渉力
買い手(顧客)の交渉力とは、製品やサービスを購入する顧客と自社との関係を指します。
競合他社が多く、買い手市場となっている場合、価格競争が激しくなり収益性が下がります。
分析する際は、競合と差別化できているか、買い手は他に購入先があるかなどを考えましょう。
ファイブフォース分析の構成要素:業界内の競争
業界内の競争とは、同じ製品やサービスを提供する競合他社との競争を指します。
競合が多いほど、商品の差別化や価格競争が激しくなり、収益性が下がります。逆に競合が少ないと、自社が寡占状態となり、収益性が上がります。
分析する際は、業界シェア率や成長率、平均収益・費用、認知度、撤退時に発生する費用などを検討しましょう。
ファイブフォース分析の構成要素:新規参入の脅威
新規参入の脅威とは、市場に新しい企業が参入し競争が激化するリスクを示します。
市場に参入するハードルが低いほど、新規参入者が増え価格競争が激化し、収益性が下がる可能性が高くなります。
分析する際は、新規参入にかかるコストやリソース、期間などを調べ自社の脅威にあたるかを考えましょう。
ファイブフォース分析の構成要素:代替品の存在
代替品の存在とは、製品やサービスの代替となるものが登場することを指します。
代替品が登場することで、自社の市場シェアが小さくなり、収益性が下がります。
分析する際は、代替品の市場規模や価格帯、収益などのデータを集め自社の脅威にあたるかを考えましょう。
ファイブフォース分析の使い方
ファイブフォース分析の使い方の説明
ここからはファイブフォース分析の使い方・手順を紹介します。
- 分析する対象の業界や競合の範囲、分析期間を明確にする
- 各要素の情報を収集する
- 各要素の脅威度を評価する
- 事業戦略に落とし込む
順に解説していきます。
1.分析する対象の業界や競合の範囲、分析期間を明確にする
まずはファイブフォース分析を行う前に、分析する対象の業界や競合の範囲、分析期間を明確にしましょう。
これを行わないと適切な結果がでないため、分析をする前は分析対象を明確にすることが大切です。
2.各要素の情報を収集する
分析対象を明確にしたら、各要素の情報を収集し整理しましょう。
ここで重要な点は、主観的な分析にならないよう客観的な数字やデータを集めることです。
3.各要素の脅威度を評価する
2で集めたデータをもとに各要素の脅威度を評価します。
これによって、業界全体における自社の強み・弱みを把握することができます。
4.事業戦略に落とし込む
最後に分析結果をもとに、各要素の状況を踏まえて事業戦略を立案しましょう。
ファイブフォース分析の例
ファイブフォース分析の使用例を簡単に5つ紹介します。
- 新規参入
- 市場の評価
- M&A
- 業界動向
- 製品開発
新規参入
ある市場に新規参入する場合、ファイブフォース分析を行うことによって、競争環境を理解し、最良の参入戦略を決定することができます。
市場の評価
自社の市場ポジションを評価し、改善すべき領域の特定や、競争優位性の確立を行うために戦略立案を考えることができます。
M&A
業界全体の競争環境を把握し、M&Aの可能性を視野に入れることができ事業の戦略の幅が広がります。
業界動向
業界の方向性を理解し、将来のトレンドを予測することで、投資やビジネス運営に関する賢明な判断を行うことができます。
製品開発
新しい製品のマーケット潜在性を評価し、最適な価格設定、マーケティング、販売戦略を判断することができます。
ファイブフォース分析のTips
ファイブフォース分析を行う際は、いくつか注意点があります。
- 主観的な分析とならないようにする
- 分析する単位を明確にする
主観的な分析とならないようにする
ファイブフォース分析を行う際は、主観的な判断をしないよう注意が必要です。
例えば、「新規参入の脅威」について分析する際、新規参入企業数がどれくらいから多いと判断するかは、主観的な判断になってしまいがちです。
そのため、客観的なデータを集め複数人で議論をするなどして、主観的な分析とならないように注意しましょう。
分析する単位を明確にする
次に注意すべき点は分析を行う単位です。
例えば、IT業界を分析する際、IT業界のどの分野を分析対象とするのか、また何年間の状況を分析するのかを明確にしなければ、適切な分析を行うことができません。
そのため、ファイブフォース分析を行う際は、競合の範囲や分析期間を明確にしておきましょう。
ファイブフォース分析のメリット・デメリット
ファイブフォース分析のメリット
ファイブフォース分析を行うメリットは主に3つあります。
- 市場の競争状況を把握できる
- 自社の強み・弱みを発見できる
- 新規参入や事業撤退の判断材料となる
市場の競争状況を把握できる
ファイブフォース分析を行うことで、自社が競合する市場の競争状況や全体像を把握することができます。
自社の強み・弱みを発見できる
市場の競争状況を把握できたら、自社の強みや弱みを発見することができます。
これにより、現状の脅威に対する施策や改善点などが理解でき、今後の戦略立案に役立てることができます。
新規参入や事業撤退の判断材料となる
また、ファイブフォース分析を行うことで市場の競争状況を把握できるため、新規参入や事業撤退の判断材料となり、新規事業や既存事業の経営判断が容易にできます。
ファイブフォース分析のデメリット
また、ファイブフォース分析のデメリットも主に3つあります。
- 主観が入ってくる
- 分析範囲に限界がある
- 予測能力の不確実性
主観が入ってくる
最終的に分析する人の解釈に依存するため、分析結果にバイアスが生じる可能性があります。
分析範囲に限界がある
ファイブフォース分析は業界の競合状況を分析する手法のため、政治や社会、環境などの外部要因は考慮されません。
予測能力の不確実性
収集した情報は過去のデータや現在のトレンドに基づいているため、分析を行ったとしても新しい市場の開発を正確に予測することはできません。
ファイブフォース分析の事例
ハンバーガーチェーン店のマクドナルドを例に考えてみます。
・売り手(サプライヤー)の交渉力
ここでいう売り手の交渉力とは、パンやハンバーグ、チーズなどの原材料を供給するサプライヤーとマクドナルドとの関係です。
マクドナルドは食材を大量仕入れしており、ブランド力が高いため売り手の交渉力は優位であると判断できます。
・買い手(顧客)の交渉力
一般消費者はマクドナルド以外にも他店のハンバーガーを買う選択肢があるため、買い手の交渉力は強いとは言えません。
・業界内の競争
マクドナルドの競合にあたる企業は、モスバーガーやロッテリア、バーガーキングなど競合が多く激しいと判断できますが、ファーストフード業界は成長市場のため成熟業界と比較すると競争はそこまで激しいものとは言えません。
・新規参入の脅威
新規参入の脅威については、海外からの新規参入が考えられるがそこまで脅威となるものはまだありません。
・代替品の脅威
ハンバーガー以外にも寿司や牛丼、ラーメン、餃子、カレーなどのファーストフード業界全般が代替品として考えられ、脅威度は強いと判断できます。
以上の内容をまとめます。
マクドナルドはファイブフォース分析をすることによって、売り手の交渉力やブランド力があり高いシェアを誇っていることが分かります。
その一方で、競合が多く代替品の脅威も強いと考えられるため、他社との差別化や独自の市場ポジションを確立することが、今後の競争戦略で大切となってきます。
ファイブフォース分析の代替手法
ファイブフォース分析と比較した代替手法
ファイブフォース分析の代替手法として代表的なものを3つ紹介します。
- SWOT分析
- PEST分析
- 7Sフレームワーク
順に解説していきます。
ファイブフォース分析の代替手法について
SWOT分析
SWOT分析とは、自社の内部環境と外部環境を「Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)」の4つの項目に整理して分析し、経営戦略に活かすフレームワークです。
PEST分析
PEST分析とは、「Pokitics(政治)、Economics(経済)、Society(社会)、Technology(技術)」の4つの項目から、マクロ環境を分析するためのフレームワークです。
7Sフレームワーク
7Sフレームワークとは、「Strategy,(戦略)、Structure(組織)、 System(システム)、 Skills(スキル)、 Staff(スタッフ)、 Shared Values(共通の価値観)、Style(スタイル)」の7つの項目から、組織の現状を把握し戦略を立案するためのフレームワークです。
ファイブフォース分析のまとめ
以上、ファイブフォース分析の解説でした!
ファイブフォース分析を行うことで競合他社や業界の状況、自社の強み・弱みを把握することができ、今後の事業戦略を立てやすくなるため、ぜひ活用してみてください!
また、決算書や企業のビジネスについて少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。
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