eギフト券の儲けの仕組みとは?ギフティの決算資料から読み取る
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企業分析2024.4.29
早速ですが、皆さんは、eギフトを使ったことはありますか?
eギフトとは、メールやSNSなどでオンライン送付できる電子ギフトです。
今回は、このeギフト券を使ったビジネスを行っている「ギフティ」「サーティワンアイスクリーム」の事例から、ギフト券の儲けの裏側を解説します。
目次
会計クイズ:問題
まずは簡単なクイズです。
サーティワンアイスクリームの貸借対照表には、20億円近い「前受金」が存在します。
この正体は一体なんでしょうか?
前受金の勘定科目について詳しく学びたい方は、下記の記事を先にご覧ください。
少し簡単だったという方向けに、もう1問クイズです。
eギフト券を発行するプラットフォームを運営するギフティですが、コロナ禍(2020年)とコロナ明け(2021年)の利益率には大きな違いがあります。
どちらがコロナ明けの2021年の業績でしょうか?
タップで回答を見ることができます
選択肢①
選択肢②
それでは、ここからクイズの解説と共に「eギフト券」の儲けの仕組みを解説します。
ぜひお付き合い頂けますと幸いです。
eギフトとは?
まずは、通常の商品券とeギフトの違いから解説します。
通常の商品券とは
eギフトは元々、商品券やギフトカードを電子化したものです。
通常の商品券は、商店や店舗などで使用できる紙媒体の券のことを指します。
商品券のデメリット
商品券には主に3つのデメリットがあります。
1つ目は、紙媒体である点です。
商品券は紙媒体のため紛失リスクがあります。
2つ目は、手間がかかる点です。
商品券をギフトとして送りたい場合、商品券購入のために店舗まで足を運ぶ必要があります。
3つ目は、対面である必要がある点です。
コロナ禍で商品券をギフトとして渡したい場合、どうしても対面で渡す必要があります。
eギフトの登場
そこで、商品券のデメリットを解消するeギフトが登場しました。
eギフトの場合、商品券と違ってギフトの送信から店舗での交換までを、すべてスマホ1台で完結できます。
インターネットの普及やコロナ禍におけるオンラインの需要から、eギフトが注目され始め、現在多くの人に利用されています。
eギフトの使い方
eギフトの使い方は簡単で、贈り主はギフト券をスマホで購入し、ギフト券を送りたい相手にURLを送るだけです。
ギフト券を使う側は、送られたeギフトを店舗で見せるだけで商品と交換できます。
リアルタイムでバーコードを読み取るため不正利用も防止できます。
eギフトの種類
eギフトには、コンビニの商品からAmazonギフト券などのデジタル系まで多種多様にあります。
そのため、様々な利用目的で活用することが可能です。
eギフトの仕組みとは?
ここからはeギフトの仕組みを、サーティワンアイスクリームを例に解説していきます。
eギフトの仕組みは主に2種類あります。
- 個人間で送るパターン
- 企業が配布するパターン
eギフトを個人間で送るパターン
eギフトを個人間で送るパターンを解説します。
まず、送付目的でeギフトを購入する際は、eギフトを発行するプラットフォームを経由するのが一般的です。
例えば、サーティワンアイスクリーム(以下、サーティーワン)のギフト券を購入する場合、プラットフォームがeギフトを発行し、代金を受け取ります。
サーティワンは事前にeギフトを提供し、ギフト券が売れた際にプラットフォームから代金を受け取ります。
その後、贈り主が受取主へeギフトを送付し、受取主がeギフトと商品を交換するという仕組みです。
個人間で送るパターンの登場人物は4人です。
- eギフトプラットフォーム
- 一般利用者(送り人)
- 一般利用者(受取人)
- eギフト発行企業
プラットフォームは、eギフト発行企業(今回はサーティーワン)と一般利用者をつなげ収益を上げるというメリットがあります。
では、一般利用者と発行企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
eギフトの一般利用者のメリット
一般利用者のメリットは、ギフトの選択から店舗での交換までスマホ1台で手軽にできるという点です。
商品券と違い手間がかからないため、広く活用されています。
eギフトの発行企業のメリット
発行企業のメリットは、店舗以外でも収益を生み出す機会が増えたことです。
ギフト券で選択されることで、認知拡大・リピート率増加に貢献できることが期待できます。
また、商品を引き渡す前にお金が入ってくるため資金繰りが改善されるというメリットがあります。
小売業界や飲食業界は、通常商品の提供時にお金が入ってきます。
ところが、eギフトサービスを使うことで、商品を提供する前に資金を得ることが可能となり、その結果、資金繰りが改善されることに繋がります。
サーティワンの貸借対照表には多額の前受金が存在します。
この前受金の正体は「ギフト券」です。
さらに、購入されたギフト券が利用されない場合には、発行企業に全額利益が計上されるというメリットがあります。
eギフトには有効期限があり、ギフトが使われず有効期限が過ぎた場合、発行企業の利益となるため未使用ギフト券が利益に貢献します。
実際のサーティワンの損益計算書を見てもわかる通り、3億円近い収益が計上されています。
eギフトを企業が配布するパターン
次に、企業が配布するパターンを見ていきます。
先ほどの個人間で送るパターンの贈り主が個人から企業に変わり、企業がeギフト券を購入しキャンペーン等で一般消費者へ配布するという形態となります。
eギフトの企業活用事例
企業の活用事例として、Twitterのフォロー&リツイートキャンペーンやLINEのその場で商品が当たるキャンペーン、アンケートでの謝礼などがあります。
eギフトを発行する企業側のメリット
企業側のメリットとして、従来の施策と比べ人件費や配送費、在庫管理コストなどがかからずに販促施策を実施することが可能となります。
eギフトの儲けの構造は?
eギフトの仕組みについて解説しましたが、プラットフォームはどのように収益を上げているのでしょうか?
ここからは、eギフトプラットフォームを提供している株式会社ギフティを事例に、eギフトの儲けの構造について解説します。
個人間で送る場合のビジネスモデル
まずは、個人間で送る場合のビジネスモデルを見ていきます。
ギフティは、個人向けeギフトサービスとして、「gifteeサービス」を提供しています。
gifteeサービスとは、個人ユーザーがオンライン上でeギフトを購入・贈答することができるサービスです。
gifteeサービスは、発行企業から商品代金の約10~15%を手数料収入として受け取るマネタイズモデルを採用しています。
gifteeサービスの収益構造
個人向けeギフトサービス「gifteeサービス」の収益分解をすると下図の通りとなります。
売上高は会員数×販売手数料に分解できます。
さらに、販売手数料は商品単価×数量×手数料率に分解できます。
ギフトサービスのため1人あたりの客単価をコントロールすることは容易ではありません。
したがって、gifteeサービスの重要なKPIは会員数であることが分かります。
企業が配布する場合のビジネスモデル
企業が配布する場合のビジネスモデルを見ていきます。
ギフティは法人向けに「giftee for Businessサービス」を提供しています。
giftee for Businessサービスとは、法人がキャンペーン等での利用を目的にeギフトを購入することができるサービスです。
giftee for Businessサービスは発行企業から手数料を受け取るだけでなく、利用企業からも発行手数料やシステム利用料を受け取る両取りモデルを採用しています。
giftee for Businessサービスの収益構造
法人向けeギフトサービス「giftee for Businessサービス」の収益分解をすると下図の通りとなります。
売上高は両取りモデルのため、発行企業からの収入と利用企業からの収入に分けられます。
発行企業からの収入は個人ではなく法人向けのため、利用企業数×販売手数料に分解できます。
利用企業からの収入は発行手数料+システム利用料に分解できます。
発行手数料は商品代金×手数料率に分けられます。
利用企業が増加しない限り、発行企業からの収入も増加しないため、利用企業数が重要なKPIであることがこの収益構造から読み取れます。
プラットフォームの損益計算書
それでは、ここからはギフティの利益構造を見ていきましょう。
プラットフォームの売上原価
ギフティの売上原価は開発関連の労務費や経費が中心です。
損益計算書を見て分かる通り、ギフティの事業はほとんど原価がかからないビジネスであることが分かります。
プラットフォームの販管費
ギフティの販管費は人件費や支払手数料が中心です。
特に発行企業数と利用企業数が重要となるビジネスであるため、新規開拓等を行う営業人材の人件費が多く占められています。
手数料の中身は、決済に関する手数料が中心です。その他には、サーバー関連の費用や業務委託者に対する支払いで構成されています。
プラットフォームの営業利益
収益モデル、コスト構造を踏まえて、営業利益を見ていきます。
直近では事業拡大・人員増強に伴う販管費の急増により、前年度と比較すると営業利益は減少しています。
ギフティの競争優位性は?
ここから2つ目のクイズの解説になります。
ギフト券発行プラットフォームを運営するギフティの業績推移を見てみましょう。
売上高の推移は継続的に右肩上がりで増加しています。
一方、営業利益に関しては、2020年に一時的に増加していることがわかります。
コロナ禍でギフト券の利用が増加したのでしょうか?
業績の内訳についてを確認すると、メインの収入源である企業向けサービス「giftee for Business」はコロナ禍の2020年はそこまで貢献していません。
コロナ影響により、店舗利用が伸び悩んでしまったことが原因となっています。
それでは、どのような理由から2020年に利益額が拡大したのでしょうか?
その答えは、ギフティの提供する「地域通貨サービス」にあります。
ギフティは自社のギフト券発行システムを、地方自治体に提供するサービスを手掛けています。
2020年の10月以降、GO TO トラベルがスタートしたことで、ギフティの地域通貨サービスが大いに利用されました。
その結果、営業利益の額が一時的に拡大しました。
このように、ギフト券発行システムは、様々な用途で使われることからも、応用性が高いビジネスということがわかります。
よって、選択肢①が直近のギフティの損益計算書でした。
eギフトの市場規模
最後にeギフトの市場規模と今後の展望について見ていきます。
矢野経済研究所の調べによると、eギフトの市場規模は2020年度時点で2,075億円である一方、商品券の市場規模は6,627億円となっています。
eギフトは商品券と比較するとまだまだ普及していませんが、コロナ禍における販促活動等の法人のニーズや個人間でのギフトの贈答文化が広まると考えられるため、将来的に拡大する見込みです。
eギフトのまとめ
以上、eギフトの解説でした!
決算資料を見ることによってeギフトの仕組みや儲けの構造を読み取ることができます。
少しでもeギフトに興味を持っていただけたら幸いです!
お付き合いいただきありがとうございました。
決算書や企業のビジネスについて少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。
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<この分析記事の出典データ>