妊娠出産メディア「ベビーカレンダー」のビジネスモデルを徹底解説!
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企業分析2024.4.29
この記事では、「最近上場した企業のビジネスを知りたいけど、資料を読んでもよくわからない」という方に向けて、近年上場したばかりの企業が運営する最新ビジネスを、わかりやすく図解で解説していきます。
1記事あたり10分ほどで読み終わるボリュームで作成しているので、最新ビジネスへの理解を深めていただけますと幸いです。
今回は、月間1,000万人以上が利用する妊娠出産メディアを運営する「ベビーカレンダー」をテーマに、ビジネスモデルを徹底解説します。
ベビーカレンダーの事業内容を一言で表すと、妊娠・出産・育児に関する情報の提供です。
この記事では、事業内容はもちろん、ビジネスモデル、財務数値まで含めて解説しています。
ぜひ最後まで読んで頂けますと幸いです。
それでは、ベビーカレンダーの事業概要から見ていきましょう。
目次
ベビーカレンダー:事業概要
ベビーカレンダー:MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)
初めに、ベビーカレンダーのMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)から紹介します。
ベビーカレンダーでは、[A Sea of Smiling Babies「赤ちゃんの笑顔でいっぱいに」]というビジョンを掲げています。
そのビジョンを実現するために、妊娠・出産・育児に関する専門サイト「ベビーカレンダー」を運営しています。
ベビーカレンダー:沿革
次に、ベビーカレンダーの沿革を見ていきます。
ベビーカレンダーは1991年4月に経営コンサルティングを提供する会社からスタートしました。
2015年6月にクックパッド株式会社から妊娠・出産サイト「クックパッドベビー(現ベビーカレンダー)」を譲り受け、メディア事業を開始しました。
そして、2021年3月に東京証券取引所マザーズに上場しました。
ベビーカレンダー:事業紹介
ベビーカレンダーが提供しているのは、妊娠・出産・育児に関する専門サイトです。
インターネット上には、口コミや不確かな妊娠出産情報が多く氾濫し、正しい情報を判断するのが難しい状況です。
このような背景から、ベビーカレンダーは専門家が監修した信頼のある情報提供を開始しました。
また、他に産婦人科向け事業やWebマーケティング事業なども行なっています。
専門家には医師や助産師をはじめ、保育士、看護師、管理栄養士、ファイナンシャルプランナーにいたるまで提携しており、「ベビーカレンダー」で提供する記事等の監修を行なっています。
ベビーカレンダー:ビジネスモデル
それでは、ここからはベビーカレンダーのビジネスモデルを見ていきます。
ベビーカレンダー:商流
ベビーカレンダーの商流を簡単にまとめると、以下のようになります。
- 専門家監修の下コンテンツを作成
- 一般ユーザーによるサイト閲覧
- 広告クライアントに対して広告枠の提供
ベビーカレンダー:収入
ベビーカレンダーの売上高の内訳は以下のようになっています。
メイン収益源であるメディア事業が約70%を構成しています。
それぞれの事業について詳しく見ていきましょう。
初めに、メディア事業について解説します。
メディア事業は先ほど説明した通り、メディアに広告枠を提供する広告収入で利益を出しています。
広告収入には2種類あり、広告掲載期間に応じた期間固定型プロモーションによる収入と、成果件数に応じた成果報酬型プロモーションによる収入があります。
次に、産婦人科向け事業について解説します。
産婦人科向け事業とは、産婦人科が抱える課題に対して様々なソリューションを提供する事業です。
代表的なものに、産婦人科毎にカスタマイズしたコンテンツをiPadに搭載して提供する「ベビーパッドシリーズ」があります。
産婦人科にiPadをレンタルし、待合室やベッドサイドにて情報提供を行ったり、研修をIT化することで業務軽減サポートを行ったりしています。
他にも、産婦人科向けにホームページの制作・保守管理、かんたん診察予約システム、エコー動画館などを提供しています。
最後に、Webマーケティング事業について解説します。
Webマーケティング事業とは、顧客企業の集客支援を行なっている事業です。
他のweb制作会社と異なり、医療機関向けに特化したWebサイト制作、SNS広告、ロゴ・キャラクター制作などを提供しています。
ベビーカレンダー:事業構造
ベビーカレンダー:主要経営指標
ベビーカレンダーを分析する際に見るべき主要経営指標を解説します。
前述した通り、メディア事業の売上構成は広告掲載期間に応じた期間固定型プロモーションによる収入と、成果件数に応じた成果報酬型プロモーションによる収入の2種類があります。
まずは期間固定型プロモーションによる収入を見ていきましょう。
期間固定型プロモーションの売上を分解すると、掲載期間×販売単価となります。
販売単価は広告主がそのサイトに掲載することでどれだけ効果を得られるかによって変わります。
よって、より多くのPV数とUU数がある方が、多くの人の目にとめることができるため、PV数とUU数が重要指標となります。
PV数とは、ユーザーによるWebページの閲覧数です。
UU(ユニークユーザー)数とは、特定の期間内にサイトを訪れたユーザーの数を表す指標です。
次に、成果報酬型プロモーションによる収入を見ていきます。
成果報酬型プロモーションの売上を分解すると、顧客数(CV)と成果単価となります。
より多くのPV数とUU数がある方が、多くの人の目にとめることができ、CV数を増やせる可能性が高いため、PV数とUU数が重要指標となります。
ここでいう顧客数とは、収益につながる行動をしたユーザーを指します。
そのため、顧客数をCV(コンバージョン)と表しています。
CVとは、広告から商品の購入や会員登録などの一定の成果につながったことをいいます。
CVRとは、CV率のことをいい、CVに対する達成割合を示す指標のことをいいます。
したがって、主要経営指標は以下の2つとなります。
- 月間PV数
- 月間UU数
このPV数とUU数が増加することで、PV連動売上の上昇および広告単価の上昇、クライアントの拡販につながる可能性があります。
それを踏まえて、ベビーカレンダーの月間PV数と月間UU数を見ると、右肩上がりで増加しています。
そのため、今後の成長が見込めると考えることができます。
ベビーカレンダー:財務数値
有価証券報告書に載っている「主要な経営指標等の推移」を見ていきます。
ベビーカレンダー:業績トレンド
まずは、売上高と経常利益の推移から見ていきます。
直近では、売上高・経常利益ともに右肩上がりで増加しており、コロナの影響をあまり受けていないことが読み取れます。
ベビーカレンダー:売上原価の内訳
次に、売上原価の内訳を見ていきます。
費用項目を見る際は、金額の大きなものから見ていきましょう。
ベビーカレンダーの2021年12月期の売上原価を見ると、「経費」が75%占めています。
この「経費」の詳細を確認すると、「外注費:1.4億円」が主な費用となっています。
外注費とは、外部の法人または個人に業務を委託した際に発生する費用のことをいいます。
ベビーカレンダーは専門家やライター、イラストレーターの方々にコンテンツの監修や執筆、制作をしてもらっているため、専門家・ライター・イラストレーターに対する外注費が多く発生することが読み取れます。
ベビーカレンダー:販管費の内訳
最後に、販管費の内訳を見ていきます。
ベビーカレンダーの2021年12月期の販管費を見ると、「給料及び手当:1.6億円」と「広告宣伝費:1.3億円」の2つが主な費用となっています。
従業員数の推移を確認すると、Webマーケティング事業を開始した2020年に従業員数が31人から45人に増加しており、事業拡大を目的に従業員数を増やしたと考えられます。
次に、広告宣伝費についてですが、ベビーカレンダーの「事業計画及び成長可能性に関する事項について」に記載されている通り、KPIであるPV数及びUU数の増加を目的に実施したことが読み取れます。
このように、人材採用と広告宣伝に積極投資した結果、売上高と経常利益が右肩上がりとなっています。
以上、ベビーカレンダーの財務数値でした。
ベビーカレンダー:業界情報
それでは、ここからはベビーカレンダーが属している、妊娠・出産領域における市場規模を見ていきましょう。
ベビーカレンダー:市場規模の情報
こちらは、矢野研究所が公表する「ベビー関連市場マーケティング年鑑」に記載されているものです。
グラフを見ると緩やかに市場規模が減少しているのが読み取れます。
厚生労働省が出している「人口動態統計」を見ると出生数が右肩下がりとなっています。
したがって、出生数の減少が要因で市場規模が減少しているのが分かります。
しかし、子ども一人当たりに対する平均支出額は増加しています。
ただ、出生数の減少はメディア事業に影響を及ぼします。
これに対するベビーカレンダーのリスク対応策を見ていきましょう。
ベビーカレンダー:事業上のリスク
ベビーカレンダーの事業上のリスクを見ると、前述した通り出生数の減少が上げられています。
これに対するリスク対応策として、ベビーカレンダーは産婦人科以外の医療機関へ展開するなどの収益の多角化を視野に入れていることが書かれています。
具体的な収益の多角化については、次の成長戦略で解説していきます。
ベビーカレンダー:成長戦略
ベビーカレンダーの成長戦略として、コンテンツの拡大・機能の拡充・外部提携先の開拓を増やし広告収益の増大を見込んでいます。
また、事業上のリスクである出生数の減少に対して、ベビーカレンダーは強みである組織力を生かし、他の専門領域を拡大することを考えています。
具体的には生理情報を発信する「ムーンカレンダー」、アンチエイジングに関する情報を発信する「woman calendar」、介護情報を発信する「KAIGO calendar」などをすでにリリースしています。
中長期的には産婦人科などの医療機関の経営サポートを基盤としつつ、メディア事業で既存領域以外へ拡大展開することを考えています。
企業分析のまとめ
以上、妊娠出産メディアのベビーカレンダーについて、ビジネスモデルを徹底解説してきました。
・口コミや不確かな情報が多く溢れている情報社会において、妊娠出産に関する正しい情報を発信し続けた
・医療機関にITを導入し経営をサポートした
これらのポイントが、ベビーカレンダーが世の中にもたらした付加価値といえます。
月間1,000万人以上が利用しているということからも、信頼のあるメディアであることが分かりますね。
今回の記事は、「最近上場した企業のビジネスを知りたいけど、資料を読んでもよくわからない」という方に向けて、最新ビジネスをわかりやすく解説してきました。
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<この分析記事の出典データ>