BCGマトリクスとは?会社の経営資源を最適に配分する方法を解説
2024.5.2
BCGマトリクスとは?使い方や事例を解説!PPMと同じ?
この記事では経営戦略を行う際に、役に立つフレームワークの意味と使い方について解説します。
図解を交えながら解説していきますので、ぜひ最後まで読んでいただけますと幸いです。
今回紹介するBCGマトリクスは、全社戦略を検討する際のフレームワークとなります。
目次
PPMと同じ?BCGマトリクスとは
BCGマトリクス(PPM)の概要
BCGマトリクスとは、1970年代にボストンコンサルティンググループ(以下BCG)が発案したフレームワークで、企業が展開する複数の製品・事業の組み合わせと経営資源配分を最適化するために使用されます。
BCGマトリクスは、PPM(Product Portfolio Management)や、成長率・市場占有率マトリックスとも呼ばれます。
BCGマトリクスは、市場成長率および市場占有率(シェア)に基づき4つの象限に分けることができます。
横軸に経験曲線効果に基づく相対的市場シェア、縦軸に製品ライフサイクル理論に基づく市場成長性を置くことで、4象限のマトリックスにより、製品・事業の位置づけと組み合わせを一覧で表すことができます。
BCGマトリクス(PPM)の4つの象限
BCGマトリクスでは、自社の事業活動を以下の4つの象限に分けることができます。
- 負け犬 : 市場成長率、市場シェアがともに低い事業
- 問題児 : 市場成長率が高く、市場シェアが低い事業
- スター : 市場成長率、市場シェアともに高い事業
- 金のなる木 : 市場成長率が低く、市場シェアが高い事業
それぞれを順に解説していきます。
負け犬(市場成長率低×市場シェア低)
負け犬とは、市場成長率、市場シェアがともに低いポジションです。
将来性がないため撤退候補の事業であり、他の事業に資金を回した方が賢明と判断できます。
問題児(市場成長率高×市場シェア低)
問題児とは、市場成長率が高く、市場シェアが低いポジションです。
利益がまだ出ていない状態ですが、成長率が高いためスターになる可能性がある事業です。
しかし、成長率が高い市場ということは、競争環境が激しいため、積極的な投資が必要な事業でもあります。
従って、キャッシュ・アウトも大きく金食い虫的な事業となります。
スター(市場成長率高×市場シェア高)
スターとは、市場成長率、市場シェアともに高いポジションです。
最も注目されやすい企業の花形事業です。
競争環境が激しく、多額の投資が必要な事業ではありますが、市場シェアが高いため、将来的に多くのキャッシュが期待されます。
スターは、成長率の低下と共に、売上規模を拡大させながら、最終的には金のなる木の方向に向けて移動します。
金のなる木(市場成長率低×市場シェア高)
金のなる木とは、市場成長率が低く、市場シェアが高いポジションです。
市場は成熟しているため、成長性は期待できません。一方で、キャッシュ・アウトも少なく、安定的に多額のキャッシュを獲得することが期待される事業です。
通常、金のなる木は、収益性が高く、キャッシュの供給事業となります。従って、金のなる木で得たキャッシュを、問題児やスターなどの事業投資に回されます。
BCGマトリクス(PPM)がわかるクイズ
以上を踏まえて、簡単なクイズです。
資金を多額に投下すべき事業は、下記の3つのうちどれしょうか?
タップで回答を見ることができます
金のなる木
問題児
負け犬
皆さんはすぐにわかりましたか?
正解は選択肢②問題児です。
問題児とは、市場成長率が高く、市場シェアが低いポジションです。
成長率が高い市場であるものの、競争環境が激しいため、積極的な投資が必要な事業でもあります。
BCGマトリクスのメリット・デメリット
BCGマトリクスのメリット
BCGマトリクスを使う際のメリットは主に3つあります。
- 事業の全体像を把握できる
- 経営資源を効率的に配分できる
- 戦略立案に役立つ
事業の全体像を把握できる
BCGマトリクスを使うことで、市場における各事業のポジションや競合他社との位置関係を把握することができます。
経営資源を効率的に配分できる
事業の全体像を把握できると、事業ごとに経営資源を効率的に配分することができます。
また、事業の選択と集中を行うことが可能となり、結果としてコストの削減へと繋がります。
戦略立案に役立つ
各事業を4つの象限に分けることで、それぞれの事業の将来性を把握することができます。
その結果、投資や撤退などの戦略立案を正しく組み立てることが可能となります。
BCGマトリクスのデメリット
また、BCGマトリクスを使う際にはメリットだけでなくデメリットもあります。
デメリットは主に以下の3つです。
- アイデアを生み出しづらい
- 事業同士の相乗効果が考慮されない
- 外部環境の分析はできない
アイデアを生み出しづらい
BCGマトリックスは事業の現状を分析するためのフレームワークであるため、このフレームワークのみでは新商品などの新しいアイデアを生み出しづらいというデメリットがあります。
事業同士の相乗効果が考慮されない
BCGマトリクスは、各事業単体で評価を行うため、事業同士の相乗効果は考慮されません。
たとえば、コンビニ事業とATM事業の2つの事業を手掛けている会社があったとします。それぞれ別々の事業ですが、ATMはコンビニに置くことになるため、ATM事業とコンビニ事業には強い相乗効果があります。
しかし、BCGマトリックスでは、コンビニ事業とATM事業はそれぞれ単体で評価されることになります。その結果、仮にコンビニ事業の評価が低く、撤退という判断をしてしまった場合、ATMを置く場所がなくなってしまいます。このように、BCGマトリックスでは、事業同士の相乗効果は考慮されないため、判断を行う際には注意が必要です。
外部環境の分析はできない
BCGマトリクスでは、政治や法律などの外部の環境までを考慮することはできません。
従って、外部環境の分析を行う際には、PEST分析や5フォース分析等の他の分析手法と併せて行う必要があります。
BCGマトリクスの使い方
ここからはBCGマトリクスの使い方について解説します。
BCGマトリクスをキャッシュ・フロー・マネジメントに用いる
BCGマトリクスは、事業間のキャッシュの流れを明確にし、今後の方針を策定する際に役立ちます。
このキャッシュの流れを適切に管理することをキャッシュ・フロー・マネジメントといいます。
それではまずは簡単なクイズです。
BCGマトリクスの4つの要素のうち、安定的に余剰資金を生み出すポジションはどこでしょう?
タップで回答を見ることができます
スター
金のなる木
問題児
負け犬
わかりましたか?
正解は②の金のなる木でした。
ここからは、最適なキャッシュ・フロー・マネジメントについてを解説します。
最適なキャッシュ・フロー・マネジメント
最適なキャッシュ・フロー・マネジメントの1つとして、「金のなる木」で得たキャッシュを、「スター」や「問題児」に配分します。「金のなる木」は、多額の投資をすることなく、キャッシュを創出することができるため、余剰キャッシュを他の事業に回すことが可能です。
また、資金を供給された「スター」は、売上規模が拡大するものの、時間と共に成長率が衰退します。
投資金額も徐々に減少し、最終的には「金のなる木」の方向に移動します。
「問題児」は、まだまだ成長段階の事業であるため、多額のキャッシュが必要となります。
業界の高い成長率の元、シェアを拡大させながら「スター」の方向に移動する動きが望ましいです。
しかし、業界環境次第では負け犬となってしまう可能性もあるため、注意が必要です。
「負け犬」に該当する事業は、投資を抑えるか、もしくは事業を売却することでキャッシュを創出します。
「負け犬」で創出したキャッシュは、通常、「問題児」に供給されます。
このように、事業間の資金の流れを明確にし、今後の戦略シナリオを組み立てる際に非常に役に立ちます。
BCGマトリクスの使う手順
次に、BCGマトリクスを使う手順について紹介します。
分析する際の手順は以下の5つのステップで行います。
- 単位を揃える
- 市場成長率を計算する
- 市場占有率(シェア)を計算する
- 4つの象限に分類する
- 戦略立案を考える
1.単位を揃える
まずはBCGマトリクスの分析を始める前に、分析に使用する単位が商品ごとなのか事業ごとなのかを明確にします。
また、どの市場で現状分析を行うかや、市場成長率・市場占有率の高低の判断基準も決めておきましょう。
これを行わないと曖昧な分析となってしまい、適切に分析することができません。
2.市場成長率を計算する
単位を揃えたら、市場成長率を計算します。
市場成長率は下記の計算式で算出します。
市場成長率=本年度の市場規模÷昨年度の市場規模
市場規模のデータに関しては国の公表しているデータ業界団体がまとめたレポートなどで集めることができます。
3.市場占有率(シェア)を計算する
次に、市場占有率(シェア)を計算します。
市場占有率は下記の計算式で算出します。
市場占有率=各事業の売上高÷市場規模
競合他社の市場占有率も計算することで、各事業のシェアがどれくらいかを相対的に判断できます。
4.4つの象限に分類する
市場成長率と市場占有率を計算したら、その数値を元に、先ほどのアイスクリーム屋さんの事例のように4つの象限に分類します。
これにより、各事業のポジションを把握できます。
5.戦略立案を考える
全体像を把握したら、経営資源をどこに配分するか、撤退する事業はあるかなどの戦略立案を考え実行に移します。
BCGマトリクスの事例
それでは、最後に実際の企業事例を見ていきましょう。
今回は駐車場やカーシェアで有名なパーク24を例にBCGマトリクスのマッピング事例を紹介します。
パーク24の事業内容を確認
今回は、事業単位でBCGマトリクスを整理していきます。
パーク24は、大きく3つの事業を行っています。
- 駐車場事業(国内)
- 駐車場事業(海外)
- モビリティ事業(カーシェア・レンタカー等)
さて、それではここでクイズです。
パーク24の駐車場事業(国内)は、4つの分類のうち、どこに位置するでしょうか?
ここからは解説と共に、パーク24の事例を一緒に確認していきましょう。
パーク24の事業ごとに市場シェアと市場成長率を確認
事業の整理ができたら、次はそれぞれの事業の市場シェアと市場成長率を確認します。
今回はパーク24のIR資料に開示されているデータをベースとします。
駐車場事業(国内)
国内で展開している駐車場事業は、駐車場台数のシェア48.1%と業界でもトップに位置しています。
一方で、国内の駐車場業界は成熟産業であるため、成長率は高くはありません。
モビリティ事業
パーク24のモビリティ事業の中心はカーシェアです。
カーシェアの国内シェアを確認すると、台数と会員数共にトップのシェアを維持しています。
パーク24のカーシェア事業のシェアは83.6%と、2位以下の企業に圧倒的な差をつけていることも特徴です。
さらに、カーシェアは今後も高い成長性が期待される業界であることから、モビリティ事業の売上もまだまだ拡大が見込めます。
駐車場事業(海外)
最後は、海外の駐車場事業です。パーク24の3つの事業の中で、最も最近開始した事業でもあり、まだまだシェアは高くありません。一方で、成長が見込める国へ展開していることから、今後の成長性が見込めます。
パーク24のBCGマトリクス
ここまでの内容をまとめます。
駐車場事業(国内)は、高いシェアを有するものの、成長率は高くありません。従って、「金の生る木」に位置します。
モビリティ事業は、高いシェアを有しつつ、成長率も期待できます。従って、「スター」に位置します。
駐車場事業(海外)は、まだまだシェアは低いものの、成長率が高い事業です。従って、「問題児」に位置します。
以上、パーク24の事例でした。
ぜひ、参考にしていただければ幸いです。
BCGマトリクスのまとめ
以上、BCGマトリクスの解説でした!
BCGマトリクスを使うことで各事業の市場ポジションや経営資源の最適化を把握することができ、今後の事業戦略を立てやすくなるため、ぜひ活用してみてください!
また、決算書や企業のビジネスについて少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。
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